ルイス・フロイス

ある日の夕暮れ。その日は丁度信長とお勉強会も兼ねた、戦の反省会をしていた。

「だから、ここに今川さんってのがいて……」

「フムフム……ならここを潰すのが次の戦なんだな?」

「そんな一気に潰せるか、アホ。まずは尾張の中の敵を……」



「信長様……あ、匠海様も!南蛮の者であると思われる使者がすぐそこまで!」

突然家臣が割り込んでくる。どうしたどうした。南蛮の使者?

また宣教師が来たの?


「えー?南蛮の使者ってフクロムなんじゃね」

信長がめんどくさそうに言う。

ここらにいる南蛮の奴らと言ったらフクロムとその愉快な仲間たちだろ。


「なんでも名をルイス・フロイ...」

「ルイス・フロイス!?きてんの!?」

「何だよ突然興奮し始めて。欲情した馬か?」

馬ではないが、フロイスには会いたい。……フロイスって今何歳だ?

案外最後の方に信長と会ってた記憶があるが。まだ未成年なんじゃないの?

でも、フロイスが日本に来ている……しかも、尾張に来ていているという事は

会わない手は無いであろう。


「スグそのルイス・フロイスって人を呼んで。会ってみたい」

「何?匠海会うの?それなら俺も会うけど」

信長も一緒に同席すると言うので、同席してもらう。

そうすると、ものの10分ほどで来る。


「コンニチーハ!」

……ん?見かけは20くらいの青年。日本語喋った?

「え、日本語喋れるんですか?」

「ハイ!私ムズカシイ言葉ワカリマセンガ、フネでベンキョーしました!」

抑揚が少々変ではあるが、立派な日本語だ。

……あれ?ならフロイスの隣にいるフクロムの存在価値無くね?

フクロムも、フロイスが日本語を喋れることは想定外……というような顔をしている。

何か可哀想だが、笑えてきた。


「それで、ご要件は何でしょうか」

「ハイ!ノプナガ様のトコロで同胞のフクロムがフキョーサセテイタダイテルトキイテ……

今日はこんなものを!」

ノプナガ様って……可愛いなおい。

そう言って、フロイスが取り出して来たものにビックリしてしまった。

「え……」

地球儀だったのだ。確かに、信長が地球儀を持っていたのは有名な話ではあるが。

そう思ってみていると俺が興味津々に見ていると思ったのか、説明をし始める。

「(読みにくいから普通に書きます)これはこのデウス様が作られたこの地を簡略的に表した図でございます!これがこの日ノ本です。そしてここが我々の住むところです!」


どうせ、ヨーロッパは大きいぞ。お前らの国なんか小さいかんな!

なんて事を言いたかったのだろうが、まあそんな事は最初から知っているので華麗にスルーする。

「ああ、小さいね。それでここが明(中国)かな?そしてここが……あら、ここ少し形が違うな」

そんな事を言いながら信長と地球儀を見つめる。

「本当だ。平成のものとは全然違うとこもある」

「まあ、測量技術が全然違うからな。間違っていてもとうぜ……あ!」


ヤバい。思わず我を忘れてフロイスの前でヨーロッパの測量技術を侮辱すると言っても過言ではないようなことを言ってしまった。と、フロイスの目を見る。すると彼は笑って

「そう!ここが明です!よく分かりましたね」

と言い始めた。良かった。

世界で一番怖いのは火事でもなく親父でもなく、宗教の絡んだ戦争だ。

こんな所で巻き込まれたら溜まったものじゃない。

そして、少し話をしてからなんとかフロイスと何事もなく会談を終えることが出来た。

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