第19話「ArcHive」
明くる来る来る飽くるクルクル明日来る繰る繰る刳〈く〉る刳る輪の月曜日(遅延作動型ウザがらせ地雷。ちょっとでもイラッとしたり、うざっと感じたら作者の掌の上)。
ツインテール・ポニーテール・アイテール(GEシリーズのサリエルの接触禁忌種とかそんないい感じの)と掛けまして、『――』と説きます。
……その心は?
(リズムよく流暢な英語的発音で歌って)ワンナップ・ツーアップ・ワンサイドアップ・ツーサイドアップ・サニーサイドアップ&ダウン・オーバーtakeリージー・オーバーミディアムSS(スーパーセクシー?)レアリリィ・オーバーダイハード888/0(トリプルエイトオーバーズィロ)・ターンエンドオーバー・The point is...Oreのターン! ・So……・――ベイステッドマイエッグアース!!!
(いろんな喋り方・歌い方を試してみてね。歌い手様C'mo~n! 【土下座】)
『――』に入る言葉は邪神にもわからない。
図書館に向かう前、カフワに立ち寄った。
その時にあった、変わったことと言ったら、二つくらいだ。
一つはクラスのギャルビッチ……ビッチギャル? ……どっちが正しいか知らないけど、確か千波〈せんば〉さん、とかいう肉食系女子が来店したことだ。もうひとり女子を連れ添って入ってきたが、部長はともかく俺は知らない。
要点だけ言うと、千波さんたちが来店して耳にした会話がこれ↓
「だってしょうがないじゃーん。あの時めっちゃおなかすいててさー、目の前に美味しそうなチョリソーが三本もあったら、誰でもかぶりつくっしょ? ね?」
千波さんのあだ名は予想通り千歯扱き、ならぬ「千波扱き」であった。
その会話を聞いた部長に感想を訊くと、こう言った。
「チョリソーの話だろう」
どうやら耳にしたい話ではなかったらしい。
もう一つはその後の俺の食事中のこと。
たわわに実ったどんぐりトマトを口に入れて一口噛んだ途端――。
ぴゅー。わぷ!
油断してた。たわわトマトを食べるときはアレに気をつけないといけなかったのに、俺としたことが果汁発射を予期できなかったなんて、なんたる不覚。
……え? 前にいた部長は大丈夫だったの? だって? ……うん、まあ、そこは想像にお任せするのがよろしいかと存じます、みたいな? 丸くて大きな耳つけて「ハハッ!」とか言っといたほうが良さそうね。
トマトの話は以上。そのあとは七鳥と、『バイトで部活に参加できない時がある』って話をして、トイレに隠れてるユアンと一悶着あって、……喫茶店に入ったのにちょっと疲れたなぁ、と思惟しながら店を出て今に至る、と、そんな具合。
あれ? 二つじゃなくて三つじゃね? とか思うのはご愛嬌。日笠さんは大抵殴りたくなる(褒め言葉)から止めておくとして、自分の好きなアイドルが頭こつん☆ とかしながら『てへぺろ』してるところを想像してほしい。……ほら、許せちゃうでしょ?
突然のお付き合い・婚約・結婚発表は許せない場合もあるので仕方ないとして、余談だけど、千波さんと話せる機会があったのでその時の会話をば。
「千波さんマジ千波扱き」
「みんなよく間違うから言っとくけど、あたしの名前丹波〈たんば〉だからね? 友達紹介される時いつもそう言われるから、後で毎回このセリフ言うのホント面倒くさいんだって」
千波――丹波さんは二次元によくいそうなギャルの典型的な容姿で、スタイルがいい、チャラそう、肌が褐色――は好みじゃないからボツにして(ダークエルフとかが好きな人は褐色設定で妄想補完してください)、肩にかかる程度の長さの緑髪(二次なら)、おそらくF1クラスのブラストブレスト、顔の造作がまあまあ良い、と、さして特徴のない、ヒロイン枠に抜擢されそうにもない、ヒロインの友人で、主人公が迷っている時に背中を押しそうな、それでもって主人公を密かに想っている感じの、ありがちなギャルだ。ギャルゲーだと主人公の男友達と悪友で、(お前らもう結婚しろよ)といつも思ってしまう。そんな立ち位置の雰囲気、である。
「下の名前は?」
と訊くと若干、間があって、
「……こ」
「なんて?」
「千子〈せんこ〉。……笑えば?」
不満そうにさっと目を逸らした。
「あー。それで」
納得。これまた納得。
「はいまたこの反応。いい加減聞き飽きたし見飽きたっての」
「丹波千子……」
Oh, What a……。
「口に出して噛み締めんなっての。気にしてる身にもなりなさいよ」
「丹波、千子……」
ああ、なんという……。
「だああもう! どうせ古臭い名前だって言いたいんでしょ!? それならあたしの親に文句言ってよね!」
「――ちゃん……」
「――ちゃん付けすんな!」
バシッ! と叩かれた。
「それにしてもなんと罰当たりな……」
「罰当たりなのはあたしもわかってるわよ! それでも割り切れないところだってあるでしょ!? そういうことよ!」
千波おこ。死語だ。
「なんで俺が怒られてんの?」
2013年に『激おこぷんぷん丸』が流行りだして、七年後には『十代女子が選ぶもう使いたくない若者言葉・略語』のランキング六位。俺が恐ろしいと思う物の一つが時代の流れです。
「はあ……。大体、意味わかんない理由でいつの時代に流行ったかも知んない名前つけるかっての、自分の子供に。……ったく」
ハングリーアングリー・千波。プロレスラーでもいそうにねえ。てか――。
「聞けやコラ。ていうか意味わかんない理由って?」
「母さんが言ったのよ。小学生の時、『あたしの名前が変なのはなんで?』って聞いたら」
母ちゃんに自分の名前が変なのはなぜか聞いたと。……なぜ俺は繰り返した?
「なんて?」
「『あなたはヒロインなんだからこれくらいでちょうどいいのよ』って。これでもかってくらい優しい顔で。わけわかんなくない!?」
「わお。すげえな。色々どうなってんだそれ」
「でしょ!? しかも『うちは代々ヒロインを輩出する名門で、ことつんでれにおいては誰もが認める誉れ高い家なのよ』とか言ってたし! わけわかんないっての!」
「まじでどうなってんだそれ……」
分けワカメ。カマチョ慎二。わっっっかりやすいっ♪
「自分で言っといて「私もつんでれってよくわからないんだけどね……うふふ」とか。――なんなのよ!」
壁が壊されてるけど大丈夫? 巨人なの? 千波のお母さん進撃するの? それともエリザかしら? 進撃のエリザなら、あの最終兵器エリザね、きっと。
「それにいつも! 『あなたなんてまだましよ。私なんて万子よ? わかる? 私の気苦労が。……ああ! この名前で私がどれだけ苦しんだか! どれだけ婚約するのが大変だったか! わからないでしょ! あなた達のような普通の名前の人には!!』とか言ってヒスんの! 毎回! そんなの小さい子供にぶち撒けてもわかるわけないじゃん!」
不満たらたらとはこのことか。そういえば、タラちゃんがコロシアイ修学旅行で登場した時はエキサイトしたなあ。
「よかったな。お前が万子じゃなくて」
楽観的にそう言うと、
「あんたバカにしてんでしょ!?」
ぷんすか、と返してきた。ので、
「してない。おもしろがってる」
あっっはははははははは!
「し、してんじゃない!! このバカ!!」
ブン!
「あいた! 叩くなよ」
激おこぶんぶん丸か。死後だ。
「ふん! 自業自得でしょ」
激おこふんふん丸。私語だ。しめやかな言葉で、しめやかな千波は、実は心はしめやかであると俺は世間の評判に枝梧する。
「ごめんごめん。でも俺はいいと思うぜ? お前の名前」
……え。なにこのセリフ……。なんで俺、千波を攻略しようとしてるの……? ググっと画像検索したら、千把扱きだと農具が出てくるのに、千波こきだとエロ画像だらけになるのはなんでなの……? なんとなくわけがわかるよ……。
「……はぁあ? ふざけてんの? も一回叩いてあげよっか? ねえ? ねえ?」
顔をずいと寄せてきたのでつい、
「千ちゃん♪」
耳元でウィスパーボイス。が、
「バカにすんなっての!!」
「――いっってえええ!!!」
どちゃかわいいじゃねえかこの野郎。……このオンナ? このビッチ? ……this BITCH?
後に俺が彼女のことを語る時、俺は決まって丹波千子のことをこう語る。
――「千波扱きの千波」は触手であった。蛸にも烏賊にもシンディ・ローパーにも勝る、十三本の死の触手だったのだ……、と。
こうして彼女の名声は一千倍になり、「温泉宿の千ちゃんとは絶対に比べられない」とか言われたり、「イメージキャラクターの1000ちゃんとは正反対ですらない」、などとある界隈で噂されるようになる。
……ああ。げに恐ろしきは現世の柵よ。
新田恵海さん。新田恵海さん。
ちなみに千波の母親の名は万子〈よしこ〉である。
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