第6話 スキャンダル

 2009年3月20日、結婚して開業医に戻っていたミツヤは、往診の帰り道にカズマとばったり会った。

 2人はセンダイ駅近くのカフェでしゃべることにした。

「まだまだ寒いな?」

 ミツヤは手編みのマフラーを巻いていた。

「奥さんに編んでもらったのか?」

「うん」

「太ったな?ちゃんと作ってもらってるんだ?」

「独身時代はコンビニ弁当ばかりだった」

「さては風邪を引いたな?」

「全裸じゃないのによく分かったな?」

「俺を馬鹿にしてるのか?鼻の頭が真っ赤だ」

 やがてハーレーダビッドソンが乗りつけ、顔にフランケンシュタインの仮面をつけた身長2mはあるであろう大男が部屋に通されてきた。

 今は亡き、レスラーのジャイアント馬場をカズマは思い出した。

 フランケンシュタインはハルミ・マキヤと名乗り、ミヤギ財閥ヘの問題で代理人としてきたと言うが?カズマは全裸でコーヒー☕を飲みながら推理した。

 ハルミの正体が、ミヤギ・ムサシ会長その人であると見抜く。ハルミはミヤギ会長であると認めて仮面を取り、依頼の内容を語り出す。


 5年前、ミヤギはメグロ・モモコと交際していた。モモコはデパートの店員で、カズマの幼馴染だ。ミヤギは近くイワキ銀行の頭取の娘、ヤスコと結婚することが決まったのだが、そこへモモコが、二人で撮影した写真をヤスコへ送りつける、と脅迫してきたのである。

 写真が送られれば破談は必至であり、ミヤギは写真を取り戻すために人を雇う。しかし、家捜しや強盗まで行なわせたにもかかわらず、写真を見つけることはできなかった。写真を送ると予告された婚約発表の日が迫り、自らカズマへ依頼に来たのであった。


 写真を取り戻す依頼を引き受けたカズマは、記者に変装して情報を集め、ユサ・ヨウイチロウという弁護士の男が毎日モモコを訪ねていることを知る。

 モモコの家を見張っていたホームズは、訪ねてきたユサとモモコがタクシーで移動するのを追跡し、センダイ郊外の教会に辿り着く。教会にはモモコ、ユサ、牧師の3人がいて、入ってきたカズマに協力を要請する。

 これはカズマにとっても想定外の出来事で、モモコとユサが結婚する立会人をさせられてしまったのだった。 結婚した二人が新婚旅行などで出かけると取り戻すのは難しくなる。

「オアフ島楽しみだわ?」

 モモコは呑気に言っていた。

 カズマはすぐに行動を起こすことを決め、ミツヤに助力を頼む。

 公園で全裸でブランコをこいでいるとき、カズマは写真が家の中にあると推理し、モモコ自身にその場所を教えてもらおうというのである。


 家へ戻ってきたモモコがタクシーから降りようとしたとき、周囲で男たちの喧嘩が始まった。角材、鉄パイプ、メリケンサック……男たちは様々な武器で武装していた。

 ドカッ👊ドカッ👊、黒いキャップをかぶり全裸でステゴロで闘ってるのは間違いなくリュウジだった。

「久々に殺せる!ヒャハハッ!」

 リュウジは奇声を上げていた。

 喧嘩に巻き込まれそうになったモモコを、ホームレスに変装したカズマが守ろうとして、負傷する。顔から大量の血を流して倒れたカズマは、モモコの家へと運び込まれた。


 一部始終を見守っていたミツヤは、一馬の合図で発炎筒を家の中に放り込み、野次馬たちと声を合わせて火事だと叫ぶ。

 その声を聞き、立ちこめる煙を見たモモコは、とっさに最も大事なもの、写真を取り出そうとしてしまい、カズマにその隠し場所を知られる。カズマの負傷は家へ入りこむための芝居であり、リュウジや野次馬は、みなカズマが手配していたのである。


 隠し場所を知ったカズマは、明日ミヤギと一緒に家を訪ねて写真を取り戻すことにして、ミツヤと二人でアパートへ戻る。カズマがドアの前で鍵を開けようとしたとき、通行人の青年からおやすみなさい、と声をかけられる。

 しかし、青年が誰なのかはカズマにも分からなかった。


 翌朝の空は夕日みたいな朝焼けだった。

 カズマとミツヤはミヤギを伴いモモコの家を訪れるが、モモコの姿はない。隣人のふくよかなオバサンから、モモコはユサと共にトウキョウへ旅立ったという伝言を聞かされる。

 慌てて確認した隠し場所には、手紙とモモコ1人だけの写真が残されていた。昨日の騒動の後、負傷したホームレスがカズマだと気付いたモモコは、男装してアパートまで尾行し正体を確認すると、挨拶の声をかけて立ち去ったのであった。

 手紙には、ユサと相談した結果、カズマが相手では逃げるしかないと考え、姿を消すと書かれていた。ミヤギと撮った写真に関しては、結婚した身であり悪用する意図はもはやなく、お守りとして手元におきたいという。その代わりとして、モモコ1人だけの写真を、手紙と共に残していったのだった。

 モモコの手紙を読んだミヤギは、ひと目もはばからず号泣した。

「男だろ?容易く泣くなよ?」

 カズマに窘められ、ミヤギはハンカチで涙と鼻水を拭った。

「この世のために必死でガンバる」


 ミヤギは謎の組織にセンダイ市街の路地裏で襲われたが、タキ・リュウマ、ツチヤ・アズサ、ハマムラ・リオ、ミコガミ・シンザブロウ4人の手によって助けられた。

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