概要
死の手前を遊歩する短編集
だれもいない校舎で貘を退治する少年。踏切を守る双子の少女。夕立ちと共に現れる殺人鬼。病によって年老いた女探偵……。死の手前の世界をうろつく、死に近い人々の記録。短編集なので、どれか一話だけでも読んでもらえたら。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!死の淵を歩く者たちの生き方を切り取ったナラティブ小説
ナラティブというのは、直訳すれば"物語"という意味の英単語だが、昨今、特にゲーム業界で取り沙汰されているこの"ナラティブ"という言葉は、明確な目的やストーリーラインを語る事なく、ゲーム進行や物語の解釈をプレイヤーに委ねるスタイルを取ったゲームを言い表すのに使われている。言い換えれば、主人公──つまり物語の語り手に対して、プレイヤーが同一視を覚えるようなゲームを指す言葉であると言える。
この短編集の一編を読んでまず脳裏を過ったのは、この"ナラティブ"という言葉だった。
何故だろうか。それは本作が、それぞれの短編の世界観についての説明がほとんど為されていないからだ。
この短編集で描かれて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生と死の意味を知る
幻想的で蠱惑的で奇っ怪な短編集はどのお話も大変上質で総毛立ちます。紙媒体で欲しいと切に思いました。
読み手の五感を揺すぶる文章はその場の空気すら支配するようで、読みながら奇異な夢心地になりました。短編集で一話一話が手に取りやすい長さですが、短い中に凝縮された様々な感情と人のあり方と生き方と死に方と、穴底に沈殿する闇のような世界観に圧倒されます。
個人的には『放課後モノクローム』と『埋葬リザレクション』が好きです。内容と相まったこのタイトルの付け方もとても好きです。
短編集なのでどのお話から読んでも大変楽しめると思います。是非に読んでみてください。言葉の使い方が仄暗くも美しいので、耽美的な表現…続きを読む