概要
電話主は偶然にも幼い頃に住んでいた「椿御殿」の現所有者からだった。
――庭の椿の手入れをしてくれませんか。
季節外れの依頼を引き受けることになり、逃げるように去ることとなった屋敷へ再び出向いた支倉は過去と向き合うことになる。
忌まわしき事件が起きた椿御殿で昔と変わらない姿の綾乃との再開を果たすが、彼女が語る真実を聴いたとき、己の血に流れる罪と業を知る。
――あたしはあなた達を赦さない。
愛と憎を教えてくれたお吉もまた深い悲しみと憎しみを抱いていた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!白い雪と、紅い椿。そして赤い……。
衝撃のプロローグから始まる本作。
凄惨な事件を引き起こした犯人の血を継ぐ主人公の支倉和夫は、造園会社を経営する五代目社長である。閑古鳥が鳴く会社に一本の電話が入り、和夫は幼少期に住んでいた椿御殿へ一人訪れることになる。そこで彼が見聞きしたものは……。
現在と過去の話が交互に語られ、物語は進んでいきます。
椿御殿へ訪れた和夫の運命はどうなってしまうのか。
過去の和夫の身には、一体なにが起こったというのか。
「呪い」とは何か。椿の下に現れる女の正体は何なのか。
謎が次々に提示され、物語にどんどんと惹き込まれていきました。
美しくも恐ろしいミステリーホラー。ホラー好きな方、ミステリー好きな方…続きを読む - ★★★ Excellent!!!椿御殿をめぐる血の呪いに翻弄される男の物語
冒頭から引き込まれる。狂気に満ちた男が起こす凄惨で血生臭い事件の描写が、呪いの始まりを劇的に告げるからだ。しかし、椿御殿にかけられた呪いを引き受けるのは、この狂気の男ではない。かけられた呪いは、この男の子々孫々まで続く血の呪い。時代は一気に下る。
支倉造園を営む庭師の和夫は、ある理由から恋人の和美との結婚を躊躇っていた。お互いいい年だと感じながらも、一歩を踏み出すことができない和夫。そんな和夫のもとに一件の仕事が舞い込む。その依頼先はかつて、和夫が暮らした
呪われたあの椿御殿だった。
読み進めるごとに明かされていく和夫の幼少期の出来事。椿御殿を中心に巻き起こる出来事が読者を引き寄せる。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それは真白な雪の中でも赤く、赤く。
主人公は庭師として、雪国の村を訪れた。頼まれたのは、立派な椿が立つ屋敷の雪囲い。その椿がある屋敷は、かつて主人公が短い幼少期を過ごした家だった。
小学生だった主人公は、この屋敷で、椿の下に佇む妖艶な美女と会話をしていた。彼女の着物は、椿の如く赤かった。しかし、この美女との出会いが、主人公の家族を蝕んでいく。母が去り、父は発狂し、愛する人を殺めて自死。祖父はその様子を平然と見ていた。幼かった主人公は、この事件以来、この村には足を踏み入れていなかった。
そして、庭師として成長した主人公の前にも、やはりあの美女が現れる。彼女は呪いの体現。あの椿は代々の主人公の一族の血を吸って成長していた。そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたは運命を信じますか? 「呪い」という名の運命を
血の色を宿し、断首されるように、ぼとりと花を落とす紅い椿。
その老木ともなれば、どれほどの年、どれほどの数、血に染まった首が、その足下に転がったことであろうか。
桜の下に屍体が埋まっているという話は、おそらくは梶井基次郎以来、数多くの文学作品のモティーフとなり、人口に膾炙してきた。
それでは、何百年もの間、何千、何万、否、それ以上の断首刑を、毎年、自ら演じ続けている、あの椿の根下には、一体何を埋めるべきだろうか?
或いは、別の言い方をすれば、屍体を埋めるのに真に相応しい場所は、桜の下だろうか、それとも……?
幾世代にも亘って、「呪い」という名の運命に翻弄されてきた一族。
…続きを読む