バテレン
1547年12月24日、クリスマス・イブ。
いつものクリスマス・イブならTwitter辺りで「リア充氏ね」くらいは書くものだが……
今年ばかりは少々状況が違う。
という訳で、もう日課とまで言ってもいい信長との対話。もう恒例行事となっている。
「どうした?」
「ああ、何か伴天連……バテレンって言うんだっけ?外国人が数人来ててさ」
バテレンっつうのは、外国からの使者みたいな感じで受け取ってくれたらいい。
主にヨーロッパから来るものだが...。現在の尾張のような小国に来るものなのか……?
まあ来るもんは仕方がないか。
実際、史実では信長とルイス・フロイスが、会ってた……と聞くし。
まあ、来てもらってるのに追い返すというのは少し道徳的に間違ってると思ったので
一応広間に通しておこうという話になった。
やっぱ、強国になるには外国との接触は不可欠だ。
色んな意味で。武器輸入や、食料の供給。需要はたっぷりある。
この時代ではその需要はまだ容認されていないのかもしれないが。
通すとザビエルみたいな明らかに外国人風貌の男が入ってくる。
いや、そもそもザビエルはハゲおじさんのイメージしかないのだが。
「いいんですか? こんな男を入れて」
家臣が心配そうに聞いてくるが、お構い無しに信長は
「どうしました? 何か用でも?おーい?バテレンさん?」
と、必死に伴天連に話しかけている。
ガン無視された家臣ちょっと可哀想だな。今度菓子でも送っておくか。
「取り敢えず念の為、ここにいますよ。」
当たり前だが、家臣は外国人を見るのは初めてのようで、
襖の向こうで刀を持って座った。
信長が話しかけるも、伴天連は首を傾げるばかり。
という事は日本語が話せないのかもな……。
何で日本語話せないのにここ来たんだ?と疑問が生じたが……
まあそこまで気にすることでもないか。どうせ布教だろうし。
俺が使えるのは本当に拙い中学生が最初に使うような英語だが…伝わるだろうか?
「Can you speak Japanese?(日本語話せますか?)」
カタコトで話してみる。
伴天連はハッとしたような顔を見せるが……首を傾げる。
多分明らかに日本語じゃない言語が出てきてビックリしただけだろうか。
ってか、今のアメリカってネイティブ・アメリカンとかの時代じゃないのかな?
外国の歴史も学んどくんだったな……今頃後悔してもしょうがないが。
「まあ英語はダメだろうな」
俺が使えるのは13年使ってきた曰本語と少し喋れる英語くらい。
個人的にはポルトガル語辺りが話せる日本人か、日本語が使える外国人を待つくらいしか方法がないかな……まあこいつは適当に城に住ませておくってことで...
と、俺の中で結論を決めかけていたその時
「あ!」
信長は大きな声を出す。俺と南蛮人もビックリしてしまった。
「どうしたんだ、ビックリしたぞ。何を...」
「いやちょっと待っててよ」
信長は別の部屋に行ったと思ったら数分後に戻ってくる。
「……んと、ほい!これね」
リュックを持ってきた。何だこれは?ってか、俺と違って信長は現代から物を持って来れたのね。俺の場合は、途中で紛失したが。
「え!?」
リュックを開けるとそりゃビックリした。超久々に見た化学の産物だった。
旅行ガイドブックに翻訳機、更に諸々の物。
充電切れのスマホやソーラー充電器もあった。
「これ何?」
「俺さ、旅行中にこの時代にタイムスリップしてきたんだよ」
まさかのこんな所での衝撃告白。
そこで翻訳機を取り、声を発した。
「何の用ですか?」
《Para que você veio aqui?》
ポルトガル人と見られる男は喜びながら
「Deixa eu te contar aqui!」
「ここで布教させてください。」
「教徒は?」
《Vocês são cristãos?》
「Cristianismo」
「キリスト教徒です。」
「キリスト教か…まあ想像はついてた」
今から数十年後にはどうせ、日本中にキリスト教が布教されてるはずだ。
問題はないだろう。多分。うん。
「俺は別にいいと思うよ?」
「そうだな」
「でも、百姓一揆みたいなのを起こされると困る」
現在信長が動かせる兵の数を考えると、超大規模の百姓一揆なんかを
デウスの御心のままに!とかいいながらされたら其れこそ一巻の終わりだ。
「そこは、布教の条件とすれば?」
と、信長が横で提案してくる。なるほどなあ……と思いつつも
信長が百姓一揆という言葉を知っていることが驚きだった。
「そうだね。その条件で行こう」
俺たちは次のようなこと伴天連に決めさせた。
1.この地でのキリスト教布教を許す
2.あなたはキリスト教徒のリーダーとしてこの地のキリスト教徒を纏める
3.貴方又は、あるキリスト教徒を中心としたグループを作り、
一揆をしない事。
etc.....
幾つかの事を書いた紙にサインさせた。
因みに、言葉がもちろん伝わらないので、
信長の翻訳機を暫く使い、城のポルトガル語を使うものを育てるとの事だ。
最後に名前を聞くと、
フクロムと言っていた。
これで、また仲間が出来たわけだ。
国全体が結束するような…そんな国を作りたいと思っている。
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