Day2 気づき
──ゲイだよ。男が恋愛対象
───俺が女子だったら問題なかったんだろうな。
「うそ⋯⋯でしょ?」
盗み聞きしたかったわけじゃない。先生の頼みで準備室に来たら薄暗い部屋で桐島くんと豊村くんが話していたのだ。とっさに棚の後ろに隠れる。
「顔洗ってくる!」
豊村くんが出ていく。
メイクしてる⋯⋯。目元が紅く、リップも塗っていた。
このタイミングで私もそっと外に出よう。
──パチッ
手をついたのが照明のスイッチだった。
「とよむらぁ?」
私に気がついた桐島くんは目を丸くしていた。
「・・・え、桐島くんここで何してるの?」
「冴島さんこそ、いつからそこに?」
「先生のおつかいでいま⋯⋯きたところだよ。じゃ、じゃあね。ごめんなさい⋯⋯」
この場から逃げようとしたら、ダンボールの山に足をひっかけて──コケたと思った。
「いててて⋯⋯大丈夫?」
「ご、ごめん!!」
桐島くんを下敷きに覆いかぶさってしまった。
「ほんとにごめんね。ほんとに⋯⋯」
「ちょっと待って!」
離れようとしたら手を掴まれた。
「本当にどこから聞いてたの?教えて?」
桐島くんの真剣な眼差しから逃れることが出来なかった。
「豊村くんが、ゲイだって言ってるところから⋯⋯」
「まじかぁ⋯⋯」
「ごめんなさい⋯⋯」
私は半泣き状態だ。盗み聞きした酷いやつだと思われても仕方ない。
「誰にも言わないで欲しい。豊村にも何も言わないで。お願いします。」
桐島くんは深く頭を下げた。
「聞いてしまったこと、怒んないの?はじめ、私は嘘ついたし⋯⋯」
「冴島さんは、たまたま聞いてしまったんでしょ?それは仕方がないよ。豊村は分からないけど、僕は怒れないよ。冴島さんに聞かれてしまったことを豊村に内緒にしておくべきではないと思う。でも、豊村は誰かに知られたって言うことを知ったら傷つくかもしれない。僕は豊村に傷ついて欲しくないだけなんだ。」
桐島くんはたくさんのことを考えられる、思いやる人だと知った。文化祭のときだって私の悩み聞いて、一緒に回ってくれた。桐島くんは優しい人だ。私はなぜそれに気が付かなかったのか。
「ぜったい言わない。約束する」
「ほんと!!ありがとう。冴島さんでよかったー。ほんと好⋯⋯なんでもない!」
意識していなかっただけで、桐島くんは────
顔が熱くなる。気づいてしまうと早いもので、私は桐島くんの顔が見れなくなった。幼なじみのトオルのことが好きなのに。私はおかしいのか⋯⋯この感情を認めるべきか分からない。
でも、桐島くんは緑山先輩とお付き合いしてるんだよね。私はまた遅かったんだ。溢れてしまった涙を止めることが出来なくなってしまった。
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