第20話 執事

「何ですか、あなたたちは」

 あくびを終えたその影は、影少年と詩人に怪訝な眼差しを向けた。輪郭だけの影の顔から、問いかけるような視線が放射された。

「客だよ」

 詩人が答えた。

「招かれたのですか?」

「招待状は受け取ってないから、招かれてはいないね」

「では闖入者ですね」

「あなたはどなたですか?」

 影少年が訊いた。

「私はこの家の執事です」

「執事さん? あなたの主人、死んでるけど、いいの?」

「私の主人とは誰のことですか」

「猫夫人だよ」

「猫夫人は死にません」

「じゃあ、ここに倒れている死体は誰なの?」

 執事は二人に歩み寄り、玄関ホールに横たわっている影の死体を見下ろした。懐から眼鏡を取り出し、それをつけてから、あらためて見直した。

「なるほど、猫夫人の死体ですね」

 執事は視線を上げて、二人を見つめた。

「あなたたちが殺したのですか?」

 非難するようでもない、落ち着いた口調だった。

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