学校からの帰り道、交差点にさしかかった少年は、横断歩道を渡っている途中で影の世界に迷いこんでしまう。空は真っ黒、地面は真っ白、人々は黒い影で顔もわからない。そんなありふれた迷子の…

影の少年は、喜んで死ぬつもりだった。みんなもそうだろうと、本気で信じていた。

影は、荒野を歩いていた。同じような影が、次々と死んで脱落していくなかを。ゴールを目指して。

人は生まれるときに影と出会い、死ぬときに影と別れるという。

影の世界を影少年は歩く。死の意味を探して旅をする。影少女の面影を慕って、影少女の記憶に憑かれて。ぼんやりとうつろな影少年の、いきあたりばったりな愉快な冒険。

鏡のなかのぼくは、ぼくじゃなかった。影だった。