新築と奴隷

とある曜日の昼下がり、いつもの通りゲームやテレビも出来なく退屈しながら寝ていると、信長が部屋にやってくる。

「やあ、いいお知らせを持ってきたよ」

どうやら、こちら側に得がありそうな話だ。

「ん?何かあったか?」


「何だかんだで匠海って重臣でしょ?だから、もうそろそろ城とまでは行かなくても、家持くらいにはしてあげたいなって。家一軒そこに建てたから」

家が建ってることなんか気づかなかった俺は驚いて外を見る。

先日まで無かった大きめの家を確認する。どうやらあそこが俺の家らしい。

「ホントにいいの?正直この城でのんびりでもいいんだけど」

この発言はお世辞などでもなく、本音だ。確かに重臣ではあるが裏ルートでなったようなもんだし。戦国武将と呼ばれるような力は何も持ってない。


「いいよ、これから匠海には色んなことにこき使う気持ちだし」

と、信長の好意に感謝して礼を述べてから少し大きめの家に向かう。

こんな家現代に建てたら何年ローンだろうか……なんて現実的なことを考えながら家に着き、

胸を躍らせながら、扉を開ける。


「おかえりなさいませ」

ん?6...5人か。5人の声が家に響く。

「あ、確かあなたは!」

城で見たことあるぞ。確か柴田勝家しばたかついえだ。名前くらいは皆聞いたことあるだろう。南蛮の宣教師のルイス・フロイスという人物がいるのだが、その人は


「はなはだ勇猛な武将であり、一生を軍事に費やした人」

「信長の時代の日本でもっとも勇猛な武将であり果敢な人」

と書いている。現代で言うジャイアニズムというのだろうか。

そんな考え方を持った人と考えてもらってもいい。


「で……貴方は?」

柴田勝家の隣に正座で座っていた勝家に比べたら小柄の男。

「はっ、私加藤弥三郎かとうやさぶろうと申します。ぜひお見知り置きを」

加藤弥三郎……聞いたことあるな。信長の小姓だっけ。

ん?小姓?……BL展開は絶対ないぞ。絶対。フラグじゃないからな。


で、俺が最も気になっていた残り三人の女の人達。

まあお手伝いさんってとこが一番有り得る線だが、この時代のことだ。

聞いておいて損は無いだろう。

「で、貴方達三人は……?」

「はい。私達上村匠海様の奴隷となりました……」

そこまで聞いて、信長邸にすっ飛んでいく。

ーーーー

「おい!あの奴隷って人達なんだよ!?」

「あっ、気づいた?」

「『あっ気づいた?』じゃねえよ!?奴隷ってなんだよ」

まあ……経緯を説明するから...と、信長は茶を飲んで話し始める。

どうやら事の経緯はこうらしい。


信長として自分の任されている領地は責任もって治めないといけない。

そして、警察のような機関があるらしいのだがそこから、逮捕者の名簿のようなものを毎月貰うんだと。それに、現在で言うサインを押してお返しするらしいんだけど。

その中に時代のせいなのか、奴隷商人の多さが目立っていたらしい。


奴隷商人が逮捕されたってことは、その商人が持っていた奴隷は全員開放される訳だ。

その奴隷の就職先が無いんだと。最初の方は適当な商人のとこに押し付けたりしたこともあったが、それでもすぐに限界が来る……と、そんな事を繰り返している内に

俺のとこにも奴隷が来た……ということらしい。


ということを信長は笑いながら話す。

「ふむ……事の経緯は分かった。で?なんでお前はずっと笑ってるんだ?」

サイコパスか……とか思ったが、その次の信長の回答に思わず驚いてしまった。

「え?だって……寝とったりするんじゃないの?ほら、ほらラノベでアリアリの奴隷展開だよ?ほらほら、どうよ〜」

こんな事を言い出すので思わず脳内がパンクする。


奴隷…まあ確かにそんな事ができないことでは無い。が……流石に可哀想な気もする。

「まあ、平成の世に生きてる者としてはそういうのは出来ないなぁ」

「ははっ、そう言うと思ったよ。まああの子達は便宜上は奴隷だけど、御屋敷のお手伝いさんくらいの感覚で接してくれたらいいと思うよ」

信長のその言葉を聞いて少し安心する。


「あっ、そういえば。忘れてたよ、これあの子達の名前ね」

と、そこらにあった和紙と筆でサラリと文字を書く

ー名簿帳ー

長女…實子かんこ 年...16

次女…新子しんこ 年…14

三女…文子ふみこ 年...12

四女…沖子おきこ 年...10

ーーー

半分はこれ年上か?ちょうど二歳ずつ年が離れているから兄弟かな。

名前はいかにも戦国・江戸時代と言うような名前だ。苗字はないらしい。

まあ、お手伝いさん(便宜上奴隷)の人が家に入ってたことによって、

俺の生活は更にだらしなくなって行くのだった。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る