第4話 いわくつきの指輪

 2009・1・18

 世界最初の温室効果ガス観測技術衛星『いぶき』など人工衛星計8基搭載したH-IIAロケット15号機、種子島宇宙センターから打ち上げ成功。

 医者になった、ミツヤは日本軍の軍医としてロシアの戦場に赴くが、センダイに送還された。為す事もなく過ごしていると、かつて助手をしていた男から兄のリュウジが盲腸になったと聞き、アキホ温泉街で共同生活を開始する。盲腸はミツヤのお陰もありすぐによくなった。

 ミツヤが負傷してロシアから帰ってきたことや、見知らぬ男の前歴を言い当てたリュウジの観察力と推理力は、ミツヤを驚かせる。


 共同生活を始めて間もなく、リュウジの元にミヤギ県警の刑事課に勤務する、兄のカズマから殺人事件が発生したとのメールが届き、リュウジはミツヤを連れて現場に向かう。カズマ警部補とセンダイ署のミコガミ刑事課長は難事件にお手上げの様子である。殺されていたのは立派な服装の中年男で、アキハバラ・イチロウの名刺を持っており、壁には復讐と血で書かれた文字があって、女の結婚指輪が落ちていた。


 カズマはスーツやワイシャツ、スラックスを脱ぎ捨て全裸になった。

「毛がモジャモジャしてるな?乳輪がでかくない?」

 リュウジは言った。

 綿密な現場検証をして、被害者が毒殺されたことや犯人の人相・特徴を推理し、第1発見者のウナヅキ・エビゾウ巡査に事情聴取をしたりと、次々に捜査を進めた上、ブログに結婚指輪の拾得記事を出す。指輪を使って犯人をおびき出そうというのだ。予想通り指輪の受取人が来るが、カズマが推理した赤ら顔の大男ではなく、老婆であった。しかもその老婆を尾行したカズマは朝市の混雑のせいもあり、見事に巻かれてしまう。新鮮な魚介類や野菜が揃ってる。朝市といっても夕方まで営業してる。

「らっしゃ〜い!」

 朝焼けの下、威勢のいい声が響き渡っている。


 一方ミコガミは、ついに犯人を逮捕したと得意満面であった。彼が捕らえたのは、アキハバラが秘書のオダワラ・カズコと共に下宿していた家の女主人の息子である海上保安官だった。

 奴のアジトはクリネックススタジアムの近くにあった。

 事件前日、アキハバラがそこを引き払う際にその家の娘を無理やり連れ出そうとし、兄であった海上保安官に叩き出された事実があったのだ。

 それが犯行の動機だとミコガミはカズマに言うが、続いてやって来たリュウジが、秘書のカズコが宿泊先のメトロポリタンセンダイで刺殺死体で発見されたと伝える。

 リュウジは派遣社員をしていたが、密かに捜査に参加していた。


 カズマは、全裸になった上、覆面パトカーの助手席に乗り込む。運転するのはミコガミだ。リュウジは後部席でアンパンをかじっている。 

 アンパンマンミュージアム近くにあるアパートにやって来た。素っ裸になったリュウジは堅牢なドアを蹴破った。

「アチョー!」

 しばらくすると、顎髭がやたら長い男が入って来た。カズマはそいつにあっという間に手錠をかけ、目を輝かせてこう叫んだ。「諸君! アキハバラおよびカズコ殺害の犯人、キサラヅ・クニオを紹介しましょう!」


 第三次世界大戦直後のナトリ川。

 ケアゲ・コウタと孤児のサナエは迷って死に掛けたところを、シライシ・スイレンに率いられた移動中の傭兵に救われる。彼らは海上に基地を建設し、ケアゲは工事の仕事で一生懸命働き、やがて屈指の富豪になった。

 また彼はサナエを養女にして実の娘のようにかわいがった。成長したサナエは、並ぶ者の無い美しい女性となったのである。


 ある日サナエは、旅人のキサラヅと出会い、彼の実直さと強さに引かれた。キサラヅも彼女に好意を持った。キサラヅは名家の次男坊だったが、兄と折り合いが合わなかった。ケアゲは2人の結婚を認めた。ところが、一時キサラヅが町を去った時、シライシは、サナエにアキハバラとの結婚を命令した。

 アキハバラ、そしてオダワラ・カズコはシライシの忠実な腹心だ。

 指導者に背けば命は無い。サナエは町からの脱走を決意し、キサラヅを呼び戻す。彼に導かれ、センダイ空港にやって来る。  

 ここまで来れば安心と、つい気を抜いたキサラヅの裏をかくようにアキハバラとカズコの一隊が襲い、麻酔銃でサナエを眠らせ奪って去った。

 彼女はアキハバラと結婚させられるが、意に沿わぬ結婚に程なく病死、葬儀の場に飛び込んだキサラヅは密かにサナエの指輪を奪った。


 以後、アキハバラとカズコは執拗に命を狙われる。彼らはセンダイを離れ、フクシマを経由しトチギに入りキサラヅの追跡から逃れる。

 しかし、キサラヅも超人的な執念で彼らを追った。年月がたち、彼らはセンダイに戻って来る。そこでついに件の殺人事件に至ったのであった。  

 下宿を追い出されたアキハバラはタクシーを拾う。このタクシーこそ、キサラヅが2人を追うために用意していたものだった。

 キサラヅはアキハバラを空き家に連れ込み、毒薬の決闘を挑む。彼は自分の復讐を神の手にゆだねたのだ。

 毒入りとそうでない丸薬を用意し、両者で同時に飲み込み、毒入りに当った方が死ぬという方法である。そしてキサラヅが勝った。結婚指輪はその時落としたのである。

 カズコにも同じ方法を挑んだが、彼女はいきなり襲いかかって来たため、やむなく刺殺したのだった。


 取り押さえられたキサラヅはセンダイ署に連行され、起訴を待たずして獄中で舌を噛み切って自死した。

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