第12話 鬼畜

カズマ 

リュウジ 

ミツヤ 

ムトウ 麻薬グループ

ツチヤ・アズサ オタル署 

ハマムラ・リオ ツクバ署 

ミコガミ・シンザブロウ センダイ署刑事課長 

オオワダ センダイ署部長刑事 

フジタ センダイ署 係長

タキ・リュウマ センダイ署刑事

ヤマナカ 私立探偵

サイトウ・タカヒロ 妻子殺害犯

   

 11月1日

 都営地下鉄の車内や駅のホームでAMラジオの聴取が可能となる。


 11月3日

 センダイ湾でビニール袋に入れられ重しがつけられた女性の遺体が発見され、続いて幼児の遺体が2体発見された。

 センダイ署刑事課の部長刑事のオオワダと、係長のフジタは吐き気と戦っていた。

 

 その後、遺体の身元はツクバ市に住む、サイトウ・トモコ(31)とその長女、サイトウ・チアキ(2)と長男、サイトウ・ノリトシ(1)と確認された。  

「夫であり父親であるオリハラ病院の医師、サイトウ・タカヒロ(29)から捜索願が出されていた。


 11月6日   

 ナリタブライアンが菊花賞を勝ち、シンボリルドルフ以来10年ぶり、日本競馬史上5頭目の三冠馬に。ミコガミはボロ負けしたことに腹を立てていた。


 タカヒロから事情を聞くにつれ、タカヒロの右の手の甲に小さな傷があることをオオワダが見つけた。タカヒロは飼い犬に噛まれた傷と主張したが、捜査を続けていくにつれて、夫婦間のトラブルがあったことが判明した。


 11月25日

 タカヒロは殺人及び死体遺棄罪で逮捕される。タカヒロはシモダテの農家の次男として生まれ、学業成績は常に優秀であった。

 アサヒ大学医学専門学群在籍時代から妻と交際しており卒業後に結婚。

 当時年収は1000万円を超えていたが愛人もおり投資用のマンションを購入するなど収入以上の支出をしていたため借金をしていた。

 離婚歴があったトモコは2度目の結婚であり、タカヒロの金策を助けるために昼は研究所の事務員、夜はパブのバイトで働いていた。


 タカヒロの自供によると、10月29日午前5時、愛人問題等でかねてから夫婦仲が悪くなっていたトモコと口論になった。トモコは包丁とロープを持ち出し「いっそのこと私を殺せばいい」と口走り、自分の首にロープを巻きつけソファーから飛び降りて見せたり、病院長のオリハラに愛人のことを訴えると言い出したためロープで首を絞め、両手で鼻と口を塞いで窒息死させた。 

 子供2人も父が殺人者となり残されることを不憫に思い殺害した。その日はそのまま病院に出勤し、夕方自宅に帰ってから3人の遺体を自家用車のトランクに入れて自宅を出発。途中ストリップやソープランドに立ち寄り、で遺体を海に投げ込んだ。

「ムショに入ったら女を抱くことも出来ないからねぇ〜」

「鬼畜だな?アンタ」

 オオワダは苦笑した。

 また、遺棄した日の翌日から、愛人である勤務先の看護婦との北海道旅行も予約していた。

 取調室のくもりガラスが夕陽でオレンジ色ににじんでいる。

 

 オオワダはある謎に困惑していた。

 遺体が収容されたビニール袋をひもで結ぶ際の結び目の内、3つの内1つが俵結びになっていた。俵結びは特殊な結び方で米を俵にするときの昔の農家の手法で、当時は50歳以上の農家くらいしか知らないといわれていた。実況見分をした際に夫が梱包を再現した際の結び目は3つとも縦結びであり俵結びではなかった。

 そのため死体遺棄に関しては夫以外に共犯者がいる可能性がある。

 容疑者① 愛人 イノダ・マヨ

 容疑者② オリハラ院長

 容疑者③ ナース アヤツジ・アスカ

 容疑者④ サヤマ・メグミ

 

 殺害された長男のノリトシの胃からチョコレートが検出されている。チョコレートは消化しやすいため、およそ1時間で消化されて胃から検出されなくなる。

 タカヒロが供述した犯行日前日の10月28日に被害者の家を訪ねていた妻の知人女性、サヤマ・メグミは妻の長男が午後7時30分に食べるのを目撃しており、午後8時に自分が家を出る際にその後で殺人を犯すことになるタカヒロが帰宅していたと供述している。

 一方で夫の供述によると、10月29日午後6時から午後8時の間に寝室で寝ていたノリトシを殺害していたと供述しているため、タカヒロが供述している犯行時間が実際の犯行時間と異なる可能性がある。単に犯行前にまた食べた可能性もある。


「ところでセガサターン買った?」

 同級生のキムラ・ノリアキがリュウジに尋ねてきた。22日に発売されたばかりだ。

「ウチ、貧乏だからさ?」

 キムラが腹を抱えて笑っている。

「笑うんじゃねーよ」 

 

 オタルにある探偵事務所のソファで、カズマはアンパンを食べていた。

 所長のヤマナカ・ケントは任務中に足をケガしてしまい、カズマに頼りきりだ。松葉杖の探偵なんて使いモノにならない。

 振り子時計が3つ鳴った。

 弁護士のアリモリ・ケンジが息を切らして飛び込んでくる。 

 身に覚えのない殺人の嫌疑をかけられ、ヤマナカに助けを求めに来たという。


 彼を逮捕しに追って来たツチヤ・アズサを「僕が事情を聞いてからでも大勢に影響はないでしょう?」とカズマは押し留めた。 

「まだムトウはつかまらないんですか?」

 ヤマナカが尋ねた。

「……恥ずかしながら、まだ」

 カズマは事件のあらましをアズサから聞き出した。彼女の話によると、見ず知らずの人物である建築業者カンザキ・エイイチが彼の事務所に現れて、簡単な書類を正式に遺言書として写してほしいと依頼してきた。 

 だがその遺言書の内容は、自身が没した場合、全遺産をアリモリに譲るというものだった。カンザキは若い頃アリモリの両親と知り合いで、今は身寄りもないので遺産をアリモリに譲りたいのだという。

 後日、カンザキの住むサッポロに呼ばれて手続きを済ませたアリモリだが、翌朝新聞を広げてみると、カンザキがまさに自分と会っていた深夜に殺害された上に屋敷が放火されて一部が焼失、現場から当人と見られる焼死体が発見されたという記事が載っていた。

 驚いたアリモリはヤマナカに救援を求めるため、事務所に駆け込んできたのだった。


 アリモリはアズサに連行されてしまうが、カズマは彼の依頼を引き受けることにする。しかし状況証拠はアリモリに不利なものばかりで、カズマの焦燥の色は濃くなってゆく。そこへアズサから「決定的な証拠を見つけた」との連絡が入った。

 コードレスホンの受話器を置き、カズマはヤマナカが用意してくれたコーヒーを飲んだ。☕

 現場から血のついたアリモリの指紋が発見されたというのだ。

「今回は俺達の出番はなさそうだね?」

 ヤマナカは溜め息のあと、痛みからか膝をさすった。

「イヤ、そんなこともないですよ」

 

 カズマは、「昨日カンザキの屋敷をくまなく調べたが、そんな所に指紋は存在していなかった」とミツヤに囁き、再び屋敷を調べ始める。全裸になったカズマとミツヤは透明人間になった。これならアズサにバレない!  

 そして何事かを確信したカズマは、「重要な証人が一人いる」とアズサに伝えると、なぜかアズサに制服警官3人、しかも「出来るだけ体格が良く、大声を出せる者を」と条件まで付けて呼びにやらせ、屋敷の最上階の廊下で焚火をさせて「火事だ!」と3度一斉に叫ばせる。 

 立ち込める煙。3回目を叫び終わったその瞬間、廊下の突き当たりの壁が開き、中の隠し部屋から一人の男が大慌てで飛び出して来た。なんと死んだはずのカンザキであった。 

 アズサは巴投げを仕掛け、カンザキを拘束し、大変な過ちを未然に防いでくれたカズマとミツヤに礼を言うしかなかった。

 カズマは、最上階の廊下の長さが下の階と比べて不自然に短いことに気づき、そこにカンザキが潜んでいるに違いないと踏んだのだ。

「意趣返しのつもりかな?カズマ君は役者にでもなったら?」


 カンザキは秘密の投機をしていたが運用に失敗し、債権者に返済を求められていたため、死んだことにして人生をやり直そうと画策。かつて婚約していたものの、その邪な本性を知って婚約破棄されたアリモリの母親に数十年来の復讐も果たすという、一石二鳥のこの計画を思いついたのであった。   

 隠し部屋の設置も、建築業者だったからこそ可能だった。隠し部屋にしばらく潜伏し、ほとぼりが冷めた頃合いに遠くの土地で別人として新生活を始める計画であったが、アリモリを確実に有罪にする方策はないかと考えるうちに、遺言状作成の際に封蝋についた彼の指紋を利用し、自分の血をつけてのっぴきならぬ証拠とすることを思いついた。


 リュウジはキムラといろいろ悪いことをした。タンクローリー盗んだり、エロビデオを盗んだり。オザキ・ユタカは『15の夜』だが、それより2年も早い。公園で盗撮しようって騙して、茂みのところでバタフライナイフで刺し殺した。ペッティングするところを楽しみにしてたのに少しだけ悪い気もした。

(俺を笑ったことが運の尽きだな?)

 背中を刺され、しばらくは息があった。

「どっ、ど、どーゆー、こっ、こと……ゲボっ!」

 ドス黒い血を吐いてのたうち回って死んだ。

 ハマムラ・リオはセンダイにやって来た。オオワダって鬼瓦みたいな顔の部長刑事から連絡を受けた。ロン毛のイケメン、タキ・リョウマ、プヨプヨしたロイド眼鏡のフジタ係長など個性的なメンバーが顔を揃えた。

「共犯者がいるってのは本当ですか?」

 刑事部屋の応接室でリオは3人に尋ねた。

「俺はそう睨んでいる」

 オオワダは堂々と言ってのけた。

「余計なことするとミコガミさんに怒られますよ?」

 タキが言った。

「飛ばされたくないよ〜」

 フジタはよほどミコガミを恐れてるようだ。

「リオちゃんってバストいくつ?」

 セクハラなんて言葉のない時代、フジタみたいなエロキャラはまだたくさん社会に存在した。😍

「ヤラシ〜、教えるわけないでしょう!」

 ピンポンパンポーン♪

『ミヤギ県警から入電中!ミヤギ県警から入電中!』

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