第27話 ティータイム

「では、私はこれで失礼させてもらいます。いろいろと多忙な身なので」

 執事はそういってまたあくびをした。隠す気もないようだった。

「失礼って、おれたちは?」

「御自由に」

「容疑者なのに?」

「私は殺されたくありませんので、連続殺人はくれぐれもご遠慮願います」

 傍若無人な命乞いだった。

「猫夫人の死体は? このままなの?」

「そうですね。まあ、小一時間ほどは。とりあえず寝かせておきましょう。あくせくするな、というのがこの館の至上命令ですから」

「度が過ぎるのも考えものだけど」

「ティータイムくらいは、死神も待ってくれる。在りし日の主人の訓戒です」

「死はもう訪れたよ」

「私にはまだですから、起き抜けのティータイムとさせていただきます」

 執事は入ってきたときと同じ扉を開けて、玄関ホールを出ていった。影少年と詩人はその場に取り残された。小一時間ほど待たされる死体は永い眠りをむさぼっていた。

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