第11話 蘇る戦士
レイコを始末したときにリュウジは『蘇生』を覚えた。カズマを生き返らせた。
『瞬間移動』『蘇生』が0になった。
「また殺しに行かないといけない」
リュウジはうんざりした。
フワ・ソノコは死なずに済んだ。頭が悪かったのが幸いした。
兄のカズマが亡くなってから約3ヶ月が経過した。ミツヤは、妻と悲しい離別をし、孤独な日々を送っていた。
アサクサはアズマ・アツヒコの殺人事件にまつわる噂で持ちきりである。アツヒコは農林水産大臣の次男で、クラブで行われるカード賭博が好きだった。クラブから帰宅した後、拳銃の弾で頭を撃ち抜かれて死んでいるのを家族に発見されたのである。遺体の様子から、カード賭博での勝敗計算をしていたところを撃たれたと推測される。しかし、鍵の掛かっていた室内からは拳銃が発見されず、窓は開いていたが侵入の痕跡が見つからない。狙撃であれば相当の達人だが、銃声は誰も聞いていなかった。その後の警察の捜査では動機も犯人の見当も付かないままである。ミツヤはかつてのカズマを模倣して事件の真相を推理してみるが、謎は解けない。
現場で全裸になってるのに解けなかった。
「魔法が使えなくなった?」
カズマが死んだからかも知れない。
殺人の起きたアツヒコの屋敷まで見物と調査に出かけたミツヤは、本を抱えた老人とぶつかり、その本を地面に落としてしまう。本を拾い上げてやり謝罪するミツヤを老人は罵り、姿を消した。
「わざとやったのか!?全く」
やがて、何の成果もなく宿へ引き上げたミツヤのもとへ、先ほどの老人が訪ねてくる。面会した老人はミツヤを罵った非礼を詫び、近所の本屋であると自己紹介する。
(どうして俺が『鈴蘭荘』に宿泊してることが分かったんだ?)
ミツヤは疑問に思った。
本屋に連れられてやってきた。歴史書ばかりだった。
そして、ミツヤの背後にある書棚には数冊分の空きがあるから、と手持ちの本を勧めてきた。書棚を振り返って隙間を確認し、再び老人に視線を戻したミツヤが見たのは、笑顔で立っている、死んだはずのカズマだった。ミツヤは仰天して気絶をしてしまう。
意識を取り戻したミツヤに、カズマは変装で劇的な演出をして驚かせてしまったことを詫びる。そして、自分がなぜ生きているのか、この3ヶ月の間どこで何をしていたのかを語りだす。
「リュウジ兄さんがいなかったらここにはいなかったな?」
「うん、全裸になると魔法を発揮できることは世間が知ることになった。俺は天国に行ったときに仙人にあった。食いもんじゃないものを食べれば推理や、魔法を取得できる」
「異色のスターならぬ、異食のスター」
カミナリモンにやって来たとき、フワ・ソノコがナイフで襲いかかってきた。
カズマは鼻くそを食べてバックドロップでソノコを倒した。
タカハタの手下から今後も命を狙われ続けると考えたカズマは、老人に戻った。
二人は夜の裏通りから空き家のひとつに辿り着く。そこはカズマの新しいアジトだ。
ミツヤが驚いたことに、アジトの部屋の窓には、カズマのシルエットが室内の明かりでくっきりと映し出されている。 その正体は蝋細工の半身像で、カズマが生きていることを知って命を狙う、タカハタの手下に対する囮なのだった。
二人が息を潜めていると、アジトに別の何者かが侵入してくる。その男は銃を組み立てると、アジトの窓に映るカズマのシルエット目掛けて音も無く発砲する。
同時にカズマとミツヤが男に襲い掛かり、取り押さえる。カズマが鳴らした防犯ベルの音に応えて駆けつけてきたのは、リュウジだった。
「3人揃うのは久しぶりだな?」
リュウジがニカッと笑った。
取り押さえられた男、イサカはポケットティッシュを食べるカズマを罵る。
「ヤギか?キサマは?」
カズマは、射撃の達人であるイサカの使用した武器は、無音で人を殺すことのできるサイレンサーだった。
駆けつけたアサクサ署のウキタ・ウコンはイサカをカズマ殺害未遂で逮捕しようとする。
カズマは「イサカがアズマ・アツヒコ殺害事件の犯人である」と話す。
イサカはトランプのイカサマで金を稼ぎ生活していて、そのイカサマをアツヒコに気付かれたのである。
アツヒコはイカサマを止めるようイサカに警告し、イサカと組んでいたときに勝った不当な儲けを清算しようと計算していたところを、サイレンサーで狙撃されたのだった。
「ギフのときも大活躍だったようだな?二人とも」
カズマは身震いした。
サイレンサー銃を奪取したリュウジはイサカの眉間に弾丸を見舞った。
『吹雪』を取得した。
ウキタに手柄を譲り、三兄弟は『鈴蘭荘』へ戻り祝杯を上げた。
「カズマ兄さんが生きててマジで嬉しいや」
ミツヤは酔いが回ったのか顔が真っ赤だ。
「日本猿みたいだな?」
カズマはゲラゲラ笑った。
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