バグ発生!!

──何故かゲーム画面の様子がおかしい。昨日くらいから動作が遅いし、スマホのギガを使い切ったような感じ。その所為か僕の体調も良くなかった。


「キリシマ、あぶねえええ!」

体育を見学していた僕の元に緩やかに弧を描いてボールがやってくる。

「おおおおっ(顔面キャッチ)ぐぶぇっ」

見事に顔面キャッチを決めた僕はそのまま倒れ込む。

「痛ってえーー」鼻に直撃したおかげでジリジリとした感覚だけある。タラーと流れ出す血がポタポタと落ちる。


『おいっ!何人かで桐嶋を保健室へ連れて行けー』

体育担の先生の指示でうずくまる僕を何人かで保健室に運んでくれた。


「俺のコントロールミス!!ほんとまじごめん!」


保健室に付き添った西野がペコペコと平謝りした。

「大丈夫。ぼーっとしてた僕も悪いし・・・」

ボールを顔面キャッチしたうえに鼻血垂らす姿を見られた僕はバツが悪い。


「「顔面キャッチ大丈夫か!?」」

心配したクラスメイトがやってきた。顔面キャッチは事実だが人に言われると少し傷つく。


「だいじょーぶ、大丈夫。えへへ、恥ずいな・・・」

「見事な顔面キャッチだったなー」

「恥ずいからやめろってw」

「いや、綺麗なフォーム決めてたぞー」

一緒にやってきた南田も調子を合わせて言った。


西野はサッカー部でレギュラーで活躍している。そんな西野のボールをモロに受けた僕が鼻血で済んだのは不幸中の幸いだったのかもしれない。


「今日午前から体調悪くしてたよな?」と南田。

「うん」

「俺、送るよ」

「・・・・・・へっ?」

送るよと言ったのは西野だった。

「チャリだし、丁度いいだろ?」

「いやいや、そういう問題じゃなくて。あっ南田のチャリ借りるからいいよ。な?南田、貸してくれ、な?」

僕の圧を感じ取っているのか取っていないふりをしているのか南田はどこ吹く風だ。


「俺のこと嫌ってるのか?」


『・・・・・・』


遠慮しようと言い訳を探すも『二人乗りはダメだよ』とか『おつかい頼まれててさー』とか適当すぎな答えしか思いつかない。

「西野は部活あるだろ?無理しなくていいよ」

無理しなくてもいい、曖昧にしてしまったと後悔した。

「それは大丈夫だ。病人は放っておけない」

そうハッキリ応える西野は自転車の鍵をチラつかせ「早く行くぞ」と言う。

そんな西野が頼りがいのある兄のように思えた────とか思えるかっ!!!


さっきからの西野の発言は明らかにヒロインが倒れた時にかける言葉だろ?

絶対におかしい。明らかにバグっている。

頭を打ち付けたのが悪かった?朝からの体調不良が原因?


それに、この世界には西野と冴島と南田しか居ないのか!?っていうくらいこの3人が僕に絡んでくる。

第1ルートでは普通に別のクラスメイトとも話してたはずだし、特に西野と冴島が絡んでくると他の奴らは口をパクパク動かしているだけで声が聞こえないのだ。


『(西野に着いていく)』

『(西野のことが苦手だと伝える)』


無慈悲な選択肢だ。どうやらこの選択肢が見えればいずれかを選ばざるを得ない仕組みらしい。


『(西野に着いていく)』


西野に家まで送ってもらえることになった。

荷台に座る僕は西野の腰に腕を回して振り落とされないように掴む。傍からどう思われているだろうか。道行く人や車の人の目が気になって仕方ない。


僕を送ると言った西野は無言で自転車を漕ぐ。

運転に集中してくれるのはとても有難いのだが、この沈黙は気持ちが悪かった。


やっぱり違う選択をすれば良かった?


発言の選択でエンドが変わるならこの選択は正しいのか否か。

一言ひとことに気をつけなければならないなと肝に銘じた。


信号が赤に変わり、西野も漕ぐのをやめた。青に変わるまでも終始無言は辛いなと思い話題を探していたら西野が先に口を開いた。


「桐嶋ってさ」


「うん」


「梨乃のこと好きだよなー」


「・・・・・・んっ?」




ピコンッッッピコンッッッ


『(─────)』『(─────)』『(─────)』


三つの選択肢が並べられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る