家臣に・・・

「私をどうか、匠海様の家臣にして頂きたいのです」

超唐突に言われて固まってしまった。理由は想像が着く。

今川から攻められなんかでもしたらひとたまりもないし、かと言って頼れるところはここしかない。ということは、傘下に入るしかない……という経緯だろう。

しかし、何で俺がご指名なんだ?そっちの理由は分からない。


「え?お、俺?」

「はい」

「俺、まだ家臣いないよ?(いつも家にいる人はいるけど)」

勝家とか勝家とか勝家とか。いや、まああいつも家臣扱いではあるけど。

「大丈夫です」


ちょっと待って.......!胸の高まりが抑えられない。

徳川家康が家臣だぞ?こんな幼い子供といえど歴史を彩る一人の役者だ。

「いや、実は、今日ここに来たのは竹千代様を元服させたいなぁ.......と思い.......」

実は俺は家臣を取りに来たのではなく、家康を元服させたいと思っている…という旨を話す。

何か勘違いされてそうで怖いからだ。


「元服ですか!少し早いような気もしますが、もしや、匠海様が、烏帽子親を?

ありがとうございます!」

やばい、なんか話が独り立ちして行っている。

あ、烏帽子親えぼしおやというのは、その人を成人させる仲人のようなものと思ってくれたら良い。


「う、うん!そうなんですよ!それで、家臣の話が出たので家臣も受け入れようかなぁ.......と

なぁ!信長!」

もうここは話を合わせるしかない。暴走した子供を止められることが出来ないことは

平成の世で確認済みだ。

.......取り敢えず気が聞いたことを言ってくれという眼差しで見る。

「おお、いいじゃん。家臣。てか、烏帽子親って何よ?まぁ、そっちのことはそっちでやってくれ。どうにも話についていけん」


.......色んな意味で空気が断ち切られた気がした。

家康は恐らくマイペースな信長のことをどのような目で見たら良いのか混乱しているのだろう。

もうここは俺が話を進めるしかない。信長をあてにした俺が馬鹿だった。

「じゃあ、やっぱ権威ある松平家の元服ってことだから、

やっぱ、凄いところの寺とかでやるものなんですか?」


俺も、恥ずかしながらそこらへんは、よく知らない。

俺も人のこと言えないな。


「え?いや、そんなに私の家に権威もないですし、そこら辺でやるのでいいですよ」

と言うので、後日それは、決行するという事で話は進んだ。

そんなのでいいのか?

「じゃあ、ここの城は誰かに譲るんですか?」

家康が、俺たちの城に上がり込んできたとすると、あの屋敷に移動することになるだろうから、

ここは、

「廃城とかですか.......?」

廃城とは、言葉のとおり。説明するまでもない。


「何を言う!匠海様!私はあなたの家臣なのですから、元々私が持ってた領地も

父上様から引き継ぐ城も、匠海様のものですよ?」

と、あくまでも『常識ですよ?』と言わんばかりの口と目で俺に問いかけてくる。

そっか。確かにそうだ、家臣のものをどうしようと俺の勝手ではあるな。

現代で例えるならば、社長が各社員の配属先をどう決めようかは勝手である。それと同じ理屈。


「おー、俺より土地持ちじゃないの?すげえな匠海」

と、信長は感心してくれたが、そんな問題ですまない気がする。

これって俺事実をねじ曲げてたりする?

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