プロローグ
「ごめんなさい、桐島くんのこと、そういう風に見れない」
───好きな人がいるの
一世一代の告白だった。呆気なく僕は振られた。
冴島梨乃に振られた夜、僕は一晩中泣いた。明日から夏休みだから、からかわれることも無いだろう。いっその事思いっきり泣いてやろうと決めた。
「な、なんだこれ!」
見えるはずのないもの。いや、見えてはいけないもの?心霊映像とかでよく見るオーブ。
腫れた目を冷やしていると、視界の端にキラキラと光るものが、徐々にその光は中心に収束していった。
どこかで見覚えのある。それはまるでゲーム画面のような、つい先日まで姉がどハマりしていた恋愛シミュレーションゲームの画面に似ている。
「冴島・・・・・・?」
髪型が近いとか、顔が似てるとかではなく冴島梨乃のそのもので、振られたショックで幻覚まで見えるようになったのかと思った。
ゲームの画面が見えるということは、僕が主人公なんだよな。そう思い、手当たり次第に光に触れるが、それらしい僕のキャラはいなかった。
夏休み中、謎のハートのゲージが溜まっていくのをずっと観察していた。
誰への好感度なのか、親密度なのか。何を表しているのか全く検討がつかない。
そうこうしているうちに、蝉は鳴くのをやめていたのだった。
*********
「なあ、聞いたか?」
二学期の始業式が終わり、クラスメイトの南田がニヤニヤしながら、話しかけてきた。
「なんだよ、気持ち悪いなー」
「覚悟して聞けよー」
南田は体をくねくねさせながら勿体ぶらせる。
「西野と冴島が、夏祭りの後に付き合い始めたんだとよ」
──西野と冴島が付き合い始めた?
「でもまあ、やっと西野の奴が冴島の気持ちに気づいたって感じだよなー」
二人は幼馴染だと僕も知っていたが、友だち以上という感じで恋人になるとは思ってもいなかった。
南田によると、冴島はずっと西野透のことが好きだったが、鈍感な西野はそれに気がついていなかったらしい。
──そこで、僕にとって一番のショックだったのが
「それでさー、西野が冴島への恋心に気付いたキッカケが・・・・・・」
僕の告白劇だったのだ。
MAXに溜まっているハートのゲージが点滅し始める。
このゲージはあいつら二人が付き合うまでを表していたんだ。
僕は主人公じゃなかった。
僕はただの、
アイツらが付き合うための当て馬だったのだ。
ハートのゲージは強く光を放ち、僕の視界を包んだ。
これが本当のゲームと同じなら
もう一度始めから、
僕が冴島に告白する前に戻れたりできるものだろうか
『続けますか?』
→いいえ
『データを引き継ぎますか』
→はい
──リスタートします──
データだけ引き継いだ僕は、いわゆるタイムスリッパーと同じだと思う。
僕だけが知る未来。
僕だけが変えられる未来。
僕はもう、彼女に告白なんてしない!!!!
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