第4話 いざ”戦場”へ

「じゃあAさんとタケちゃんは、あっちの部屋からお願い。私とジャックはこっちから行くわ」


各位、武器を持ち出発した。

「私とジャックはこっちから行くわ」

なんかドラマみたいでかっこいいと思っていると、近くに誰もいなくなっていることに気づいた。


—————


”掃除” は一部屋を2人で行う。


小さな旅館のため部屋数は ”7部屋” とさほど多くない。


それでも一部屋当たり、20分くらいはかかる。


鍵を開け部屋の中に入る。

さっきまでお客様がいた部屋は、まだ涼しい。基本的に掃除の時はエアコンを切り、窓を開けて作業する。かなり動き回るので、徐々に体温が上がっていく。これがこの時期のツライ点だ。


「タケちゃんはまず部屋の掃除をお願いね。私は水回りから掃除していくから」


「了解しました!」


まずは浴衣や布団のシーツ、ゴミなど部屋の外に出すものを、すべて集めていく。それらを部屋の外にとりあえず置き、掃除を開始する。


「掃除はしっかりとするんだよ!」


女将に最初にきつく言われたことだ。お客様が部屋に入った瞬間、汚れていると思われてしまったら、その後も良い気分がしないらしい。また最近ではネットに書かれてしまうケースもあり、単なる掃除でもかなり重要なことである。


畳や広縁、窓、机、椅子など掃除する箇所はたくさんある。


「よし。よし。よし」


車掌さんのように掃除を終えた箇所を確認していく。これはワタシ流だ。


「It's cool. ボクモスルヨ。ヨシ!ヨシ!ヨシ!」


ワタシの技はジャックに受け継がれている。


「サイトウおばちゃん。部屋掃除終わったから、敷くね」


「お願いね」


旅館にもよるが、うちの旅館ではお客様がチェックインする前に布団を敷く。後から敷くのはセキュリティの観点で、お客様を不安にさせてしまうこともあるみたいだ。


この「布団敷き」こそ、ワタシの得意技の一つだ。

バッと広げたシーツをビシッとのばす。


布団がキレイに敷けた瞬間はまるで芸術作品ができたかのように、とても気持ちの良いものである。


「よし。よし。よし」


すべてを終えて、最後にもう一度確認していると、


「次行くわよ。タケちゃん」


サイトウおばちゃんにいつも急かされる。


これらを繰り返し、大方午前11時くらいで終える。


終わった後は、束の間の休憩タイム。


受付近くのソファに座り、玄関にあるトビラから見える景色を見てボ〜〜とするのがワタシの日課だ。


「タケ、買い物頼むよ」


「はい女将さん!」


このように受付近くにいると、

女将が頼み事をしてくるので、そろそろ新しい場所を見つけなくてはならない。


「あっ、あんたちゃんと着替えていくのよ」


「は〜い」


女将は女性用の着物を着ていくのはやめなさいという意味で言ってるのだが、ワタシ自身もさすがに、この服装で外に行くと動きづらい。自身の部屋に戻り、着替えてワタシもチェックアウトすることにしよう。

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