それは真白な雪の中でも赤く、赤く。

 主人公は庭師として、雪国の村を訪れた。頼まれたのは、立派な椿が立つ屋敷の雪囲い。その椿がある屋敷は、かつて主人公が短い幼少期を過ごした家だった。
 小学生だった主人公は、この屋敷で、椿の下に佇む妖艶な美女と会話をしていた。彼女の着物は、椿の如く赤かった。しかし、この美女との出会いが、主人公の家族を蝕んでいく。母が去り、父は発狂し、愛する人を殺めて自死。祖父はその様子を平然と見ていた。幼かった主人公は、この事件以来、この村には足を踏み入れていなかった。
 そして、庭師として成長した主人公の前にも、やはりあの美女が現れる。彼女は呪いの体現。あの椿は代々の主人公の一族の血を吸って成長していた。そして、美女の口から聞かされた屋敷にまつわる惨劇と因縁。女は庭師を依頼した男の正体と、自分のことについて語り始める。そして、美女は最後に主人公にある願いを託すのだが――。

 主人公は果たして、呪いを終わらせることができるのか?
 屋敷で起こった、呪いの始まりとなる惨劇とは?
 あなたも、この屋敷の狂気に呑み込まれるに違いない。
 
 とても美しくも恐ろしい物語でした。
 血の赤と、雪の白、そして庭師を象徴する紺のコントラストが綺麗で、作者様の筆力が伺える一作です。

 是非、御一読下さい。

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