第13話「閑話5」

 部活初日に、髪型がロングからポニテになった部長にいきなり好きって言われた。


 そうか……。シンデレラは部長だったのか……と思いつつも、それをスルーして読書に没頭したが、当の本人に邪魔された。


 「黙っててください」って言ったら、海鼠〈なまこ〉すごい勢いで「それはいやだ!」って即答されてびっくりあんぐり辟易した。


 理由を聞いたら、「談話部だから部活動(談話)しなければいけない」って言われてさ、仕方なく豪速球で返ってくるキャッチボールを体で受けながら続けてたわけだけども、その途中で自己紹介することになって……部長が豹変した。


 突然殺人鬼になってさ、パイプ椅子で殴殺されたちゃったんだ。


 で、部長が調子に乗って自分のこと「わらわ」とか言い出して、平安時代か江戸時代かの姫様口調で語りかけてきたの。


 調子に乗った姫様を見てたら、対抗意識が燃え上がってきて、ボクは下っ端の臣下を演じることにしたんだよ。


 そうすると姫様は出陣する私に伝家の宝刀を授けてくださって、私は獅子奮迅の勢いで城を飛び出して怨敵の首を討ち取りに行ったのです。


 しかしそこで平民の娘と出くわしてしまい、私はその未来機器を持った彼女を困惑させてしまった。


 私自身も困惑してしまい、「え、えーっと……?」と言われた直後に居た堪れなくなり城に舞い戻ったのです。


 そこで我に返って、沸々と怒りが煮え滾ってきて、暴走してしまった俺は伝家の宝刀(笑)を思い切り床に叩きつけたわけ。


 バキッと割れたよ、盛大にね。


 そしたら部長は無残な姿になった宝刀にふらふらと近付いていって、こう言ったんだ。


「いやああああああああああああああ! 宝刀がああああああああああああああああ!!」ってね。


 でも安心。実は宝刀はもう一本あってね、それが失われた片割れだったんだけど、その父の形見を見せると姫様は大層お喜びになり、恐れ多いことに私の頬に褒美をくださったのです。


 そこでまた我に返った俺は、


「えちょちょちょちょちょっ!!! なにしてんですか部長!? 今! 今!?」


「ふ。どうだ私の姫は。映画や大河にも匹敵する姫様っぷりだったろう?」


「そうじゃない! そうじゃない! そうじゃなくてやっていいことと悪いことが!」


「……。――私はなにをした?」


「な、なんで覚えてないんですか!? あ! あ! あんな!」



 部室の外から覗き見ていた少女は惑った様子で呟いた。


(え、演劇部の練習だよね……? でも…………。邪魔しちゃったから謝ろうと持ったんだけど……。それにしても、どうしてこんなところで……? ???)

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