第27話 ノックスの十戒・後編
10月22日朝、トウキョウに住むミステリー作家で2人行方不明になった。
同日20時10分頃、センダイ市アオバ町にある農道自動車で走行中の団体職員の男性が、小用を足すために車から降りたところ、崖下にマネキンのようなものが2体捨てられているのを発見し通報、駆けつけた捜査員が、道路から約10メートル下の雑木林で、女性の遺体を発見する。
1人はアイザワ・キョウカ、もう1人はフブキ・トクコ……2人ともミステリー作家だ。キョウカのケータイには『アオキ・ミツヤ』からの通話履歴が残されていた。
捜査本部は事件発生から5日後の10月27日には、ワタリがアオキ・ミツヤ宅を訪問し、事件当日のアリバイなどを事情聴取している。
同年10月29日、ワタリはミツヤを重要参考人として取り調べ、ポリグラフ検査を実施したほか、毛髪と指紋の任意提出を受けた。アイザワ&フブキ殺害に関して、犯人とミツヤのDNA型がほぼ一致するという鑑定結果が出たものの逮捕には至らなかった。
失恋に悩む青年ミツヤと、ビジネスマンのタマモリ・ヒロシは、ドラッグの売買で偶然知り合い意気投合する。元交際相手のお別れパーティーに、一緒に行って欲しいとミツヤに懇願され、ヒロシは一杯だけ付き合うことにする。
ミツヤが交際していたナオは、現在の交際相手の住むオオミヤに移住することになり、友人宅でお別れパーティーが開かれていた。パーティー会場であるナオ宅に、ミツヤとヒロシは早く来すぎた為、2階で酒とドラックをやりながら会話する。ミツヤの失恋話に始まり、交際中の出来事や、ナオの性癖、果ては宇宙と神について語りあう。
「ゼウスなんてどうでもいいけどさ?ナオがドSだったとは意外だ」と、ヒロシ。
会場に人が集まり始め、2階にセクシーな女たちが訪れ、ドラッグを分けてもらい会話に参加する。ついに主役のナオが会場に来ると、ミツヤは興奮し始めた。美人なナオは男性に口説かれていた。薬でラリって空気を読めないミツヤが乱入し、会場では殴り合いが始まる。
どさくさにまぎれてタマモリがナオを持ち帰ろうとするとドンッ!と爆音がした。
「どうして僕が犯人なんだ?」
ミツヤは『小説家殺人事件』を読んでいた。ミツヤは小説の中で警察に撃たれて死ぬ。ミツヤはアイザワとフブキを殺した犯人だ。アイザワとフブキは、ミツヤの書いた『学習塾殺人事件』の原稿を盗み、アイザワがナイフでミツヤを殺して、フブキの協力で森の奥に死体を埋めた。だが、ミツヤは満月の夜に蘇り2人に復讐を果たした。
『小説家殺人事件』の作者はアイザワ・キョウカだ。
被害者である中学3年生の女子、ヒメミヤ・アズサの母親が、講師、クキ・イサムとの関係が上手くいっていないと塾に繰り返し相談した結果、犯人のアルバイト講師、クキが担当する国語の授業を受講させないことになったため、クキはアズサに対して恨みの感情を抱くようになった。しかし、アズサとクキとの関係が上手くいっていないことに関しては塾側にも問題があったという向きもある。
犯行当日、クキは模擬試験の監督を外されていたが包丁とハンマーを用意して出勤した。模擬試験を受けに来たアズサに「別室で国語のアンケートを取りたい」と言って退室を命じ、国語の授業を受けていないアズサと2人になったところを包丁で刺殺した。
犯行後、警察に電話で自供し、駆け付けたシブヤ警察署の警察官によって現行犯逮捕された。
犯人のクキ講師(事件後に懲戒解雇)は都内のW大学に在籍していたが、学内で窃盗行為を繰り返し他の学生の財布を盗んでいる現場へ駆け付けた警備員にけがを負わせたとして窃盗罪と傷害罪で有罪判決を受けた前科があり、停学処分中(のちに退学処分)であった。学習塾側ではこうした前科は把握していなかった。
クキは幼少期に厳格な環境で育ち、菓子やテレビゲームを与えられず、男女交際を禁止されていたと報じられている。その結果、学業こそ優秀であったが、思春期以降に厳格な環境で育った反動により親に対して家庭内暴力を振るうなど横暴な性格を見せ、コミュニケーション能力に乏しい傾向があったとみられる。精神科医はクキは「アスペルガー症候群で、犯行当時は反応性幻覚妄想障害に陥り、剣を持った被害者の像などの幻視があった」と証言。
「生徒としての被害者に腹を立てただけでなく、幻覚に影響されたからこそ犯行に至った」と述べた。
公判中の際にも突然、大声で「誰か早く俺を地獄に連れてけ!!」などとわめき出すなど、奇妙な言動が目立っていた。
アイザワ・キョウカはかつて、塾でセールスマンをしていたが、すごいブラック企業で辞めたらしい。
ミツヤはキョウカのブログを見ていた。
スコッチウィスキーの入ったグラスに手を伸ばすと、ケータイが鳴った。兄のカズマからだった。キョウカが殺されたらしい。
キョウカの遺体が発見されたのは11月10日の早朝だ。
キタセンダイ署近くの山林内で、キョウカはライフル銃の銃弾を受け死亡した事件。犯人と見られる二人組の男は事件後現場から逃走したとみられる。
近隣に住む住人がオレンジ色の上着を着用したハンター風の二人組の男らを目撃しているが、男らは黒色のRV車に乗り込み、現場から立ち去っている。
住人たちは119番通報したが、キョウカの左脇腹から右胸にかけてライフルの銃弾が貫通しており、即死だったと見られる。
「被害者は4人とも小説家」
キタセンダイ署の捜査本部にワタリはいた。
「犯人は殺戮を楽しんでいる」と、上司のゼニガタ警視。
「キョウカは④のルールを破っている」
壇上に立っているカズマは言った。
ケータイが鳴った。カズマは一瞥して出た。
《アニキ、真犯人を見つけたぞ》
リュウジからだった。
「おまえ、裸になったのか?」
《あぁ、次に殺されるのは俺だからな?》
「は?」
《俺もミステリー書いてんだよ。アクタガワ・リュウジって聞いたことないか?》
「『マサムネの末裔』だっけか?」
伊達政宗の末裔、ダテ・ケンゴがアオバ城で起きた事件に挑むってストーリーだ。天守閣は密室状態だったが、秘密の通路を使って真犯人は脱出してる。
「え!?マジで?全然知らなかった」
リュウジは③を違反している。
《今夜8時が俺の命日だ》
リョウヘイはリオのことを思い出していた。本当の母親は5歳のときに肺炎で亡くなった。
リオは母親の弁当屋のパート仲間だった。だからなのか、ご飯が美味しかった。肉じゃがもカレーも美味しかった。
ユズはベストセラー作家になった。ユズキ・アイというのがペンネームだ。
リョウヘイもミステリー作家を志し、何度も賞に挑戦してるが落選してばかりだ。
殺した4人の作家はリョウヘイの書いた作品を審査したことがある。
「死んで当然なんだよ」
リョウヘイは改造したエアガンをホルスターに入れた。ユズを殺す前にアクタガワを殺すつもりだ。アチコチで発砲したのはストレス解消だ。
エンジンの音がした。タクオかも知れない。タクオも作家を目指していたが落選したことを酷く悔しがっていた。本業が大工なのでハンマーの扱い方はうまかった。リョウヘイは居酒屋でバイトしてたこともあり、包丁の扱い方には自信があった。
アパートから出て、螺旋階段を降りると覆面パトカーが止まっていた。
「クソッ!」
ホルスターからエアガンを抜こうとしたが遅かった。カズマが警察拳銃、ニューナンブをぶっ放し、リョウヘイは口からドス黒い血を吐き出した。
「リュウジを狙ったことが運の尽きだな?」
カズマは不敵に笑った。
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