夏
第1話 いつもの朝のはじまり
ドタドタ!!!
バタバタ!!!
旅館の朝は早い。今日の朝も相変わらず騒がしい。いつもこの騒音で起きるのがワタシ「タケル」である。今年大学を卒業して、祖父母が営んでいる旅館で働き始めた。祖父母の娘である母は”旅館の仕事”なんてしたくないと高校卒業以降、ほとんどここには帰ってくることはない。なのでワタシもそう何度もこの旅館に来ていた訳ではないが、この旅館の雰囲気が好きなのと、ワタシの夢と一致したため祖父母にお願いをし、ここで働くことに至ったのである。
「よし! 準備オーケー」
身だしなみを整え、いつもの服装に着替え部屋を出る。
朝はまず”朝食の準備”だ。
お客様が食事をする広間ではいつもの仲居さんたちが準備をしている。
「あらタケちゃん。おはよう」
「おはようございます。サイトウおばちゃん」
調理室では、おじいちゃん と ケンさん が慌ただしく料理を作っている。
「おじいちゃん、ケンさん、おはようございます」
「おはよう。ちょっと手伝ってくれんか」
「は〜い」
手伝いを終え、玄関に向かう。受付には、おばあちゃんがいた。
「おばおちゃん、いや女将さん、おはようございます!」
「おはっ、、あんたまたそんな格好して、いつまでそうするつもりだい!」
ワタシ と おばあちゃんのいつもの対決だ。
なぜ対決になるのかって、、、
ワタシが女性用の服装を着ているからだ。
男性であるワタシが着るのはおかしいと、いつも言われている。
ワタシの夢は、
「強い”女”になること」
それを具体的にしたときに
「女将」が正にそうであるという考えにたどり着いた。
そう強い”女”を目指しているのだ、
なら格好も、もちろん女性用だ。至って普通のことである。
おばあちゃんに何と言われようとワタシの夢は変えない。
「すみません。。。」
と軽いを返事をして、受付にある掃除遠具を取る。
夏の暑い時期は外に出て水をまき、そして掃除もする。
これがワタシが任されている朝の仕事だ。
水をいれたバケツを持ち、玄関を開けて外に出る。
今日もここ
『イタヤ旅館』はオープンする。
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