良作は、自分も何か書いてみたいと思わせる力がある。
「止まっていたものが動き出す」というテーマで何か書けないか?
読み終えてから、あれこれと考えたので、少なくとも私にとって、この作品は良作である。
表現に気をつけなければならないが、この作品はブラッシュアップの余地がまだまだある。
その点も私の中で評価が高い。
他の作品の質も高く、新しい作品を書く間隔も短いので、作者にはこの作品に構っている時間はないだろうが。
「止まっていたものが動き出す」というテーマに沿って、舞台が整えられ、人物が配置され、蜘蛛という小道具が用いられている。
テーマに対して、自分ならばどうするかと考えながら読み直すと、作者と私の趣味趣向のちがいが浮き出ておもしろい。
まず、私なら蜘蛛ではなく蝶を選ぶ。
あと、このテーマならば、もっとドロドロとしたラストにする。
「止まっていたものが動き出す」というテーマならば、変則的なやり方として、止まっているものを動かさないままにして、読み手に「動いたらどうなるのだろうか?」と思わせて、話を終えるのも一手だ。
星新一の「魅惑の城」のように。
こういう風に、長々と感想が書けるのも、良作の証拠である。