第23話 5人殺す
2005年1月1日
殺人事件の公訴時効が15年から25年に延長される(対象は2005年1月1日以降に発生の事件に限る)。ただし、約5年後の2010年4月27日には同罪に対する公訴時効が、過去の事件(その時点で公訴時効が成立していない事件に限る)にも遡って廃止適用されている。
競馬法改正。同日以降に行われるレースにおいて、成人学生の勝馬投票券購入が可能となる。
バイクの運転に関しては非常に優秀な技術を持つ対テロ部隊のアズサは、パトロール中、偶然、麻薬組織の密会を目撃した同僚のリオと共に、組織の車による襲撃を受ける。
親友だったリオは殺され、自分も片膝に重傷を負い、後遺症でバイクに乗れなくなったため、対テロ部隊から資料係に転属になったアズサだったが、以前からアズサの運転技術に目をつけ、事件の直前にアプローチしてきたミヤギ県警のオオワダ警視は、なおも食い下がって、ハイテク戦闘バイク『グリフォン』の所へアズサを案内する。
ミツヤの魔法で膝を回復させるので、『グリフォン』のライダーになって欲しいというのである。
ミツヤはかつて、アズサとリオが犯人だと思い込んだ少年だ。
「あのガキもいい年齢だろう?」
アズサはすぐに息が切れるようになった。「潮時なのかな?」と小声で言った。
ミツヤの魔法とトレーニングを受け、オオワダと終身雇用契約を結んだアズサは、表の顔はセンダイ署の資料係、実は『グリフィン』を操る極秘のトラブルシューターとして、管制オペレーターを務めるワタリと組み、今日も犯罪現場へ急行する。
「駅伝は見ましたか?」
ワタリは元ランナーだ。
「興味ない」
第81回ハコネ駅伝はコマザワ大学が総合優勝し、平成初の4連覇達成。
1月7日
ヒロシマ県フクヤマ市の老人ホームで7人が相次いでノロウイルス(感染性胃腸炎)により死亡していたことが発覚。
トウホク各地で強盗殺人を繰り広げたアベ兄弟は、警察の追及を振り切るべく、センダイを目指して逃亡を続けていた。同じ頃、教師を辞めて放浪の旅をしていたカザマ・サブロウとその一家は、たまたま立ち寄った民宿でアベ兄弟に出会い、脅されて逃亡に加担する事になる。カザマ一家を隠れ蓑に利用してセンダイを通過した一行は、アベ兄弟が現地組織の代理人と落ち合う予定のクラブ『エクスカリバー』で一夜を過ごすことになる。しかし、そこは妖怪の巣食う巣窟で、日暮れと共に本性を現した妖怪達と大立回りを演じる事になる。
特に入道坊主には苦戦を強いられた。
見上げるほどに大きくなってゆく妖怪だ。最初は190Cmだったが、アベ兄弟が近づいて行くと、次第に背が伸びて、約2メートルもの大男になる。「見ていたぞ」と声をかけることで消し去ることができるが、逆に相手から声をかけられると死んでしまうという。
「愚か者め」
声をかけられたアベ弟は死んだ。
「頭の悪そうなガキだ」
入道はラッパースタイルのガキに声をかけた。ガキは死んだ。
ドアが開いた。
「見ていたぞ」
所定の時間に現れた代理人、リュウジによって『エクスカリバー』は爆炎に包まれた。リュウジは入道を倒す呪文が『見ていたぞ』であることを全裸になって知った。
サブロウの息子、タツヤは首無し死体に姿を変えた。アベブラザーズの弟、ナツオも血まみれになって死んでいる。
「いろいろと悪いことをしてきたようだな?」
全裸になったリュウジは言った。
残り3人
1月29日 - 中部国際空港の開港を数週間後に控え、名鉄空港線が開通。空港アクセス車両となる2000系・2200系もこの日から就役。
ハセベ・マミは建築家として活躍しているキャリアウーマン。彼女は医療事務の夫、ヤスシと離婚してからは、女手一つで5歳の息子ライヤを育てていた。
一方、フジタ係長も、妻と離婚しており、5歳の娘、ワコを数日預かることになっていた。そんなマミとフジタは、二人とも子供を課外授業に送る時間に遅れてしまい、急いでタクシーを捕まえる。
だが、そのタクシーに相乗りすることになった二人は反目し合い、相手への皮肉を言い合うのだった。そんな最悪の出会いをした二人だったが、その後互いに惹かれ合っていく。
2月1日 - ミヤケ島の避難指示が15時に解除され、4年5ヶ月ぶりに帰島を果たす。故郷にフジタは久々に帰った。
ロッカク村から解体される予定の核弾頭10発が盗み出され、そのうちの1発が爆発した。核爆発を確認した日本は、イガラシ・キョウタら専門家を招集、統合参謀本部のシバタ・チュウヤはニホンマツで輸送に使ったトラックの足取りを掴む。目的地はコンピュータに記載された謎の記号『165α』。
その頃、モスクワでは外交官のミコガミが国連に派遣されることが決定された。一方、監視衛星でトラックを捉えたシバタは核弾頭8発の回収に成功する。残りの1発はミコガミの手に渡り、外交官の荷物として無審査でセンダイに持ち込まれた。
犯行後に公表されるはずのビデオを観たイガラシは、ミコガミの言葉や背景から記号『165α』が国連ビルのあるチヨダ1-65丁目のことであると断定し、首相から与えられた権限により、トウキョウ・センダイを厳戒態勢に指定、2つの大都市を舞台に「核爆弾を背負った暴走族を探す」と呼ばれる大捕り物を行うことに。
放射線探知機を便りにその行方を追うシバタとイガラシは、ついにミコガミを発見する。
2月12日
自衛隊、イラクへ第五派遣する。
凄腕の泥棒で詐欺師でもあるミツヤは、窃盗罪で4年間服役していたケセンヌマの刑務所から仮出所した。仮釈中の規則を無視して、センダイに住む仲間のニシマツ・ヒロヤに会い、服役中に企てていた新しい盗みの計画を打ち明ける。それはトウホクの3大カジノ『メデューサ』・『ブラック』・『リバース』の金が集まる地下巨大金庫の現金強奪計画だった。
カジノ委員会の規制により、カジノには客の掛け金を賄う現金を保有する必要があったことから、神経衰弱大会、当日には少なくとも1億以上の巨額の現金が集まることを知り、カジノセキュリティに詳しいトウホクの大富豪のミナトヤ・イサム、ほかニホンから8人の犯罪スペシャリストが集結。ミサイル基地並の強固なセキュリティシステムに挑む。しかしミツヤには金のほかに、もうひとつ盗もうとしている物があった。
2月16日
キョウト議定書発効。
センダイに住むフジタ・ワコは、フルモト興業の下ネタ漫才コンビ『リョウ&イクラ』が大好き。『リョウ&イクラ』の映画を見たワコらは汚い言葉に染まっていく。そのことに怒ったPTAはフルモト興業に猛抗議。抗議運動は全国に広がる。リョウとイクラはミヤギ県警に捕らえられた。
「いかんなぁ、君たち」
カズマは『リョウ&イクラ』個人的には好きだった。特に『イク!イク!イクラァ!』のネタは笑い転げてた。だが、世の中にはやっていいことと悪いことがある。
ワコたちはレジスタンスを結成し、『リョウ&イクラ』の救出を計画する。
2月17日
中部国際空港(セントレア)がアイチ県トコナメ市沖合に開港。
厳戒態勢のセンダイ。アズサとワタリは捕虜から得た謎の地図をカザマ・サブロウの隠した金塊の在り処だという事を解読する。彼らはミヤギ県警の指揮下を離れ、無断でそれを強奪することを計画し、実行する。
「ねぇ、もし見つけたら結婚しよう?」
アズサは恐る恐るワタリに尋ねた。
「オッケー」
2月18日
ミツヤがカズマが住んでる警察寮に行くと、寮母のスズキが案内してくれる。
カズマはセンダイ署の特別捜査課に属していた。他のセクションが投げ出した事件を捜査するのが仕事だ。カズマはマーメイドの宝石の盗難事件に取りかかっていた。カズマの蝋人形が部屋に置かれていた。「何者かに銃で狙われている」
カズマは全裸になったこともあり、マーメイドの宝石を盗んだ一味が誰か、すでにわかっているが、肝心の宝石のありかが未だ不明であった。インフルエンザになったせいだ。
そこへ、その一味の首領であるツチヤ・ヌマオがカズマの部屋を訪れる。ヌマオはアズサの父親だ。
カズマはヌマオに、宝石を渡せば盗難事件のことは見逃すと持ちかけ、別室でテレビを見ているからその間に手下のフジヌマ・ムサシとどうするか決めるようにいう。
カズマは寝室に入り、レンタルビデオ屋から借りた『太陽にほえろ!』のDVDを見た。
ジーパン刑事が麻薬中毒者に撃たれ血まみれになる。『なんじゃこりゃあ!』
ヌマオとフジヌマは、カズマに全くでたらめな宝石のありかを言って、だまそうと考えるが、ミツヤが『回復』の魔術を使ったこともあり、アオバ城の地下にあるって嘘を見破り、ヌマオの家にあるテディベアの腹の中に縫い込まれていた。
「俺を騙そうなんて100年はえー」
2月26日
H-IIAロケット7号機が無事に打ち上げられ、運輸多目的衛星新1号(3月8日、愛称「ひまわり6号」と命名)が軌道に投入される。
ケセンヌマに、一艘の漁船『カンジンマル』が到着した。不漁に悩みながらも船長のウシハラは、戻ったばかりの仲間達を説き伏せて再び漁に出る。彼らは遠方の漁場へ足を伸ばし、期待通りの大収穫を収めたが、船内の製氷機が故障するというアクシデントが発生する。さらにこの時、嵐に加えてハリケーンも接近しているという報道を聞いて、漁を諦め急ぎ帰路に就いた彼らだが、『カンジンマル』は大嵐の中心に遭遇する。気象図で天候を予測したクニヤはウシハラに警告を与えたが、遅かった。ウシハラらクルーは、必死に大嵐と戦い、一度は最悪の状況から脱したかに見えた。しかし容赦のない大波が再び迫り、船を飲み込んでしまう。
ウシハラ、そしてクニヤが死んだ。
残り1人
2月28日
スペシャルオリンピックスナガノ大会開幕。
寝台特急「あさかぜ」「さくら」、特急「いそかぜ」がこの日で最後の運行。
ミツヤの遊び場であるゲーセンを、議員のユザワ・ルイが訪れた。
屋敷に住み込みの家庭教師、ウダガワ・エリコ嬢が、ユザワの妻、ユザワ・ケイコを殺害したとされる疑いを、晴らして欲しいという依頼である。
新聞などによれば、ユザワ邸の屋敷付近にある橋の上で、頭を撃ち抜かれて死んでいるケイコが発見された。現場に凶器の銃はなく、屋敷のエリコの衣装棚から、口径が一致し1発使用されている銃が出てきた。ケイコはエリコからの手紙を持っていて、その内容は橋での面会を約束したものだった。
ケイコは容色に衰えを見せていた妻にはつらく当たり、一方で若く魅力的なエリコに関心を示していたらしい。ケイコが死ねばエリコが後妻になると考えられ、エリコにはアリバイもないため逮捕されたのである。
ユザワはミツヤに、エリコの無実を証明すれば金も名誉も思いのままだ、と傲慢な態度で話を始める。しかしミツヤは興味を示さず冷ややかに対応し、エリコとは雇用関係にあるだけだと主張するユザワに、真実を話していないと指摘する。ユザワは激怒して立ち去るが、やがて頭を冷やし戻ってくると態度を改め、全てを語る。
ユザワによれば、妻への愛情が冷めてしまい、つらく当たったのは事実である。しかし彼女のユザワへの愛は、どんな仕打ちをしても変わることがなかった。そこへエリコが家庭教師としてやってきて、ユザワはすっかりほれ込んでしまい、自分の気持ちを打ち明ける。
驚いたエリコは屋敷を去ろうとするが、ユザワに対し強い影響力を持っていることを自覚して、考えを変える。影響力を行使し、ユザワの膨大な資産を社会奉仕の方向へ使わせることで、世の中へ貢献できると考えたのである。
エリコはユザワが二度と言い寄らないことを条件に、屋敷に残ったのだった。 ユザワは、それを知ったケイコが嫉妬と憎しみの余り銃でエリコを脅し、もみ合いの中で銃が暴発したのではないかと推測を述べる。
ユザワ邸を訪れたミツヤとカズマは、凶器の銃は屋敷にあった二丁セットのもので、その片方が行方不明になっていることを知る。現場の橋は、池に架かった石造りの橋だった。調査を始めたカズマは、石の欄干に新しい欠けた傷があることに気づく。傷は死体からやや離れた場所にあり、何が原因で出来たのか分からない。続いて二人は独房のエリコと面会し、事の次第を聞く。それによれば、彼女はエリコからの手紙で橋へ呼び出されたが、ケイコが口を極めてエリコを罵倒したため、あまりにも激しい憎悪に恐慌状態になってその場から逃げ出し、自室に閉じこもっていたというのである。そして話が欄干に付いた傷の件になったとき、カズマは突然何かに閃いた様子を見せる。
橋へと戻ったカズマは、まず自分の銃と重い大きな石とを丈夫な紐で結びつける。
続いてカズマは紐で結びつけた石を橋の欄干の外、池の水面の上にぶらさげ、自らは銃を持って遺体の発見場所に立つ。そして紐で結ばれた銃を頭の位置まで持ち上げ、手を離す。すると石はそのまま水中へ沈み、紐に引っ張られた銃は欄干に鋭い音をたてて激突した後、欄干を乗り越えて池の中に没した。
銃は現場から消え、同時に欄干の傷は2ヵ所に増えている。カズマは事件の完全な再現に成功したのだった。池を浚えばカズマの銃と石以外にもう一組、二丁セットの銃の一つが重り付きで見つかるはずであるとカズマは締めくくった。
ケイコは愛する夫と大切な子供達を奪われた怒りと嫉妬から、殺人に見せかけて命を絶つこと、その罪を憎いエリコに着せることを考えた。巧妙な手紙を書きエリコから呼び出されたように偽装し、二丁セットの銃の片方をエリコの衣装棚に隠して証拠とする。
そして橋でエリコを思い切り罵って彼女が逃げ去った後、仕掛けをした銃で自らの頭を撃ち抜き自殺を遂げたのだった。この事件は殺人ではなく、変わらぬ愛を抱く一人の女性の悲しい復讐劇だったのである。
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