Day1 僕は君を告白させない!!!

バタバタ──ズコーーー


廊下で豪快にコケたのは、銀髪が特徴的な佐高三玖だった。コケたのが恥ずかしかったのかキョロキョロしている。すぐに僕の存在に気づいて、苦虫を噛み潰したような顔をした。

彼女の手に持っていた段ボールからプリントの束が廊下に散らばったプリントを拾い上げると、長く垂らされた銀の髪の間からのぞく大きな目と目が合った。


「大丈夫?」


「大丈夫よ。どうも。」


ツンっとした態度でプリントを受け取り、段ボールに積みいれた。


「荷物運ぶの手伝おうか?」


「結構です。」


「ひとりじゃ重いでしょ」


「いいえ、ひとりで運べます。それにアナタより私の方が力ありそうだわっ」


初対面なのに失礼な奴だ。確かに僕はひょろっとしてて力ないかもしれない。だけど、このくらい運べるさ。人を見た目で判断する態度に腹立つが、この子も攻略対象だ。優しく対応しなければ。


「それに佐向さんの膝、青くなってるよ。早く保健室行かなきゃ」


「こんなキズ、どうってことないです。」


「跡が残ったらダメだよ。ほら、荷物は僕が届けてあげるからさ」


「なっ・・・」


強がる佐向さんから半ば無理やり段ボールを引き取って、職員室へと運んだ。


⿴⿻⿸


教室前で佐向さんが待っていた。膝にガーゼが貼られている。


「ありがと。あと、失礼な態度とってごめんなさい」


佐向さんは、さっきの態度が引っかかっていたようで、僕が「いいよー」と言うとほっとした表情をした。意外と素直?


「今後は気をつけるから、コケたことは忘れなさい」


「佐向さんが1人で大変な時は『いつでも声掛けて』」


「失礼な態度とってごめんって謝ったけれど、「アナタより私の方が力ありそう」って言ったのは本心よ?」


上から目線なのは変わらないみたいだけど、ハートのゲージは数字が少し上がっていた。コケたことを目撃してしまったせいで、50より下からのスタートだったけれど。


「なんで、私の名前知ってるの?」

初対面なのに、あの時名前呼んだのおかしかったか。表示されて見えるなんて言えない。


「生徒会報に書かれてたの読んでたから」

会報なんて真面目に読んだことないけど、適当に言った。

「ふーん、そうなのね。」

佐向さんは納得したようだ。



「お、佐向さんだ!何話してるのー?」


西野が朝練終わり教室に戻ってきたとこだった。


「特に面白くない話よ。」

特におもしろくないって・・・僕の扱い雑ーーー。


「じゃ、またね」

視線は完全に西野を向いている。またねって僕にじゃなくて、西野かよー。


文化祭で佐向さんは西野と一緒に回ろうと誘ってた。


「文化祭の時、西野と佐向さん一緒に回ったんだよなー?」


「え、いや、俺たち一緒に回ってねえよ?」


──へっ!?


「え、佐向さんに誘われてたんじゃないの?」


「なんで知ってんの?」


冴島と一緒に見てたとは言えないから、適当に誤魔化す。


「部活の出店もあるし、時間ないって断ったの。」


西野と佐向さんは何も無かった。冴島の取り越し苦労で・・・。もし、あの瞬間僕が冴島と一緒に西野と佐向を見てなかったら。僕が冴島を誘わなかったら──。焦った冴島が西野に告白してた可能性だってある。


佐向さんは、僕と同じ当て馬ポジションのキャラってことだ。きっと佐向さんが西野に告白してしまったら、西野×冴島ルートに合流する。そんなの絶対阻止だ!

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