信秀の死

1550年の1月。布団でぬくぬくと過ごす毎日の俺。

「史実では桶狭間の戦いまであと10年かぁ」

そんなことを考えながら、ぐうたらと過ごす。平成より堕落している毎日だ。

こんなの母親に見つかったら即刻しばかれてただろうなあ……


「匠海殿!」

家康が飛び込んでくる。

「ん?どうした?」

急に入ってきた家康に驚きながらも話を聞く

「の、の、信秀殿が、逝去!されました」

「……は!?嘘だろ!?おい!?」

突然の話で布団から飛び起きる。同時に心臓の高鳴りが起き、頭の中がパニックになった。

味方陣営側で唯一俺の話がちゃんと分かってくれていた織田信秀。

むしろ、信長より俺の方が良くしてもらったかもと思うくらいだ。

あの人が?死んだ?……

「す、すぐに着替えの準備!那古野城へ急ぐぞ!」

「はっ!」

信秀の享年は確か……1551年だったよな?

史実より1年早い死。まだ大丈夫だと思っていた。

やはり、俺たちは真実をねじ曲げた。その現実が突き刺さる。


「信長!」

那古野城に到着する。

「あ!匠海!」

信長直々の迎えの元、数日後に末森城(信秀の城)にて葬式ということで参加した。

まぁ、幸い信長の心的ダメージはほぼ無いようだけど。


「死んじゃったか……」

信長が呟く。

「もう1人の父親みたいなものだったからなぁ、信長にとっては。

信長。少し戦国時代っぽいこと言っていいか?」

「ん?何だ?」


「信秀さん死んじゃったから、信秀を邪魔に思ってた人が全員俺達にこれから襲いかかってくると思う。信勝だけ倒して、後は同盟を組めば……って思ってたけどそうも行かないかもな。」

「そうか、また戦になるのか。次はどこだと思う?」


「多分山口教継やまぐちのりつぐっていう人が居るんだけど……覚えてる?」

「あー、覚えてる。信秀さん裏切る人でしょ?」

前に信長に歴史の授業として教えたことがあった。

信長に歴史の授業というのも皮肉な話だが。

そこの山口さんは元々信秀の家臣なのだが、今川義元に寝返るはず。

その戦いを皮切りに信長は連戦続きになるはずだ。




「今から数年は……いや、下手したら30年は戦まみれだ」

「なるほど、また対策打とうか」

そう言って、末森城に向かう足取りは少し重い気がした。

ーーーー

坊さんのお経が響き、見慣れた顔、知らない顔が悲しんでいる。

恐らく親族や、重臣、家臣であろう。

そんなのを見るとこっちまで悲しくなってくる。

(ついでに、作者も悲しくなる)


「南無阿弥陀仏……」

坊さんの読経が終わったあと、弔い(?)のためか少ししたお食事会が開かれた。

もちろん、有力な親族やその家臣のみだが。

「私は、織田信長です。今は父の跡を継いでおります」

こんな感じで少しした挨拶を順に行う……というわけだ。


もちろん、信長のセリフは俺が考えた。

結婚式の時もそうだったが、あいつ覚えるのが下手だろ…絶対役者にはなれない。

「あ、えー。上村匠海と申します。現在は信長様の重臣として働かせていただいております。

どうか、よろしくお願いします。」


信長の家臣枠で出席した俺は自己紹介をする。どうやら俺が隣にいた方がいいんだと。

平手政長(信長の小さい頃からの世話役)なんかを出しても良かった気がするが……


「えー、織田信勝と申しまする。どうかよろしくお願いしまする。」

あれから信勝はどうなったら分からなかったけどどうやら生きててピンピンしてて安心した。

何かもうそろそろお母様からお呼び出しをくらいそうだが。



そこから数分かけて、自己紹介を行う。まぁ、この会の目的はお互いがお互いを知ることにあると思うが……

信長が信秀の家督を継いだからと言って、そんなことで服従する人達でないのは知っている。


史実では争うような人も多く、食事を食べながら会話を交わした。

これであわよくば、相手の戦略でも読もうと言うのだろうか。

そんな事はさせない……させる気なんて更々ない。

この時代で生き残ってやると決めたのだから。

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