第2話 25年前

 1994年、一馬は15歳だった。日本は、第三次世界大戦でアメリカに敗北して、日本語表記は許されなかった。

 だから、アオキ・カズマと名乗っていた。

「プレイステーション」(ソニー・コンピュータエンタテインメント)や「セガサターン」(セガ)の登場で、次世代ゲーム機戦争がゲーム雑誌のみならず一般のメディアでも取り上げられ注目を集めた。

 ウイダーinゼリー(森永製菓)やトッポ(ロッテ)、ドンタコス(湖池屋)、クイックル(花王)などがロングセラーとなる商品が続々と発売される。


 この年は以下の歌がブレイクした。


 1位 Mr.Children:「innocent world」

 2位 広瀬香美:「ロマンスの神様」

 3位 篠原涼子 with t.komuro:「恋しさと せつなさと 心強さと」

 4位 B'z:「Don't Leave Me」

 5位 中島みゆき:「空と君のあいだに/ファイト!」

 6位 松任谷由実:「Hello, my friend」

 7位 trf:「Survival dAnce 〜no no cry more〜」

 8位 大黒摩季:「あなただけ見つめてる」

 9位 trf:「BOY MEETS GIRL」

 10位 WANDS:「世界が終るまでは…」

 11位 藤井フミヤ:「TRUE LOVE」

 12位 福山雅治:「IT'S ONLY LOVE」

 13位 藤谷美和子・大内義昭:「愛が生まれた日」

 14位 CHAGE&ASKA:「HEART/NATURAL/On Your Mark」

 15位 Mr.Children:「CROSS ROAD」

 16位 尾崎豊:「OH MY LITTLE GIRL」

 17位 中山美穂:「ただ泣きたくなるの」

 18位 DEEN:「瞳そらさないで」

 19位 DREAMS COME TRUE:「WINTER SONG」

 20位 大黒摩季:「夏が来る」


 7月8日 - 日本人初の女性宇宙飛行士・ムカイ・チアキを乗せたスペースシャトルが打ち上げ(23日帰還)。

 軍人の父を亡くしたカズマは、仕事が見つかるまでという条件で弁護士のイガ夫妻に引き取られ、ハコダテに来た。8日、職探しをするカズマは、地下鉄ホームの端でナフタリンの臭いをオーバーから発散させた男が、カズマの背後にいた人物に驚き恐れたかのように顔を引きつらせて後ずさりし、線路上に転落して感電死するのを目撃した。

 男の死を確認した医者を名乗る黒色の服を着た男が立ち去る際、紙切れを落としていった。ナフタリンの臭いが染みついたその紙切れには『911△』と暗号のようなものが記されていた。

 

 カズマは翌朝、死んだ男(検視結果、ウエノ・エイキチという名前が判明する)のポケットから議員のオオトモ・カズオの持ち家であるクロスロードにあるアウル荘への紹介状が入っていたこと、その家の2階の1室で外国人と思われる若い美人の絞殺死体が発見されたこと、その家には「黒色の服を着た男」も見に来ていたことを新聞記事で知る。


「アウルってフクロウのことだよね?」

 リュウジが言った。 

「夜型人間って意味もあるけどな?」

 カズマは早寝早起きだが、リュウジは24時過ぎまでゲームで遊んでる。

 興味にかられたカズマは、暗号の手紙に記されていた△が、赤レンガ倉庫の三角屋根であることを知ると、事件の謎を解くためにガールフレンドのキミシマ・クミとのデートをすっぽかし、単身倉庫群に向かった。偶然にもそこにはミツヤもいた。


 ミツヤのボディーガード、ケヅカとコジマとの格闘戦に勝った。

「これからは俺に歯向かうな?」

 カズマはミツヤに言い聞かせた。

 カズマは、暗号の「9・11」が「9日11時」と考えた。

「ウエノは昨日の11時にここで誰かと待ち合わせていた?」

 問題は11時か?23時か?ってことだ。

 

 カズマとミツヤは、函館明治館って明治44年に建てられた郵便局を改装したショッピングモールにやって来た。  

 カズマの腕時計が午後1時になった。

「助けてくれ!追われている!」と叫びながら肩を刺された男が駐車場に走ってきた。 

 陽焼けした顔の頬に傷跡を走らせ、危険な香りのするその男は、カズマに介抱されたあと、今日のことは誰にも言わないようにと口止めして立ち去る。カズマはその男をひとまず除外して、監視の必要がある人物を3人に絞る。1人はミツヤ、ケヅカとコジマが残る2人だった。


 11日、カズマは諜報機関に興味を抱いてるリュウジから、戦争の直前にオオマチで起きたダイヤモンド盗難事件の話を聞く。鉱山王のサエキ・ショウタの娘、スズとその友人のセジマ・ソラが、中華会館近くでかなり大きなダイヤモンドの原石を見つけ、鑑定のために弥生坂近くの怪しい屋敷を訪れたところ、ちょうどその頃起きたダイヤモンド盗難事件の嫌疑がかけられ、スズは逮捕される。

 サエキが盗まれたダイヤに相当する金額を払ったため、ダイヤの行方が分からぬままスズは釈放され、軍隊に入りハワイで戦死する。

 そしてサエキは遺言状を残さずに心臓発作で死に、莫大な遺産が最も近い血縁者、すなわちリュウジに譲られたという。

 そう、リュウジはカズマの実の弟ではない。

 そのときカズマは、頬に傷跡のある男が青ざめた表情をしているのを見かけ、ミツヤから新しく雇ったボディーガードのタジマだと聞く。


 モトマチにあるカラオケでパーティーが開かれた晩、カズマは親しくなった、アメリカでアウトレットストアを経営してるチェリーにこれまでの経緯をすべて打ち明け、例の暗号の数字は「9日11時」ではなく「911」、すなわちグリーンアイランドにある『アクロポリス』ってホテルの最上階911号室で、チェリーの客室であるその部屋で何かが起こるというものであったことに思い至る。この911号室はガルボーイの名前で予約されていたもので、その名前はロシアの有名な美人ダンサーのイリーナ・セメノビッチの変名であった。ガルボーイとはロシア語で『水色』だ。


 チェリーがリュウジから聞いた話では、彼女は強力な国際犯罪組織の手先の1人で、組織の首謀は悪魔のようにずるがしこい人物で『中佐』と呼ばれているらしい。

 その話を聞いたカズマは、アウル荘で殺された若い美人の外国人がガルボーイで、そのため宿泊できなかったのだと思い至る。

 

 三兄弟は911号室にやって来た。

 通風孔から写真のフィルムが投げ入れられており、ミツヤは失くしたフィルムを給仕が届けに来たものだと思っていたが、調べてみるとそのフィルムの容器の中にはダイヤモンドの原石が入っていた。カズマは、それがリュウジの話に出ていた行方不明のダイヤモンドの一部だと思い至る。


 ミツヤは、「黒色の服を着た男」がタジマで、駅で死んだウエノがガルボーイにダイヤモンドを渡そうとしていた、それをタジマがダイヤを手に入れようとしてウエノから暗号の紙切れを手に入れ、そのあとガルボーイを殺し、ミツヤに働きかけてボディーガードとして船に乗り込んでハコダテを脱出しようとしていた最中、そこをコジマに刺されたのだと推理する。

 しかし、タジマに惹かれていたミツヤ(実はゲイ)は、「黒色の服を着た男」がタジマであることは認めるものの、殺人については無実を主張する。


 翌朝、カズマはリュウジから、死んだスズとソラが戦争で負傷し行方不明になっていることを聞く。さらに夜勤の給仕から、アオモリタウンからハコダテに向かう船旅の乗客からフィルムを預かったことを聞かされる。


 昭和63年に廃止されたはずの青函連絡船の八甲田丸で、カズマはケヅカにかまをかけ、彼がの事件があったときにアウル邸にいたことを知る。甲板でナイフバトルに発展!ケヅカが彼の首を絞めながら海に落とそうとしたところにリュウジとミツヤが駆けつけて、ケヅカを殴り倒して彼を救った。


 7月16日 - 青森県の三内丸山遺跡で大量の遺物出土。

 カズマはガールフレンドのキミシマ・クミとデートをすることになった。

「このまえはゴメンね?」

「風邪は治ったの?」

 チャチャ通りと呼ばれてる急な坂にあるカフェでコーヒーを飲んだ。『チャチャ』とはアイヌ語で『おじいさん』を指す。おじいさんみたく腰を曲げて歩くほど急な坂だ。

「うっ、うん……熱も下がったよ」

 クミはカズマが正義のヒーローであることを知らない。

「ねぇ、エッチしない?」

 カラオケボックスに入って♥な話を聞いた。クミは中1のときに初体験をしたらしい。

「同じクラスの子でね?向こうも初めてで、探りながらで……痛くなかったな」

 カズマは鼻血が出そうだった。

 結局、この日は童貞を卒業することは出来なかった。カズマはホンモノの戦場では強かったが、夜の戦場ではオクテだった。


 7月17日

 4年前の戦争で世界経済が崩壊した。日本は警察権力が独裁政権を持つようになっていた。マスコミや芸術にも厳しい規制が敷かれていた。

 クミも歌手を目指そうとしていたが、父親が戦争に参加しなかったことからオーディションに落選した。

 クミはエッチしたい欲求を必死に堪え、テレビを見ていた。

「こら、クミ!お行儀悪い」

 クミは夕食を食べていたが、よそ見してるからポテトサラダをテーブルに落とした。

「ママ、あんまり大きな声出さないで」

 クミはお笑い芸人、チョウソカベ・ツクネがプロデュースするバラエティ番組『スパルタ』が好きだった。

 ゲストが、腕立て伏せや腹筋を制限時間にこなさないとツクネから殴られたり蹴られたりする。

「こ〜ゆ〜のはよくないよ」

 母親のテルコがうんざりとした顔になる。

「この面白さを理解できないとは残念ね?」

 今夜は函館の巨大なコースを舞台に、俳優やアイドルが『泥棒』になり、ツクネ軍団のメンバーが演じる『警官』の攻撃を突破し、3時間の制限時間内にゴールできるかを競うゲームだ。ゴールはかつては緑の島と呼ばれていた『グリーンアイランド』だ。

 番組の途中、衝撃的なことが起きる。アイドルのトガワ・ナツミが👮に撃たれて死んだのだ。BB弾ではなく実弾が使われたのだ。

 

『お〜っと!トガワさんゲームオーバーです!』

 ツクネの声が響く。ツクネはヘリで上空から撮影している。

 ゲストは無事に脱出できれば無罪放免となり、莫大な賞金を手に入れることができるとされていた。


 正義感に溢れるリュウジは、下校中に二十間坂をパトロール中に暴動に出くわすが、食料を求めて暴動を起こした一般市民への同情から発砲命令を拒否したため、無実の罪を着せられ凶悪犯として強制労働所へ収容されてしまった。

『ブルーバード』って平成版白虎隊はときには犯人を射殺することもある。リュウジは『ブルーバード』の10号だった。メンバーは11人いる。

 施設で知り合った反政府組織のクロタニ・ダイゴやシラカミ・ロクロウらと結託して脱獄を果たしたリュウジは、ミツヤ(10歳)の通ってるオオマチ小学校に侵入するが、ミツヤは既に連行されており、お笑い芸人のニタニ・ヌレールと鉢合ってしまう。


 ツクネら『スパルタ』のスタッフ達は時の人となっているリュウジの卓越した身体能力に目をつけ、彼に番組出演のオファーをする。当初は断るリュウジだったが、リュウジが出演しない場合の代役としてミツヤとカズマが捕えられている事を聞かされ、2人の解放を条件に出演を承諾する。ところが蓋を開けるとその約束は果たされず、ミツヤ達もリュウジと一緒にゲームに参加させられてしまうのであった。

 

 カズマとミツヤはテレビの中継器を使って真相を報道しようと主張。ペリー提督来航記念碑の前でニタニと再会したカズマは、兄弟を失いながらも、彼らの意思を継ぎクロタニ&シラカミとの合流を目指す。

 そして次々と追跡してくる👮を銃で撃ち殺す。視聴者たちは徐々にカズマたちを応援するようになっていく。その中にはその後、カズマを愛し、命を失うことになるモモイヤエもいた。まだ、このときは9歳だった。

 コースを進むうちに、死んだと思われたリュウジとミツヤが生きていることを知った。

 彼らは防弾チョッキと血のりを使ってド派手な演技をしたのだった。

「ジャニーズにでも入ろうかな?」

 真面目な顔で言うカズマの顔を見て、ミツヤはゲラゲラ笑った。

「鏡を見てくれよ?」

 一方、リュウジとニタニはついにシロクロコンビと合流を果たす。

 ニタニはこの凄惨なゲームから逃げ出したかった。


 ツクネは予想外の展開に業を煮やし、リュウジたちを殲滅することに躍起になる。

「必ず殺せ!」

 ネービー・ノグチ、ハシバ・ヒデヨッシー、フナムシ・ヘースケの3人はツクネ軍団の精鋭だ。

 制限時間の午後9時まで残り2時間。

 

 リュウジ、ニタニ、シロクロコンビはハコダテ港近くにある緑色の施設にやって来た。

 そこでは極秘実験が行われていた。それは人間の血液を混合し、人造人間を作ることで、肉体的・知能的に優れた人間をつくろうというもの。トガワ・ナツミはその為に犠牲になった。

 実験施設に、ネービー・ノグチがやってきた。彼は錯乱しており、『青』を書くばかりである。そして、リュウジとニタニが少し外出したすきに、ネービーは殺されてしまった。リュウジは今回のテロの黒幕が『ブルーバード』であると気づく。脳細胞が活性化したのは、リュウジがシャワーを浴びているときだった。


 実験施設の『A』って部屋は酸素が薄く気圧が低いため防護服無しでは部屋の外に出られず、「ブルーバードとスパルタは敵対関係にあった」とハシバ・ヒデヨッシーは教えてくれた。シャワー中で無防備なリュウジをショットガンで襲ったが、リュウジは弾を全て避けた。リュウジはショットガンを奪い、素手でグシャリと捻り潰した。

「オマエなら冥王星人にも勝てるかもな?」

 ハシバ・ヒデヨッシーは『スパルタ』はスペースヘリコプターというものを保有していることを教えてくれた。

 リュウジは『冥王星を旅する』というコースを選択、ハシバ・ヒデヨッシーはフナムシ・ヘースケの注射によって眠りにつく。

 リュウジは突然わめきながら暴れだした。冥王星に行って戻れなくなったら?とパニックを起こしたのだ。精神安定剤と睡眠剤でリュウジは落ち着いた。

 制限時間まで残り1時間。


 タクシーでの帰宅途中、ニタニを含むグループに襲われるリュウジだったが、彼は身に覚えのない格闘術でその全員を殺害した。そのときリュウジは全裸だった。

 ニタニはリュウジのマヌケな姿に鼻で笑った。

「裸で何が悪い?」

 リュウジは開き直り、ニタニの両眼に人差し指と中指を突っ込み眼球を抉り出して殺した。

 ようやくたどり着いた自宅でも、ローリーカズマから攻撃を受ける。

「貴様、『スパルタ』に魂を売ったのか!?」

 カズマに取り押さえられたリュウジは「冥王星に行けるんだ、悪い話じゃねーだろ?」と告げる。混乱するリュウジのもとへ迫るフナムシとその部下たち。何とか彼らを振り切ったリュウジは、ミツヤからカバンを受け取る。カバンの中には金や偽造された身分証、そして特殊器具や変装道具も用意されていた。


 冥王星のヘリポートに再び現れたフナムシたちの追跡を振り切って、リュウジが出会ったのは、死んだはずのトガワ・ナツミだった

。過去に仲間を裏切ったと言うナツミはリュウジの話に耳を傾ける様子がない。さらに、父親を名乗る男が現れ、怪しんだリュウジが男を射殺すると、フナムシとその部下たちによって拉致されかけるが、そこへナツミが参上。フナムシ達を倒したリュウジとナツミは逃亡する。


 リュウジは反乱分子の首領であるチョウソカベ・ツクネと対面。

 ツクネは冥王星に棲む怪物を倒すと蘇生出来る魔法が手に入ると教えてくれた。


 しかし、スペースヘリの運転手フカガワの裏切りによって治安部隊が突入してきて、ツクネは殺され、リュウジは魔法製造会社社長ホルンのもとに連行される。ホルンは「魔法を覚えることが出来れば、オマエは不死身になれるし?スペースヘリなしでも地球に戻れる。しかし、条件がある。地球人を全滅させると誓え」とホルンは語った。

「怪物ってのはオマエだったのか?」

 リュウジはドラゴンやケルベロスを想像していたがホルンは人間だった。

 リュウジをポリグラフ検査させた。心臓や頭に装置をつけられた。リュウジはブサイクな顔なのでイジメにあっていた、地元の奴らを皆殺しにしてやりたいとすら思っていた。(不死身になれるし?復讐もできるのか?一石二鳥だな?クックックッ)

 ホルンに共感していたリュウジは装置を破壊して、ホルンが吐く紫色の魔法によって不死身になった。ナツミとともに銀河を飛空し、地球に戻った。冥王星の紫空の下でナツミとキスを交わしたことを、リュウジは生涯忘れることはないだろう。


 ハマムラ・リオ巡査部長たちツクバ警察署の精鋭は、ムトウグループにおける麻薬市場を牛耳るムトウ・リョウスケの摘発作戦を実行するが、作戦は失敗し複数の警官を殺害されムトウを取り逃がしてしまう。ホッカイドウへ逃亡したムトウは地元ギャング団との麻薬取引を始めようとするが、偶然職務質問を受けて逮捕されると、連絡を受けたつくば警察署からリオがムトウの身柄引渡しを受けにオタルを訪れる。


 ロシア寄りのオタル市長と、アメリカ寄りのツクバ市長国家間の対立関係などに起因するぎこちない空気の中ムトウの引渡しは完了。しかし護送を始めた矢先、地元ギャング団とムトウの部下たちが一行を襲撃してリオは昏倒、付き添っていたオタル署のセジマ・ユウキ刑事は射殺され、ムトウに再び逃亡されてしまう。

 リオはオタル署のツチヤ・アズサ警部補と組んでムトウの追跡を開始するが、無口で堅物のリオに対して、お調子者な性格のアズサは、捜査のやり方も考え方も正反対で、何かにつけて噛み合わない。それでも協力して捜査を続け、運河にあるムトウの麻薬取引の現場を突き止める。

「これでアンタともお別れね?とっととイバラギに帰りなよ?」

 辛辣なセリフをアズサは吐いた。

「イバラギじゃなくて、イバラキです」

「口だけは達者ね?」

 アズサの無線にハコダテでテロが発生したと連絡が入る。

 アズサはリオたちに麻薬取引を任せ、2人の部下を連れてハコダテに向かった。


 7月20日 - 村山首相、自衛隊合憲の所信表明。


 7月22日 - 全国かしまサミット共同宣言文発


 8月2日 - ビートたけしが東京都新宿区内において酒気帯び運転によりバイク事故を起こす。

 

 8月5日 - 福徳銀行5億円強奪事件。


 8月22日 - マツダが「カペラ」を発売(9月には「AZ-ワゴン」も発売)。


 8月24日 - 野茂英雄がこの試合の登板を最後に戦線離脱。その後退団しアメリカメジャーリーグに挑戦し2008年に引退したためこの試合が野茂にとって日本プロ野球での最後の登板試合となった。


 8月25日 - 村山首相、ベトナム訪問。


 8月28日 - 初の気象予報士国家試験が行われる。


 8月31日 - ジュリアナ東京閉店。


 オタルの探偵事務所にバイトとして勤務していたカズマは、弟のリュウジからある依頼を受ける。リュウジは、4年前シブヤで韓国の政治家、ホが暴漢たちに襲われていたところを助けたことが縁で、ホの死後に送られてきた回顧録を、300万の報酬と引き換えに出版社『プルート』に届けるよう依頼される。リュウジはこれから海外旅行に出るので、替わりにカズマにその役を果たしてもらいたいというのだ。


 ホは女王だった母親が子供のときに暗殺されている。また油田が発見されたとの噂も流れており、各国の財界から注目されている。さらにリュウジは、ホを襲った暴漢たちはマユズミ・ミツオの手下だと、伯爵が語っていたと話す。

 マユズミは有名な宝石泥棒で、警視庁に軽い罪で逮捕され数年間刑務所に入っていたが、最近出所したらしい。


 報酬のうち50万の分け前をもらう条件で依頼を引き受けたカズマは、すぐにオタルに発とうとするが、リュウジはさらにもう1つ、ムライ・メイという名前の女性のスキャンダル絡みの手紙を本人に返すよう依頼する。シブヤにいた頃に助けたラッパーが持っていたもので、死に際に渡されたものだという。

 ラッパーは心臓発作で死んだらしいが、カズマはリュウジが殺したんじゃ?と疑った。


 そうしてモモセの名前で数年ぶりにシブヤの土を踏んだカズマは、ドウゲンザカのホテルで次々と怪しげな客の来訪を受ける。

 1人目は韓国の王制支持派のヤン。王子のユンが即位する計画が進む中、政治的に重大なスキャンダルが記されていると思われるホの回顧録の出版は、その計画に支障を来たす恐れが多分にある。そのためヤンは回顧録を譲って欲しいと訴えるが、カズマは一度引き受けた仕事は最後までやり通す義務があるという理由でその申し出を断る。 

 次に訪れたのが王制反対派のヨン党員で、ピストルで脅迫して回顧録を奪おうとしたが、カズマに撃退される。

 最後に深夜、彼の部屋に忍び込んできたホテルの給仕のライと格闘の末、取り逃がしてしまい、回顧録は無事だったがムライ夫人の手紙を奪われてしまった。


 翌日、ムライ夫人の下に手紙を持って恐喝者が訪れる。身に覚えのないムライ夫人はその応対を楽しみ、いったんは小金を渡して帰らせ、翌日もう一度来るように言い渡す。

 恐喝者と入れ替わりに、ムライ夫人の従兄で外務省高官のリュウ・ルイが彼女を訪れる。石油の利権獲得のため、ユン擁立を支持する韓国政府にとっても、ホの回顧録に記されているかも知れない政治的スキャンダルは計画を頓挫しかねないものだった。中でもとくにリュウが警戒するのは、『飛竜館』でかつて起きた「ある盗難事件」だった。『飛竜館』はヨヨギにある高官専用の旅館だ。

 リュウは、かつて韓国大使館に勤務していた亡き夫とともに同国に滞在経験のあるムライ夫人に、ホの回顧録を持ってモモセを飛竜館でもてなすよう依頼する。


 一方、『プルート』から来たレンジョウ・ロクロウに回顧録を渡したカズマは、その翌日、ムライ夫人を訪ねたところ、恐喝者が何者かに拳銃で射殺されていた。その恐喝者こそ、彼から手紙を奪ったライであった。彼の上着には『飛竜館 木曜日11時45分』という紙切れが残されていた。ムライ夫人を何らかの理由で飛竜館に行かせたくない者の仕業と考えたカズマは、彼女を予定通りに飛竜館に向かわせる。その間に死体と拳銃を始末して、自分も飛竜館を訪れたところ、まさに11時45分、館の中から銃声が聞こえた。


 翌朝、飛竜館で、滞在客であるワクイ・ガクの射殺体が発見される。韓国から到着したギにリュウ・ルイは、ホは偽名で、その正体はユンだと告げる。

 ビジネスホテルに宿泊していたカズマは、嫌疑をかけられていることを察知し、自ら飛竜館に乗り込み、モモセの代行で回顧録を届けに飛竜館に来た事情を説明し、疑いを晴らす。ギがカズマにユンの死体を見せたところ、それは回顧録を渡した出版社のレンジョウを名乗る人物だった。

 ギの正体はミツヤだった。プールの更衣室で全裸になったときギに憑依した。ギは韓国の警察官だ。

 

 9月4日 - 関西国際空港開港。


 ミツヤはセンダイにある旅館にいた。

『スパルタ』に参加していた俳優のグンジ・ゲンタが亡くなった。グンジは大変裕福で、映画監督ゴウラ・ザクロの最新映画『太陽に歌え!』の主演も話題になっていた。検死をおこなったジンボ・ズイサン医師は睡眠薬の過剰摂取と判断したが、現場に居合わせたミツヤは早速あれこれと聞き出した上、グンジの死は自殺だと主張する。外出したジンボは、行き会ったゴウラから、相談したいことがあると言って夕食に誘われた。

 屋敷を訪ねたジンボはゴウラから悩みを打ち明けられた。グンジから、「1年前に妻を毒殺した」ことを告白されたというのである。しかも、グンジはそのことで何者かから恐喝を受け続けていたという。そこにグンジからの手紙が届き、ゴウラが読み始めたところ、それは恐喝者の名前を告げようとする手紙だった。ゴウラは後で1人で読むと言って「わたし」に帰宅を促す。その夜ゴウラは刺殺され、グンジの手紙は消えた。


 グンジの遺産を受け継ぐヒデカズが行方不明となっており、警察は彼を有力な容疑者とする。ゴウラの姪サトミは、少年探偵として名高いミツヤに助けを求めた。ジンボは隣に泊まってるの奇妙な少年が探偵であることを知る。ミツヤは依頼を引き受け、ジンボを助手役に捜査を開始した。

 ヒデカズの他に、事件当日、村で目撃された不審な男がいることが分かり、容疑者となる。ジンボの部屋に来たミツヤに、この事件についての書きかけの手記を読ませたところ、ミツヤはその手記に感心する。執事のマルヤは以前の主人を恐喝した前科のある男だったが、殺人については否定する。事件当日に目撃された不審な男は、家政婦のアカザワ・ヨシエの息子だった。その息子が屋敷を訪れた時間は、グンジの死亡推定時刻とは食い違っている。サトミは、事件当日おじのグンジの部屋から現金を盗み、それを隠すためにうそをついていたと告白する。そのため、グンジの死亡推定時刻が当初思われていたよりも早まる。


 ミツヤは関係者を食堂に集める。素っ裸の彼に皆は目をひん剥いている。ミツヤはジンボ医師がヒデカズを精神病院に匿っていたことを皆に告げ、『ジンボ医師の記録には書いていないこともある』と指摘する。ヒデカズは小間使いのナガシノ・ヒサコと密かに結婚していた。

 それを知って激怒したグンジが殺されたため、疑われることを恐れたヒデカズは、「わたし」の勧めで身を隠していたのだ。ミツヤは「明日になれば真相を警察に話します」と宣言する。

 その後、ジンボ医師と2人きりになり、真相を話す。グンジは、亡くなった日にボイスレコーダーに声を録音していた。犯人がその声を再生したため、その声を聞いてグンジが生きて話していると思ったマルヤの証言から死亡推定時刻が遅れることになったのだ。「グンジの死亡推定時刻にそばにいて、ボイスレコーダーを持ち運びできるかばんを持っていた人物が犯人で、それはジンボ医師である」とミツヤは話す。

「完敗だ。私は腹腔鏡手術である少女を死なせてしまった、その父親がグンジだった。ゴウラは犯罪組織の1人で、私の病院に盗聴器を仕掛け、『殺しちまった、医者になんかなるんじゃなかった』というヒトリゴトを聞かれ、脅された」

「悪いことはするもんじゃありませんよ、もんじゃ焼きが食べたいな〜」

 ミツヤのお腹がグ〜と鳴った。

 

 9月8日 - TBS系『水戸黄門』の初代水戸光圀役で知られた俳優の東野英治郎が心不全のため死去。


 

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