第15話 ある刑事の死
アナリスト、イラストレーター、宇宙飛行士の順に殺される。五十音順に殺人が行われていることにカズマは気づいた。
エッセイスト
オーケストラ
海上保安官
気象予報士
クリエイター
刑事の順で事件が起きるってことも全裸になって予想した。
カズマはつい最近起こったことを、ラジオから流れてるミスチルの『Innocent World』を聴きながら思い出していた。
12月3日 - ソニー・コンピュータエンタテイメント (SCEI) が家庭用ゲーム機「プレイステーション」を発売。
12月4日 - WBC世界バンタム級王者薬師寺保栄と、WBC世界バンタム級暫定王者辰吉丈一郎の間で、日本人同士による初の統一王座決定戦が行われる。
12月10日 - 新生党、公明党などが合流し、新進党結成。公明党は新進党参加の「公明新党」と地方政党の「公明」に分党。
12月16日 - カシオ計算機が「G-SHOCK」の女性版を発売。
12月19日 - 日産自動車がコンパクトRVの「ラシーン」を発売。
12月28日 - サンリクはるか沖地震発生。
「今年も終わりでーすね♪」
ミツヤはヨシ・イクゾウの『雪国』を口ずさんだ。
カズマは電話していた。相手はミコガミ刑事課長だ。
《大晦日くらい自宅で過ごしたい》
3つの事件は全てセンダイ署の管轄内で起きている。いつもなら殺される人間の名前や殺される場所まで分かるが、インフルエンザを患っているので職業までしか分からなかった。
カズマは最近、オタル市内でゾンビを倒した。それにより知能指数が大幅に上昇した。
タケダは、ある日かかりつけの獣医師が子犬に筋弛緩剤(塩酸スキサメトニウム)を注射して安楽死させているのを見て、獣医師から口実をもうけて筋弛緩剤を入手した。
タケダは妻子殺しの共犯者、オリハラ院長の別荘を借り、犬の訓練所を開業。営業資金は口コミや、自ら出向いて街で声をかけたりして集めていた。
クリスマス・イブの夜、旧友の男性、アサヒナ・アツノブと散歩中に偶然再会、しかしそのうち口論などのトラブルにより筋弛緩剤を注射して殺す。
「アナリストってのは随分、偉い仕事なんだな?人を見下しやがって」
翌日には著名なイラストレーター、アマノ・イクエと、宇宙飛行士のシイナ・ハルナを筋弛緩剤で相次いで殺害、遺体は訓練所の敷地内に埋めて遺棄した。
ミコガミ、オオワダ、フジタの3人はセンダイ署地下にある資料室にいた。
「タキの奴、無事かな?」
老眼鏡をかけながらミコガミが言った。
「無事を願いたいですね?」とオオワダ部長刑事は言った。
証券アナリストは、金融市場のプロフェッショナルとして株式市場のみ成らず、債券市場、商品市場、景気動向など、経済全般をその管轄分野としている。金融のグローバル化と専門化の時代にあって彼らの分析の重要性は年々高まっている。上場株式の個別銘柄についてアナリストが出すレポートはアナリスト・レポートと呼ばれる。
資本市場影響力が強く、市場での価格決定は彼らの投資判断によって大きく変動するため、社会的意義と責任が大きい。このため金融庁は各証券会社や資産運用会社に所属する証券アナリストやファンドマネージャーの『重要使用人』の届出を義務付けており、その監督下に置いている。
「アサヒナはサガミ銀行ってところに所属していたようだな?」
フジタが言った。
サガミ銀行は投資銀行だ。投資銀行とは、主に大口の個人や法人顧客に代わって金融取引を行う、コンサルティング業務をベースとした金融サービス企業または事業構造である。伝統的にコーポレート・ファイナンスと関連しており、そうした銀行は有価証券の引受け業務や顧客の代理人として行動することで金融資本の調達を支援したりもする。
投資銀行はまた、合併と買収(M&A)に携わる企業を支援しているほか、マーケットメイク、デリバティブや株式の取引、FICCサービス(債券、為替、コモディティ)といった付随サービスも提供している。大半の投資銀行は、自社の投資リサーチ事業と連携してプライム・ブローカレッジおよびアセットマネジメント部署を共同で維持管理している。
フジタは経済事件関連のファイルに目を通した。
1992年5月から1993年5月の間にかけて、ヨコハマ支店に勤務していた36歳の男性行員が顧客の普通預金から不正に現金を引き出し、およそ3億7500万円を横領していたことが発覚した。この行員は顧客に定期預金の作成を名目に定期預金の顧客向け証書を偽造して顧客に渡しており、顧客から定期預金の解約の申し出を受けた銀行側が口座を確認したところ口座が存在しなかったことから事件が発覚した。行員は失踪しており、銀行は7月8日付でこの行員を懲戒解雇としている。
同年8月31日、被害額が約6億7900万円に拡大したことと、グループの役員ら16人が不祥事の責任を取り月額報酬の一部を返上することを発表。
「行員の名前はウドノ・ウメタロウ」とフジタが言った。
「ウドノとアサヒナの接点は?」とオオワダが言った。
「今のところは見られない。同期ではないし
、部署も違う」
フジタはうつらうつらしている。
「大丈夫か?疲れてんだろ?」
ミコガミは気を配った。
「帰ってもいいですか?」
「過労死すんなよ?上がれよ」
「それじゃお先です」
フジタが帰ってしまい、オオワダがファイルを読む。
「大晦日に事件なんて起こすんですかね?」
オオワダは溜息をついた。
「俺に聞くなよ」
今年の紅白の司会はカミヌマ・エミコとフルダチ・イチロウだ。
「ヨシダ・タクロウが初出場するんですよね?」
「タクロウいいですよね〜?『旅の宿』とか、あれは情緒がある」
リョウマは、センサーを解除してタケダから逃げた。
タカギとは相思相愛になっていた。タカギと会う約束を取りつけたその日の夜(大晦日)、リョウマは隠れ家としていたセンダイ市郊外の廃校で、武装した集団に襲われる。リョウマは少林寺拳法を幼い頃からならっており、ナイフ、ハンマー、角材……全て通用しなかった。
全員を返り討ちにするも敵の正体は掴めず、タカギにも危害が及ぶ可能性を考慮して、リョウマは彼の下へ向かう。
追手が迫り時間が惜しいリョウマはタカギを拘束し、強引に連れ出す。最初は抵抗する彼であったが、命を狙われていることを知ってリョウマに従うようになる。一方、ヨモギダ・ヨウスケは、上司よりリョウマの殺害を命令される。
幼馴染で、エッセイストのハスミ・タカシの情報から、襲撃者達が、先頃起こった3件の事件の殺害犯と同じと判明する。
リョウマはハスミから命を狙われている者たちのリストを入手し、キクチ・ショウゾウという男を除いて既に殺害されていることを知るが、その矢先にハスミが殺されたという連絡を受ける。ハスミは絞殺され、例の廃校で死体が見つかった。
リョウマは、次にハマムラ・リオを頼り、狙われている者達が職種の五十音順であると知る。
「アナリスト、イラストレーター、宇宙飛行士、エッセイスト……次はオーケストラのキクチよ」
リオを伴いキクチの許を訪れるリョウマらであったが、情報を得る前に襲撃を受け、キクチは殺されてしまう。キクチはオーケストラだった。キクチは青酸カリを飲まされたうえに眼球をくり抜かれていた。
すべてを知るにはセンダイ署に行くしかないとし、リョウマは尿意を催しトイレを借りようとコンビニに入ると、オタル署のツチヤ・アズサを頼る。アズサの助けでセンダイ署に戻って来たリョウマは、タケダの潜伏先の情報を得るが、手榴弾を手にしたヨモギダと鉢合わせし、彼を退けてセンダイ署を脱出するも、重傷を負う。
そこで治療のため、闇医者のミツヤ(小学生ながらバイトしてる)の許へ赴くが、そこで実は生きていたハスミも合流する。そして手に入れた資料から、作戦の関係者だが唯一命を狙われていない軍需産業界の大物、サクラジマ・タカアキに目をつける。サクラジマの表の顔は海上保安官だ。
リョウマ、ハスミ、リオ、ミツヤは、サクラジマの屋敷に潜入し、彼を脅して情報を吐かせる。全ての黒幕は気象予報士のハナガタ・レンであり、アナリストのアサヒナはハナガタとは高校の同級生で、アサヒナはハナガタを日常的にいじめていた。肺がんで余命宣告を受けたハナガタは、タケダを利用して復讐していたのだった。『ABC殺人事件』を読んだハナガタはこれを利用し、関係のない人間をタケダに殺させた。
ところが、リョウマらがサクラジマの屋敷にいることがタケダにばれて彼らの襲撃を受けてしまい、リョウマ、リオ、ミツヤの3人はアズサの助けで脱出に成功するも、ハスミは身代わりとなって重傷を負い、タカギはタケダに捕まってしまう。
リョウマ、アズサ、リオ、ミツヤの4人はハナガタのパーティに潜入し、彼を襲撃する。混乱の中でハナガタの誘拐を成功させたリョウマは、ヨモギダにタカギとの交換を要求し、ヨモギダはタカギを連れて指定された場所、アオバ城に赴く。だが、そこにサクラジマとその一味が襲撃をかけ、真の黒幕は自分であると明かした上で、用済みとなったハナガタを殺害する。
すべてを察したヨモギダはサクラジマの要求に従うフリをしてリョウマを助け、駆けつけたミツヤらと共にサクラジマとその仲間たちを始末する。
ヨモギダの正体はリュウジだった。
「カズマの兄ぃ、相当具合が悪いようだ。殺される順番も間違って推理した」
助け出したタカギと愛を確かめ合うリョウマであったが、彼の真っ白なコートが真っ赤に染まった。
野次馬に紛れ込んでいたタケダが小型拳銃を撃った。
「よくも裏切ってくれたな?」
タカギが撃たれそうなときリュウジが颯爽と現れた。リュウジは『爆裂』を使ってタケダを爆殺した。
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