手記の断片①

理想を直視することなかれ

 理想には触れることができない。

 それゆえに理想である。


 理想と現実――――この二つの距離がゼロになることはない。

 現実の自分が、常に理想を見続けるからである。


 もしも人が理想を手に入れるならば、それを直視してはならない。

 秘めたる願望として、自分でも覚えのないうちにそれを成就するべきである。

 

 重要なのは、想像力。

 人間の、脳の力。

 そして無意識だ。

 

 俺の考えでは、それらが上手く作用することで、理想的存在を得ることができる。

 現実を理想へと変革することができる。

 だが今のところ、誰もこの話にまともに取り合おうとはしない。

 愚かの極みである。

 しかし、いつか必ず俺の考えが正しいと証明して見せよう。

 

 俺の理論は、決して間違っていない。

 ただ、今のところまだ、鍵となる存在と出会っていないだけなのだ。


 (中略)


 俺はついに、理想への鍵を見つけた。

 そして、あの少女と出会った。

 少女は現実世界の生まれではなく、まさに空想世界の産物であった。

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