第29話 食堂
執事を追って扉を開くと、その先は吹き抜けの食堂だった。パーティーを開くためにあるようなひどく広大な部屋で、ひどく広大なテーブルが中央を占めていた。クジラの寝床のようなテーブルである。だが、いまはそこに料理の姿は見えない。空っぽの食器や冷たく光るスプーン、火の点っていない蝋燭などが目につくだけだ。いや、目につくものはもうひとつ。料理でも器物でもない、黒々としたその影。
「……おやおや。これは悪趣味なデジャブかな?」
エリアンがおどけるように言った。
広大なるテーブルの片隅に、矮小なる死体がつつましげに寝そべっていた。刃物を突き立てられた、いましがた玄関ホールで見たのと同じような体躯。頬をテーブルに押しつけるようにして、影少年と詩人の方に冷たい死顔を向けていた。
第二の、猫夫人の死体である。
影少年の冒険 koumoto @koumoto
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