第12話 考え事
ワタシはこのように女性の着物を着ているが、
そのことがイコール男性が好きという訳ではない。
世の中にはゲイやオネエ、オカマなど、今日における性的な考え方はとても複雑になっている。それをただ、その見た目だけで勝手に判断して欲しくないものだ。レビューを書いていたお客様には失礼だが、もっと勉強してくださいと言いたい気持ちである。
ワタシがなぜこのようにしているのか、それは以前にも述べたが、理由はとてもシンプルである。「強い”女”になること」ただそれだけである。いや「”女将”になること」なのかもしれない。
この夢は今思えば、小さい頃のおばあちゃんの美しさやカッコよさを近くで見てきたからだと思っている。
例えば、幼い頃に何かに憧れて、プロスポーツ選手やアイドルなどを目指す。あの感情と同じではないかと思う。
だからこそ大将や若旦那などではなく、”女将”になりたいと思ったのである。
大将や女将という名称だけで、行う仕事ととしては違いはないのかもしれないが、ワタシにとっては大きく異なる。
着物を着て美しく振る舞う姿の女将、いや、おばあちゃんをカッコいいと思い、憧れた。
あの時の気持ちが今のワタシの”夢”となっている。
男性が美しく、カッコいい女性を目指すのはイケナイことであろうか。もしくは女性がワイルドで、カッコいい男性を目指すのはイケナイことであろうか。その他諸々、色々とあると思う。
性別で夢を諦めるなんて、そんなことはないはずである。
—————
「タケちゃん・・・」
「タケ・・・」
「タケ!」
レビューに書かれた記事を見て呆然としていたワタシに、サイトウコンビや女将がワタシに呼びかけていた。
「大丈夫です。少し考え事をしていました」
「私はタケちゃんの着物、とても似合ってると思うわよ」
「タケ、悩むのは良いけど、仕事を終えてからにしなさい。今は本日いらっしゃるお客様のことを考えなさい」
「はい・・・」
「タケさん、すみません。僕も今のタケさんがカッコいいと思っています」
ここにいる人たちは本当に優しい人しかいないことに改めて気づく。
「さあ行くわよ〜。今日はタケちゃんとジャックで掃除に行きなさい。Aさんは私と行きましょう。タケちゃんも、もう半年以上この仕事をやっているんだから」
この恵まれた環境に感謝する。毎日の朝、この自分の姿を見て、女将といつも対決をしているが、実際この着物は女将の着ていたのものである。
いつも通り、ボクはワタシでいいはずだ。
「私とジャックはこっちから行きます!」
「Let’s GO!タケさん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます