ホラゲでよくあるような「怪物が徘徊する廃村」に置き去りにされた少年の話

スエコウ

うすよごれたメモ 1


 こうして何か書きつけていないと、あたまがくるってしまう。


 ばけもの。


 旅館の人が言ってた。村はずっと前に更地になったって。まちがいだ。村はちゃんとある。お化けだらけの村。


 噛みつかれた。傷が痛む。涙が止まらない。寒い。マッチを見つけたけど、火を起こしたらきづかれてしまう。


 だれか助けて。


 彩花さいか。大切な恋人。元気いっぱいで、明るくて優しくて。会いたい。


 彩花。京介とキスしてた。どうして。


 京介きょうすけ。彩花とキスしたとき、ぼくに気づいてた。ぼくを嗤ってた。どうして。


 京介。ぼくを身代わりにした。ばけものが来たとき、ぼくを突き飛ばした。


 蘭堂らんどうさん。


 ぼくらが旅行先でこの村に迷い込んだとき、助けてくれた。どこか大きな神社の巫女さんらしい。


 ぼくが突き飛ばされたとき、ごみを見るような目でぼくを見ていた。


 みんな、どうして。


 ぼくが頼りないから?

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