第5話 墓は好き?

 彼女は言った。

「あなたはどんなふうに葬られたい?」

 影の少女は、黒い顔をこちらに向けて、眼で問いかける。隣りあわせに座って。黒い空の下で。

「さあ。それはぼくが決めることでもないし」

 影の少年は、平静に答える。波打つこころのまま。

「もちろん、そうだけど。だから、もしもの、希望の話よ。死ぬとどうなるかわからなくても、死後について話すのは楽しいでしょう?」

「きみと話せるなら、なんでも楽しいよ。でも正直、どうでもいいかな。ぼくの死体なんて、焼こうが埋めようがばらまこうが、好きにすればいい。剥製にされても文句は言えないな。死んでいるんだから」

「あなたの剥製を飾ろうとは思わないけど」

「そりゃそうだろうね」

「墓は好き?」

「好きだよ。静かな場所ならね」

「わたしも、静謐な墓地は好き。葉のさやぐ音が聞こえるような。あなたは、わたしの死体もどうでもいいと思う? わたしが墓に埋められたら、あなたは来てくれる?」

「……それは困るけど」

「なぜ?」

「たぶん、ぼくの方が先に死ぬよ」

 影の少女は、影の少年から眼をそむけて、黒い空をあおいだ。

「わたしは、だれよりも早く死にたい」

 彼女は言った。そう言ったのだ。

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