koumoto

荒地派の詩人たちをあおぎ見て、拙いながら詩作を楽しんでいます。死と恋について、よぎっていく風景について。一日一作を出来るだけ志しますが、表題作だけでも読んでもらえたら嬉しいです。

マサシとヤスシ。ふたりの幽霊。きょうも、死んでいます。きょうも、死で遊んでいます。

死者が死者だった古き良き時代は過ぎ去り、甦りとそれに付随する犯罪が生まれた。骸と屍。システムはそう規定した。死体の刑事が、死体の犯罪者を駆逐する。

ゾンビの句です。季語はありません。

影の世界を影少年は歩く。死の意味を探して旅をする。影少女の面影を慕って、影少女の記憶に憑かれて。ぼんやりとうつろな影少年の、いきあたりばったりな愉快な冒険。

自分の作品の中から、短編集に含まれていない、独立した掌編や短編を集めてみました。玩具箱というか、ガラクタ置場というか……。過去に書いた作品は、とっくに死体のような気もしますが、た…

バッハの『平均律クラヴィーア曲集』を聴きながら書いた掌編集。 『平均律』、一生聴いても飽きない音楽だと思いますが、曲数は多いし、特徴的な曲名もないので、漫然と聴いているだけでは…

鏡のなかのぼくは、ぼくじゃなかった。影だった。

だれもが生まれたときに、ひとつだけのココロを貰う。縦・橫・高さが七センチの立方体。その箱が、ココロだ。だれにも中身はわからない。

部屋で眠ろうとすると、声がする。どこかのだれかの内見の声。その声によると、自分はもうすぐ死ぬらしい。

あと三分で、七歳の誕生日。少女は眠れなかった。

詩というか、掌編というか、なんなのか。気分の垂れ流し。棘の雪が降ってきました。

世界の敵である呪殺少女は、自らの日常を守るために、きょうも外敵を呪い殺す。失笑と殺戮のホラーコメディ。 ※この作品に登場する死者たちは特別な訓練を受けているので、実際には死んで…

俺と同じ顔をしているクローンが、これから死ぬ。教誨という名目の言い訳。同じ顔たちで為される、それぞれの役割。そういうシステムだった。

一日しか記憶が持たない鈴音くん。曜日の区別が意味を持たない鈴音くん。わたしのこともすぐに忘れてしまう鈴音くん。

あなたの跳躍のお供、ジャンプマン。人工筋肉が跳び立たせる未来。夢の天国までひとっ跳び。

ぼくは夜更けの散歩が好きで。ゾンビは暗がりがよく似合って。きみはなんだかぼくと似ていて。

空はぐちゃぐちゃで、雨は胆汁で、逃げ場はなくて、ぼくたちは歩いていた。

人は死んだら、熊になる。ぬいぐるみが置かれる。テディベアが鎮座する。死んだサエちゃんの机には、花ではなく、かわいらしいテディベアが手向けられていた。

空爆本屋は、ぼくたちの街に本を落としていく。禁じられた本を。禁じられた言葉を。

死ぬ夢ばかり見る、という話。

生まれたときから、泣いていた。いつまで経っても、泣いていた。生きることは、泣くことだった。

すべての窓が、俺の敵だった。窓は皆殺しだ。窓を殺すのだ。俺は窓殺しの散歩を開始した。

好きなゲームをぼんやり思い出しながら、ぼんやり言葉を書いてみたり。紹介やレビューではまったくないので、よくわからない妄言になりそう。

ぼく、丸いです。人呼んでボール。概念寄生体です。宇宙から来ました。

盗賊の首領は、夜送りの刑を下された。悠久の夜に、首領は囚われた。

たかしくんがテストで満点をとれるのは、猫の手のおかげだそうです。

人は生まれるときに影と出会い、死ぬときに影と別れるという。

少年は、燃やされようとしていた。村がそう決めた。竜を呼ぶために。鳥だけが、少年の友達だった。少年の同胞だった。それを犠牲にするのだ。燃やすのだ。竜を呼ぶために。

八十八歳。

エレベーターの扉が開くと、エレベーター人は食事中だった。束の間の旅の、束の間の出会い。

トミーは誕生日を迎えて十二歳になった。父は得意顔。母は憂い顔。儀式が始まる。六の呪い。リボルバー。ロシアンルーレット。

廃屋の地縛霊。二人組の霊視者。寿命を与えようとするミキタカ。後ろに付き添うノグチ。いのちの投げ銭。

彼は両利きで、彼は落ち着きがなくて、彼は不可解だった。

彼女は思い出していた。記憶に残るすべての声を。おばあちゃん、おばあちゃん。彼女に呼びかけるその声を聞きながら。

だれもいない校舎で貘を退治する少年。踏切を守る双子の少女。夕立ちと共に現れる殺人鬼。病によって年老いた女探偵……。死の手前の世界をうろつく、死に近い人々の記録。短編集なので、どれ…

図書館に彼は生まれた。図書館で彼は生きた。言葉のみと触れあう、ひとりだけの世界。生涯でだれとも出会わなかった。

影は、荒野を歩いていた。同じような影が、次々と死んで脱落していくなかを。ゴールを目指して。

これから死ぬぼくの朝。もう死んだぼくの告別。悪くない朝の死。

夕暮れに憑かれた犯罪者の記録。

眠れなくなって、二十一日目。公園に夜な夜な集まる、パジャマ姿の少年少女たち。彼らだけの夜。彼らだけのビー玉遊び。猫たちは、見守っていた。

私たち、蟻で文字です。蟻文字です。そういうことです。

いまではだれもが自分だけの窓を持っています。神さま、ありがとう。

仮面をかぶることを義務づけられた街。日曜日は般若。私は、この街に住むありふれた人間だ。休日を過ごす、顔のない人間のひとり。

直観探偵ソクラテスは、今日も犯人を決めつけます。助手のプラトンは、すべてを知っています。

海岸には猫の死体。街道には人の死体。意味がなかった。なにもかもに。

死んだ兄の部屋は、開かずの間となった。蜘蛛が出るから。

街のそこかしこに白い雲。記憶のそこかしこに白い雲。ふわふわふわふわ夢心地。死のない日常とても平和。

死に触れて、死に揺れる、少年少女たちを描いた短編集です。

夕暮れを歩きながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくにゲームの世は住みにくい。カクカクのポリゴンならなおさらだ。