第6話 あつ〜い温泉


「ただいま〜。買ってきたよ。」


「おかえり。買い物ありがとう。お昼にしようかね。」


時計は 12:00 を示している。

旅館に戻ると、おじいちゃんとケンさんがお昼御飯の準備をしてくれていた。朝同様、休憩室にみんなで集まり、食事を取る。サイトウコンビはこの時間は自分の家に戻っている。


「タケ、温泉入った後に掃除頼むよ。」


「かしこまり〜」


夕方のお客様が来られる前に、”温泉”に入ることが許されている。

入った後に掃除をするのだが、結局その作業で汗をかく。となると、入る意味があまりないのだが、温泉が好きなことと、午前と午後の気持ちの切り替えになるため、入るのがワタシの日課だ。


「ごちそうさまでした。今日のお昼御飯もおいしかった〜」


「当たり前だろ。プロの腕をなめるなよ」


おじいちゃんも元々とあるホテルで料理人として働いていたらしい。おばあちゃんと出会い、おばあちゃんの両親が経営していたこの旅館で働きはじめたみたいだ。


「それじゃあ、ひとっ風呂浴びてきます」


自分の部屋に戻り、タオルと着替えを持ち温泉に向かった。うちの旅館には”内風呂”と”露天風呂”に加えて、”家族風呂”も備えており、中々豪華な仕様である。


男性用と女性用に分かれているが、この時間は誰もいないため、ワタシはもちろん女性用に入る。


「ん〜〜」


浴室の入り口を開けて中に入り背伸びをする。この瞬間が幼い頃から大好きである。


一人には広すぎるこの浴室を使えることは、なんとも贅沢な時間である。買い物でかいた汗をキレイにして温泉に入る。


「ふー、さて午後も頑張りますかね」

温泉に浸かり天井を見ながらつぶやく。


10分ぐらい休憩しながら浸かっていると、


「ん!?」


いつもと何かが違う感じがする。

なにが?


「あつっっ」


温泉がいつもより熱くなっており、とても入れるような温度ではなくなっていた。うちの温泉はその成分と熱さのため、加水しないと入れないようになっている。設備が壊れたのだろうか。


急いで浴室から出て、着替えて受付に行く。


「女将!浴室の設備壊れてるみたい」


女将は何も言わず、浴室に走っていった。

すぐに戻ってきて、女将は業者に連絡をしているようだ。


時計は 13:30 を示している。

お客様は 16:00 にはいらっしゃる。


「タケ!とりあえず掃除は頼むよ」


「はい!」


大丈夫だろうか。

とりあえず間に合うことを信じて、掃除に向かった。

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