重臣
1547年12月、俺がこの時代に来てから2週間が経つ。
「おーさみぃ……」
そんなことをボヤきながら城下町の探検でもしていた。
信長から刀は貰ったし、一応若侍に見られているはずだ。
「しかし……本当にタイムスリップしちまったんだな...」
2週間経つのに音沙汰なしという事は、ドッキリなんかでも何かの怪奇現象でもなく本当にタイムスリップをした……という事だ。
それにしても、この時代の冬は寒いは寒いが平成の頃と比べると寒い気がする。
余裕で氷点下超えてるんじゃないの?やっぱ平成がこの時代に比べて
暖かいのは地球温暖化の影響だったのかな……とそんなことを考える。
ーーーー
「あ、呼び出しですか?」
城に帰ると信長の家臣と見られる人が、「信長は俺に会いたい」ということを伝えてくれた。
という事で、信長の自室に入って話を聞くことにする。
自室とは名ばかりで護衛だ何だでプライベートもクソもないらしいが。
そんな事はどうでもいいので、取り敢えず要件を聞く。
「匠海……だよね?匠海はうちの家臣になる気ある?」
……家臣?家臣ってなれるものなの?あ、信長が裏口入学させてくれるから可能か。
少し頭がパニック気味になる。
「...家臣って『ははーっ!』の家臣?」
「その家臣」
思わずガッツポーズをとる。家臣になる?そんなのこちらから頼み込んでお願いしたいほどだ。
「もちろんなるよ!で、俺は足軽スタートかな?」
鼻歌混じりにそんな事を言いながら「さらば!」と部屋を出ようとする。
「いや、ちょと待てちょっと待てお兄さん。足軽って何?俺は重臣ってとこに入れるつもりだったんだけど……」
……この言葉に二つツッコミたいところがある。
1つ目は『足軽って何?』だ。足軽というのは雑兵のようなもの。
2つ目。重臣というのは家臣のなかで大将の次に偉いグループの総称だ。
そんなとこに俺みたいなものを入れるなんて……!
「嬉しいじゃないか!」
俺は嬉々として信長に語りかけていた。
「重臣といえば家臣団の重要ポスト!そんな所に同郷であるというだけで入れてくださるこの織田信長さまには……」
「ハイハイ落ち着いてね」
少し暴走しすぎてしまったか。今後は控えることにしよう。
……と、ここで重要なことを思い出した。
「そういえば、俺運動神経終わってるよ?そんな奴重臣にしていいの?」
学年…学校で最低レベルの運動神経を誇っていた俺。
俺ほど兵士になるのに不適切な人間は存在しない。
そう言うと、信長は数秒間俺を見つめてきて、
「ふーん、頑張って。」
この一言だけで全て決められてしまった。
俺は重臣になること。
そして、この戦国時代でなんとか生き延びようとしないといけない事。
この言葉をきっかけに運命の歯車は動いていく。
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