第10話 宿敵
2010年1月24日、リュウジのアジトへ、カズマが突然姿を現した。カズマはアジトの鎧戸を閉め、ショットガンを警戒していると説明する。そして、1週間ほどキョウトへ出かけるので同行して欲しいと頼む。
事情を尋ねるリュウジに対し、カズマは自らの宿敵であるタカハタ・カズヒサについて語る。タカハタはカズマの大学時代に留年した。タカハタは背が小さく、そのことをカズマたちは笑った。それが引き金になって、大学に来なくなった。
ひきこもってる最中、犯罪者としての素質を開花させ、ついには「犯罪界の織田信長」と評すべき存在になったのである。
現在では多数の手下を組織し、カントウで発生する悪事の半分と、未解決事件のほとんどに関わっているという。
カズマは自身と対等の能力を持つタカハタと渡り合い、激しい闘争の末、その周囲へ網を張りめぐらせることに成功する。
3日後には網が閉じられ、タカハタをはじめとする組織の構成員が残らず警察に逮捕されるところまでこぎつけたのである。網の存在に気付いたタカハタは、センダイ駅近くのネット喫茶に宿泊してるカズマを訪れた。
アパートにいると危険だとカズマは思ったのだ。
タカハタは手を引くように要求し、さもなければ破滅だと恫喝する。カズマは、タカハタを破滅させられるなら自らの破滅も受け入れると応じ、二人の会見は終わった。 会見後、カズマの命を狙ったタカハタの手下からの襲撃が始まる。
カズマは、警察が行動を起こせるようになる3日後までキョウトで身を隠すことに決め、リュウジに同行を頼みに来たのである。
全裸になると攻撃系統の魔法を使えるリュウジの存在はありがたかった。
「もしものときは新幹線の中でも全裸になれよ?」
「逮捕はいやだぞ?タカハタってのはどんなタイプだ?」
「陰湿な感じだよ、ベートーヴェンみたいな髪型をしてる」
リュウジは頼みを引き受け、今夜は泊まっていくよう勧める。カズマは見たいマンガがあるからと辞退し、翌日センダイ駅で合流する約束をして別れた。
リュウジは指定された新幹線の客室には、老人ばかりがいるだけでカズマの姿はない。発車の寸前、赤い服を着た老人が変装を解き、カズマの姿となる。
老人たちは刑事だった。
驚くリュウジに、カズマは用心のための変装だと説明し、周囲を警戒する。動き出した列車の窓からは、列車を止めさせようと追いすがるタカハタの姿が見えた。
カズマたちは教授の追跡から、ぎりぎりで逃れることに成功したのだ。 カズマは昨晩ネット喫茶へ放火されたこと、ミツヤが転勤したことなどを話した後、タカハタが特別列車を用意させて追跡してくると予想する。
このままではキョウトにつくまで追いつかれるため、途中駅で降りて姿を隠すことに決める。荷物を残して、ナゴヤで下車した二人が身を隠している前を、タカハタを乗せた特別列車が走り抜けていった。
翌朝、イマイケに到着していた二人は、警察と無線で連絡を取り、組織を壊滅させたがタカハタだけは取り逃してしまったことを知る。カズマはタカハタがすべてを賭けてでも自分に復讐すると考え、リュウジに巻き込まれないうちに逃げるよう勧める。しかし、リュウジにはこの勧めを受け入れる気がまったくなかった。
「優しいところもあるんだな?」
「勘違いするなよ?城を見たいだけだ」
二人は旅を続けることに決め、ナゴヤ城へ向かう。その日の夜、二人はイヌヤマに到着して一泊する。そして翌日、ギフへ向かう途中で、コンビニに立ち寄ったのである。 本を立ち読みする二人のもとへ、店員が近づく。彼はシールタイプのGPS装置をカズマの肩に貼りつけたのだ。
「立ち読みはご遠慮ください」
列車に乗り込みギフ駅前にやって来た。黄金の信長像にカズマは見とれていた。
「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」
リュウジが信長の名言をつぶやいた。
リュウジは青春時代を思い出した。
15歳のマユコと17歳のリュウジはお互いの家族も公認の恋人同士。だがある日、リュウジの部屋でマユコが裸でいたのをカズマに覗き見られたことから、2人が性行為をしていたことを知られ、勉学の妨げになると引き離される。リュウジは全裸になったときに『予言』を覚えた。
マユコが交通事故に遭う事を予言。6月6日の放課後の学校前にトラックが突っ込んでくる。マユコはその日休んで難を逃れた。
ブシュッ!血飛沫が噴き上がった。
ペデストリアンデッキから何者かがスナイパーライフルで狙撃した。リュウジの腕から血飛沫が上がった。全裸のリュウジは瞬間移動を使い危機を脱した。
シブヤでは、貧困層の若者のグループ『ピッグ』と、富裕層のグループ『ファルコン』が対立していた。
『ピッグ』のヤスダは施設帰りで、常にタフガイとして振る舞っていた。ゴトウ・アツシは両親を失い、兄2人と共に生活している。
ヤグチ・イサムは『ファルコン』のメンバーに殴られた時の傷が残っている。3人は風俗店に潜り込み、ウエスギ・ナツミと出会う。彼女は『ファルコン』の仲間だったが、ゴトウ達に興味を持つ。帰り道、ドウゲンザカの暗がり『ファルコン』のメンバーが現れて一触即発となるが、ナツミの仲裁で喧嘩にはならなかった。
「暴力はやめようよ!?」
「こんなブタどもに肩入れするとは?脳ミソイカれてんのか?」
その後、ヤグチは両親の喧嘩が嫌で家に帰らず、ゴトウと一緒にMcDonald🍔で過ごす。帰りが遅くなったゴトウは、長兄のエイキチダリーにきつく叱られたため家を飛び出し、ヤグチとゲーセンに行く。そこで2人は『ファルコン』に絡まれ、リンチにかけられたポニーボーイゴトウを助けようとしたヤグチが、『ファルコン』のメンバーのシノダ・オサムを刺殺してしまう。
UFOキャッチャーは返り血で真っ赤に染まった。
ヤスダのアドバイスでゴトウとヤグチは街から逃げ、ホンモクの廃墟に身を潜めた。2人はエロ本読んだりや麻雀をしながら日々をやり過ごす。ゴトウは、美しい朝焼けを見ながら、ナツミに会いたいと願った。
ある朝、ヤスダが廃墟を訪れ、3人で外出。その間に、廃墟に子ども達が来ていたが、廃墟が火事になってしまう。
ゴトウとヤグチは、取り残された子ども達を助けるため、ヤスダの制止を振り切って、燃える廃墟へ走る。ヤスダの協力もあって子ども達は救出されたが、ヤグチは重傷を負った。
『ピッグ』の不良少年が英雄になったというニュースは、全国に知れ渡る。『ファルコン』のマエダ・カズヤも戸惑いを覚え、仲間に聞かれないよう車の中にゴトウを誘い、腹を割って話す。一方、ヤグチの体には障害が残り、かつては自分の境遇を嘆き自殺したいと思っていたヤグチが、ゴトウに「死にたくない」と語る。
『ファルコン』の決闘を前にして、ゴトウはナツミと宵闇のマリンタワーで会う。
彼女は、ゴトウへの好意と、シノダを殺したヤグチを憎む気持ちで揺れ動いていた。
ゴトウたちはハーレーに跨り、ヤマシタフトウへと向かった。
両グループの決闘には、廃墟で負った怪我が完治していないヤスダも駆けつけ、激しい喧嘩の末『ピッグ』が勝つ。
しかし、ヤスダとゴトウがヤグチの病室に行くと、ヤグチはヤスダたちに「痛い思いをするのは俺だけで十分だ」と言い残して息を引き取る。
ヤグチの死に激しいショックを受けたヤスダは、日頃のようにタフな振る舞いもできず、ゴトウは悪い予感を抱く。そして、自暴自棄になったヤスダは、衝動的にセンター街で放火をしてしまい、警官に射殺される。
ゴトウはシブヤ駅近くのカウンセリング施設にやって来る。そこの診察室前でタカハタと知り合う。
「友人を2人も亡くしたんです、奴らに復讐がしたい」
「もしかしたらお役に立てることが出来るかも知れません」
《ボ〜っとしてんじゃないよ!》
イヤホンから聞こえるボスの声にゴトウは我に返った。全裸の男は腕や足は血飛沫を上げるが、心臓を撃たれたときはビクともしなかった。
「ターミネーターか?アイツ」
スコープの十字に裸じゃない男を入れて引き金を絞った。奴は頭をザクロみたいに爆ぜて死んだ。
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