いや、まさか・・・ね?

『二人で食べる』

『ほかの友人も含めて食べる』



今朝初めて話したばかりで、二人っきりの昼食は会話が持つ気がしないし、ほかの友人も入れば、部活のことや恋愛事情とか何かしら聞き出せるかもしれない。そう思い、僕は『ほかの友人も含めて食べる』を選択した。


「僕、いつも南田と昼飯食ってるんだけど、こっちで一緒に食べないか?」


「うーん。二人じゃダメかな……?」


「……え」


*********



──なぜこうなった?

どうして僕はいつもこうなるんだ。男子二人で中庭で昼飯ってどんな状況だよ(いや、考えすぎか……?)

僕はちゃんと『ほかの友人も……』を選択したはずじゃないか。

木陰で男子二人が横に並んで、片方はバレー部の次エース、その隣に冴えないモブ男。こいつの隣にいると僕のひょろっとした体型が目立ってしまう。


「突然、昼飯誘ってごめんな」


「気にしないでいいよ。逆に豊村はクラスの奴と食べなくて良かったのか?」


「それは大丈夫。俺と一緒にいる奴なんていないしな。」


「なんで?」


豊村は箸を止めて、スーっと息を吐いた。


「俺、先輩の彼女に手を出したって言いがかりつけられて部員から避けられてんの。」


「えぇ……どうして」


「きっかけは、先輩が『他に好きな人が出来たから別れてほしい』って言って彼女に振られたんだ。そのあと、俺と先輩の元彼女が話してるのをたまたま先輩が見て『彼女に手を出したのは豊村だ。だから振られた』ってほかの部員に言ったんだ。ひどい言いがかりだよな。先輩の元カノってバレー部のマネージャーもしてたから、『次の大会、応援してる』って話してただけなのにな。」


ことの経緯を話し終えた豊村は乾いた笑いをした。


「豊村くんのその状況、先輩の元カノさんは知ってるの?」


「一応、言った。そしたら、申し訳なさそうな表情を浮かべて謝って『私から言っとく』って言ったけど、それはいいですって止めた」


「なんで止めた?」


「色々、面倒くさくて。試合で勝つこと以外のこと考えたくないんだ。この鬱憤はコート内で晴らす。俺がレギュラー入りして、技術も努力も先輩に勝てば誰にも文句言われない。そう思って昼練して、放課後も遅く残って練習してたら倒れた、なんて笑えるよな・・・・・・」


豊村は、先輩もほかの部員も見返そうとして無理しすぎたんだ。そうでなくても元から努力家気質で、真の主人公タイプなのだから。


「今朝、保健室連れて行ってくれてありがとな。重かっただろ?ごめんな」


「ううん。無事で何より。ところで先輩の彼女ってちなみにどんな人なんだ?」


「元々兼部してた調理部の部長してる緑山三知先輩。知ってる?」


「マジ?!知ってるも何も、最近一緒に帰ったりしてる……」


「桐島、それいつ頃から?」


「えーと、話し始めたのは文化祭の実行委員になってからだから二、三週間前くらいかな。一緒に帰り始めたのは最近だけど……」


「まさか、緑山先輩の好きな人って……?」

豊村が目をまん丸にして詰め寄ってきた。

「お前か……!?」


「いやーないないないない!!ないない!!」


全力で首を振ってみせたが、否定するほど豊村は怪しむ。


先輩と僕がどうのこうの・・・ってあるわけない。いや、でも新キャラとして表示されてたってことは、まさか本当に……?

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