第19話 ケルベロス
ツチヤ・シンはどこに行ったのか?カズマはなかなか眠れなかった。羊を数えてみたが、そんなに甘くはない。
勤め先が倒産し、アスパース商会に転職することになったタチカワ・ツバサが、センダイにある別の会社の営業支配人として雇われることになった。オフィスはレンボウ(連坊)という番地にある。
ところがこの会社は名ばかりの小さな事務所で、社員はタチカワ1人きり。しかもこの職を斡旋した男と社長が同じ人物ではないかと疑い、不審に思ったタチカワがセンダイ署、生活安全課のワタリに依頼した。ワタリはイバラキ県警だったが、諸事情から所轄署、しかも遠く離れたミヤギへと左遷された。
この会社、アトランティス金物会社の社長であるオオクラ・ケンセイ氏は、タチカワ氏に、入社を承諾したという旨の誓約書を書かせ、さらに自分はアスパース商会と喧嘩をしているので、アスパース商会には断りの手紙を書かないでほしいという。そして仕事の内容は、人名録から金物業者の名前を書き写させることだけであった。
「いったい僕が何をしたっていうんですか?」
タチカワは今にも泣き出しそうだ。
カズマはひょんなことからワタリのアパートに居候させてもらっていた。タチカワも遊びに来ていて、3人でUNOをやった。カズマはボロ負け、タチカワの圧勝だった。
「それにしても、アスパースとは奇妙な名前だ、『中傷』とか『悪い嘘』とかそんな意味合いじゃなかったか?」と、カズマ。
「英語に詳しいんだな?」
タチカワがカードを片付ける。
「らら、ららら、ららら〜♪」
カズマはウォークマンから聞こえるオオグロ・マキの歌声に乗ってる。
カズマとワタリはタチカワ氏の友人で失業中の身ということにして、オオクラに会わせる。ところがオオクラは恐怖におびえた顔をしており、彼らと少し話をしただけで事務所の奥に引っ込んでしまう。
「怪しいな?」
カズマはワタリの顔を見た。
そこで大きな物音がしたので3人が奥の部屋に飛び込むと、オオクラが首を吊って自殺を図ろうとしているところだった。
魔犬の伝説が伝わる富豪のタカハシ家で、当主のタカハシ・ヒロシが死体で発見される。表向きには心臓発作による病死と発表されたが、ヒロシの死体のそばには巨大な犬の足跡があった。
ミツヤは、事件の調査をフジタ係長から依頼される。子息のいないタカハシ・ヒロシの正統な後継者は、ヒロシの甥にあたる若きタカハシ・アマネ一人である。しかし、フジタに伴われてオダワラにやってきたミツヤの元に、館へ赴くことを警告する謎の手紙が届く。
フジタは、別の事件に携わる必要があるといい、ミツヤが代わりにタカハシ・ヒロシの客人として入館に同行する。
委細ありげな執事のサトウ・ヒロキとその妻、サトウ・アリス、脱獄囚のサワムラ・リキヤ、近所に住む昆虫学者のワキ・サダオとその弟、ワキ・ヒロキなど、ミツヤは見聞きしたことをフジタに向けた手紙や自らの日記に綴る。サトウとその妻の不審な行動は何故なのか、凶悪な殺人犯サワムラは何処へ潜んでいるのか、ワキ兄弟はなぜ自分や、他の人にここを立ち退くよう懇願するのか。そして、自分が湿地帯ではっきり聞いた恐ろしい声は「魔の犬」の咆哮ではないのか……。
さらに、それらの誰でもない未知の人物が、身近に潜んでいることをミツヤは全裸になって知る。
リュウジはミツヤから魔犬について調べるよう頼まれた。
図書館にやって来たリュウジは資料を集め、読書ブースで読んだ。
ケルベロスは冥府の入り口を守護する番犬である。ヘーシオドスは『神統記』の中で、50の首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬として描いているが、普通は「三つの頭を持つ犬」というのがケルベロスの一般像であり、文献によって多少の差異はあるが、主に3つ首で、竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれる。
またハーデースに対して忠実で、ヘーシオドスは死者の魂が冥界にやって来る場合にはそのまま冥界へ通すが、冥界から逃げ出そうとする亡者は捕らえて貪り食うと述べている。これが地獄の番犬といわれる由来である。
神話におけるエピソードは多くないが、ヘーラクレースがケルベロスを捕えて地上に連れ出した話は有名である。この際にケルベロスは太陽の光に驚いて吠え、飛び散った唾液から猛毒植物であるトリカブトが発生したという話も残っている。
普段は3つの頭が1つずつ交代で眠り、残る2つの頭で常に見張りをしているが、竪琴の名手オルペウスが死んだ恋人エウリュディケーを追って冥界を訪れたとき、ケルベロスはオルペウスの奏でる竪琴の美しい音色によって全ての頭が眠らされている。
また、甘い物が大好きで、蜂蜜と芥子(小麦とも)の粉を練って焼いた菓子を与えれば、それを食べている間に目の前を通過することが出来る。アイネイアースを連れたクーマイのシビュレーや、ペルセポネーに美を分けて貰いに行ったプシューケーはこの方法でケルベロスをやり過ごした。その後この菓子はカローンへの渡し賃にもなっている。ただし、プシューケーが冥界にやってきた際、カローンに渡したのはオボロス銅貨、ケルベロスに食べさせたのは堅パン、シビュレーが食べさせたのは睡眠薬入りの酒に浸したパン(ソップ)だともいわれる。そして、後にこのことから厄介な相手を懐柔する賄賂の意で「ケルベロスにパンを与える」という言葉が生まれた。
ダンテの『神曲』「地獄篇」では、貪食者の地獄において罪人を引き裂く姿が描かれた。
カズマはリュウジからモンスターに関する情報を教えてもらった。談話室で電話を終えるとアリスがやって来た。
「あの、甘いお菓子を作ってもらえませんか?」
「どうして?」
「ケルベロスを倒すためです」
カズマはアリスに詳細を伝えた。
部屋に入るとウォークマンをリュックから出して、イヤホンを耳にした。再生ボタンを押すとカセットがカラカラ回りだす。
『そんなはずはないさ〜♪』
翌朝、5月14日。嫌なニュースが飛び込んできた。 トウキョウのある高等学校の寄宿舎で、生徒12人が上級生3人から漁港の堤防から海へ飛び込むよう強要され、3人が死亡。1人が行方不明となる。また生徒たちの日記や証言から、これ以前にも上級生らによるいじめが連日横行していた事が発覚した。
センダイ署のミコガミ課長もとに、ノーフォークオダワラに住むタカハシ・アマネヒルトン・キュービット氏から謎の絵が送られてくる。👸💂👷
いろいろな姿の人形がいくつも並んだ絵で、オオワダ部長刑事は子供の落書きではないかと言うが、ミコガミはもっと重要なものだと考えているようであった。
「カナガワだったら管轄外じゃ?」
生活安全課のワタリが言った。
「オダワラはカナガワのオダワラではなく、センダイにあるオダワラだ」
手紙を折りたたみミコガミが言った。
「紛らわしいですね?」
「カナガワのオダワラはカマボコがうまいですよ?」
ワタリの母方の祖父母はオダワラに住んでる。ワタリはオオクラの自殺を防いだ。カズマがいなかったら今頃、大変なことになってた。
昼過ぎ、タカハシ邸で新たな事件が発生した。サトウ・アリスが頭を鈍器で殴られ、死体が浴室の湯船に浮いていた。
ミコガミはオオワダが運転する覆面パトカーでタカハシ邸に向かった。
タカハシ邸に着いたミコガミとオオワダは、新たな悲劇が起こってしまったことを知る。タカハシ・アマネとサトウ・ヒロキが撃たれ、アマネは死亡してしまったというのである。ミコガミはアマネがヒロキを撃ち、そのあと自殺を図ったか、その逆だと考えていたが、全裸になったリュウジは外部の侵入者がいたと断定し、第3の弾丸を窓枠の下に発見する。
さらに、リュウジは暗号を解読した。
👸は、サトウ・アリス
💂が、タカハシ・アマネ
👷が、サトウ・ヒロキ
アマネは第三次世界大戦のときにワシントンで戦っている。また、ヒロキは執事をする前は工事現場で働いていた。アリスは総理大臣の姪だ。
5月15日
『スパロウ』の幹部、ワキ兄弟を逮捕。
5月16日
『スパロウ対策本部』のツチヤ・アズサとハマムラ・リオによって『スパロウ』のボス、ツチヤ・ケンが逮捕される。ケンはタカハシ邸での殺人の実行犯でもあった。
全裸になったリュウジによって、オナガワのパチンコ屋跡に潜んでいたケンが発見される。この活躍により、リュウジは対テロ部隊に抜擢することになった。
5月16日
トウキョウ都庁小包爆弾事件が発生。職員1人が重傷を負う。
この年から1997年にかけて、「小室ファミリー」が全盛期を迎える。安室奈美恵、trf(現TRF)、華原朋美、H Jungle with t、globeなどがヒットを連発。
2月6日 - 福山雅治、「HELLO」発売。ミリオンヒット。
2月13日 - EAST END×YURI、「MAICCA〜まいっか」発売。ミリオンヒット。
2月20日 - 大黒摩季、「ら・ら・ら」発売。ミリオンヒット。
3月15日 - H Jungle with t、「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」発売。ダブルミリオンヒット。
3月24日 - THE BOOM、「風になりたい」発売。
4月5日 - スピッツが「ロビンソン」発売。ミリオンヒット。これによって、一気に知名度がアップした。
5月1日 - 小林武史がプロデュースするMY LITTLE LOVERがシングル「Man & Woman」でデビューし、ヒットを連発。8月21日発売の「Hello, Again 〜昔からある場所〜」がミリオンヒット。
5月3日 - シャ乱Q「ズルい女」発売。ミリオンヒット。
5月10日 - 岡本真夜がシングル「TOMORROW」でデビュー。ミリオンヒット。
5月13日 - 平井堅がシングル「Precious Junk」(ドラマ『王様のレストラン』のエンディングテーマ)でデビュー
5月15日 - FIELD OF VIEWがシングル「君がいたから」でデビューし、ヒットを連発
5月19日 - 中島みゆき、「旅人のうた」発売。ミリオンヒット。
5月22日 - サザンオールスターズが「マンピーのG★SPOT」で活動を再開
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