第2話 影の世界

 影の世界に朝はない。しかし夜とも言いきれない。いつでも空は漆黒の夜空。そして大地は雪白せっぱくの基底。そのはざまの空間は、黎明とも夕暮れとも判別しがたい、淡々しい薄明に包まれている。霧のように立ちこめる終わりの気配から、永遠の黄昏、永遠の逢魔が時とも形容される。

 そこに息づく者たちの姿は?

 影だ。だれもが影だ。無機質で無表情な無原罪の対極者。息づく者すべてに堕罪の影が宿る。おぼろおぼろな魂。時に幾何学的な輪郭線。

 それが、影少年のさまよう影の世界である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る