第18話 猫夫人の死体

 ノックの音が館の玄関ホールに響いた。とん、とん、と丁重な調子で二度。だれもかけつける気配はない。客の来訪を告げる控えめな音は、すぐに静けさに吸い込まれた。シックな色合いの絨毯が敷かれ、向かって正面に幅広の階段がのびる、吹き抜けの広大な玄関ホールは、死んだように静かだった。

 ぎいい、と静寂を破るように扉が開かれて、二人組の影が闖入した。影少年と詩人である。

 猫のドアノッカーが言ったことは本当だった。幾何学模様の描かれた絨毯の上に、女性の影があおむけで倒れている。影が溶け込んだかのように、絨毯に染みが広がっていた。猫夫人の死体のようだった。

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