第27話 バラバラなタオルたち
〈食べ物(珍しい)→ラーメン?〉
〈おにぎり〉
〈タオル〉
ホワイトボードに書かれたアイデアを3人で見ながら話し合う。
「俺はやっぱり食べ物系だと思うんだよ」
「私も食べ物系がいいとおモッタのですが、タオルもイイですね」
「でしょ〜。屋台を出す付近には、温泉がいっぱいあるし、
食べ物は毎年やってるから、すこし変化球もありかな〜と」
「タオルって言っても具体的にどうするんだよ?」
ワタシに抜かりはない。昨晩、ネットで調べて作った資料を取り出した。
今やネットで調べれば何でも出てくるのである。
「これをご覧ください」
ワタシが考えた案はシンプルである。
タオルは質よりも量を考えて、業務用のものを購入し、
そこから手作りでタオルに刺繍(ししゅう)を行うといった流れである。
「刺繍?俺できねぇぞ」
「私も初めてだけど、調べてたらなんとかなるはずだよ」
ワタシの作成した資料の最後には、刺繍のアイデアまで記入していた。
「なるほど。確かにコレはイイですね〜」
「でしょ〜。イタヤ旅館の文字と♨マークを組み合わてみたの」
「これだけの刺繍なら簡単にできるかなと思った」
いやらしいかもしれないが、旅館の宣伝も兼ねたものにしたかった。
少し納得のいってないケンさんであったが、そこまで聞くと、納得せざるを得ないはずだ。ジャックについては、目を輝かせながら資料を見ていたため、ワタシは勝ちを確信した。
「でもな〜〜」
「じゃあケンさんの具体的な案はあるんですか?」
ケンさんは悔しそうにしていたが、最後のダメ押しで、少し強引ではあったがワタシの案を押し通した。案が決定したため、旅館メンバーにも、このことを伝えてみる。
「タオルね〜。いいんじゃないかい」
「うん。私たちも作るのを手伝うことができますしね」
女将やサイトウコンビの反応も悪くはなかった。
「たけちゃん。少ししかないけど、家から使える道具持ってくるわよ」
「ありがとうございます!私もネットでさっそく道具を注文しますね〜」
旅館メンバーの賛同も得て、道具を揃えていった。
道具が揃ったあとは、各々が仕事の隙間時間にタオルをつくっていくことにした。
「あ〜難しいな」
「そうですね。ムズかしいですね」
相変わらず、文句を言いながら作っていくケンさんと楽しんでいるジャック。
女将とサイトウコンビは黙々とつくっている。
ネットで注文した300枚のタオルは多いと思っていたが、
お祭りの本番までにゆとりを持って終わらせることができた。
ただ、つくられたタオルの一枚一枚を見てみると、
ワタシの案をベースに、文字も柄もバラバラになっていた。
「これいいのかな???」
「個性のあるタオルでええんじゃないかい」
おじいちゃんのその言葉でワタシの不安もなくなり、
むしろ、きれいなものが簡単につくれる世の中だからこそ、あえてこの手作り感満載のものを出すのもいいのかもしれないと思うようになった。
あとは、、、
このバラバラなタオルたちが、
誰かの手に届くことを願うだけである。
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