あなたは運命を信じますか? 「呪い」という名の運命を

 血の色を宿し、断首されるように、ぼとりと花を落とす紅い椿。
 その老木ともなれば、どれほどの年、どれほどの数、血に染まった首が、その足下に転がったことであろうか。

 桜の下に屍体が埋まっているという話は、おそらくは梶井基次郎以来、数多くの文学作品のモティーフとなり、人口に膾炙してきた。
 それでは、何百年もの間、何千、何万、否、それ以上の断首刑を、毎年、自ら演じ続けている、あの椿の根下には、一体何を埋めるべきだろうか?
 或いは、別の言い方をすれば、屍体を埋めるのに真に相応しい場所は、桜の下だろうか、それとも……?
 
 幾世代にも亘って、「呪い」という名の運命に翻弄されてきた一族。
 その運命の色は、鮮やかな闇をぎらぎらと含んだ深紅。
 深紅の呪いは、凍り付くような恐怖のみならず、むしろ、甘美な情熱の雫を、何百年もの間、彼らの皮膚に、咽喉に、垂らし続けた。
 決して乾くことのない、呪いの雫。

 そこから逃れる術など、本当に、あるのだろうか?

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