Day3 縮まる距離は誰と?
「ごめん、ごめんね⋯⋯」
冴島は泣き出してしまった。僕は慌てて電気を消して、ハンカチを渡すことしか出来なかった。男子はハンカチを持っておくべきだと漫画から学んだことが役に立った。
そのうち、豊村が戻ってきて、泣いている冴島と冴島に背中を向けている僕に驚いていた。
冴島の好感度はあいも変わらず見えないが、黒くくすんでいた。どうして、冴島の気持ちだけ読めないのだろう。
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「修学旅行について話し合いをします。」
ゲームイベントバナーのようなものが現れた。
“揺れキュン・手を繋ぐとはどの子と?”
どうやら修学旅行で誰かと距離が縮まる事は確定らしい。修学旅行イベントは緑山先輩とは進展なしか。
「きーりーしーまぁー。最近お前モテモテだなー。急に存在感出してきてぇー。誰と回るんだ?」
南田がたくさんの旅行パンフレットと雑誌を机に並べていた。相当楽しみなようだ。
「必ず叶う縁結び神社コースだよ。1日目行くだろ?」
「縁結びなんてどこにも書いてなかったけど?」
「うちの生徒らの間で、この神社で一緒に願ったカップルは必ず結ばれるってジンクスがあるんだよ」
「へえー」
先生が配った旅のしおりには学業の神様と書かれていたが⋯⋯。神様も忙しいな。
「梨乃はだれと回るの?やっぱり透くん?」
「どうだろう⋯⋯。トオルは他の子と回るんじゃないかな」
冴島は西野を誘わないのかな。なら、僕と⋯⋯いやいやいや、神社一緒に回って欲しいなんて言ったらきっと引かれる。
「桐島、ちょっとこっち来なさい」
「佐高さんどうした?」
「ちょっと、声が大きい。静かに来て」
階段の踊り場にやってくると佐高さんは僕と向き合った。
「⋯⋯手伝うって言ったわよね?」
「え?」
「だから、私と西野くんの仲、⋯⋯手伝うって」
佐高さんは恥ずかしそうに耳を真っ赤にした。
「どーだったっけ?言ったような言ってないような?」
「ふざけないで。真剣なのっ!」
「『じゃあ、お願いする時はなんて言うんだっけ?』」
佐高さんは悔しそうに「お願いします⋯⋯」と声を絞り出した。
こんなにされても佐高さんの僕に対する好感度は変わらないどころか、少し上がってさえいた。それ程西野のことが好きなんだな。
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