第24話 苦手な相手

「すぐそこにいるのに、ドアノッカーの証言を認めてくれないの?」

 扉から耳を離して、エリアンは執事にいった。

「ですから、ここに連れてきてください」

「それなら扉を開けてくれよ」

「ですから、猫夫人の許可を取ってください」

「猫夫人は死んでるじゃないか」

「それはあなた方の問題です。あなた方で解決してください」

「容疑者に解決を任せるの?」

「その方が経済的ですから」

「どこがだよ……。おれは正直、あなたが苦手だよ」

「それはよかった。盗人詩人に好かれたくはありませんから」

「盗人とは聞き捨てならないな」

「では聞かないでください」

 詩人と執事の押し問答は延々と続きそうだった。影少年が割って入った。

「この館には他にだれかいるのですか?」

「いえ、いまは猫夫人と私だけです」

「それなら決まりだな」

 詩人は鬼の首を取ったように笑った。

「館にいるのは猫夫人と執事さんだけ。そして猫夫人は殺された。なら、あなたが犯人だ」

 鮮やかな推理だった。鮮やかすぎたせいか、間が抜けていた。

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