虹の選択~恋愛ゲーム症候群~
野良ガエル
序文
あとがき
事実は小説より奇なり、という言葉がある。
この言葉を知ったタイミングがいつだかは忘れてしまったが、俺がこの言葉を強く意識するようになった出来事については、とても忘れることが出来ない。
俺は集合時刻の一時間半も前に待ち合わせ場所にやってきていた。もちろん、他には誰も来ていない。一番乗りをしたい、という願望はとりあえず果たされた。
相変わらず人気のない、例の公園。俺はベンチに腰掛け、スマホを開く。
事実は小説より奇なり。
俺はあのとき、自分の中でその言葉を理解した。
そして俺にそうさせた一連の出来事はあまりに小説的だった。きっとあれ以上に小説化できそうな信じ難いエピソードは、今後も出てこないだろう。なにせギャルゲーだ。でもその本質は全くギャルゲーではなかったのだ。
だが、それでも。
今の方が奇なる現実であることに変わりはない。
今日はあのときの面子が一堂に会する、四年ぶりの集まりだ。
深い付き合いをしている人間もいれば、久しぶりに会う人間もいる。ただ、全員が俺にとって大切な恩人であることは確かだ。
俺はスマホの中から一つのファイルを探す。
【恋愛ゲーム症候群】
そう題されたテキストファイル。これはあのときの記録。当時の感情を万が一にも忘れたくなかったので、自分自身で書き残したものだ。それを久しぶりに開く。
記憶を掘り起こしながら、俺は待った。
最初には誰が現れるだろうか。
皆、変わってしまっているだろうか。
俺はちゃんと全員のことが分かるだろうか。
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