ややこしいことお断り!!
「豊村くん、活躍してるね!!!」
「バレーしてる姿初めて見ました」
「桐島くんって豊村くんとすごく仲良いんじゃないの?今日誘いも豊村くんがしてくれていたし⋯⋯」
「豊村と話すようになったのは最近ですよ。」
「そうなのねー。豊村くん、バレーしてる時カッコイイでしょ。豊村くん、初めての試合でね⋯⋯」
マネージャーをしていた時の話をしてもらった。豊村の話をする緑山先輩はとても楽しそうだ。
「先輩って、豊村のこと好きなんじゃないですか?」
「うーん。ずっと私は邪魔してきたからな⋯⋯。」
先輩は一瞬表情を曇らせた。
「ファイトー!!!」
先輩が曇りを払うように大声を上げた。
「とみむらァァァ!!!」
応援席から僕らは精一杯声援をおくる。
必死に声を張り上げて喉が痛い。体育祭でもこんなに声を上げたことは無かった。
「桐島くん、はい」
キンキンに冷やされたペットボトルを受け取る。
いつの間に用意していたんだ・・・?
「試合終わったら差し入れ持ってくから手伝ってくれる?」
僕も差し入れを用意しておけばよかったと後悔した。
「僕、何も持ってきてなくて・・・」
「気にしないで大丈夫!」
リュックサックから取り出した二つの保冷バッグを椅子に置いた。
⿴⿻⿸⿴⿻⿸
「豊村おつかれー。すごい活躍してたな!」
「ああ、ありがとう。まだまだこれからだよ。明日もまた試合だからな」
豊村にチョコレートと塩飴を渡した。
「緑山先輩とどんな感じ?」
「それは・・・」
「みっちゃん!」
いかにも愛され系男子が緑山先輩に抱きつく。
先輩は「暑いから離れて〜」と言っているが嫌だという感じではなかった。
距離感近くね・・・これは普通なの?
「お前はなんだ!」
「え、、!?」
愛され系男子に睨みつけられる。僕をみるその目は愛され系というより殺し屋・・・。殺気立ってる。
「私の彼氏だよ」
僕が言う前に先輩が答えた。
「はああ!!!オレという者がいながら!?!」
「棚澤くんとは別れたじゃん」
「オレは認めてないから!」
先輩の元彼っていうのはこの愛され系男子!?
聞いていた豊村の話から勝手にコワモテなイメージを抱いていた。
「またオレと付き合って欲しかったから、試合で勇姿を見せて惚れ直させようと思ったのに・・・」
「惚れ直すって言ったって、活躍してたの豊村くんじゃない?」
「あー!やっぱり豊村のことが好きなんだな!」
「なんでそうなるのよ。今の彼氏は桐島くんだって言ってるじゃない」
緑山先輩と棚澤先輩の痴話喧嘩のようなやり取りをよそに僕はほかのチームメイトにも差し入れを配る。
「2人仲良さげなのにな〜」
「豊村じゃなかったんだ…」
ほかの部員は口々にそう言っている。緑山先輩の今カレということになっている僕へ向けられる視線が痛い。豊村が話しかけてくれたおかげで直接なにかされることは無かった。
「豊村は棚澤先輩のせいでハブられるようになったんだったよな」
「そうそう。棚澤先輩、あんな感じで愛されキャラだけど、敵に回すと厄介。桐島、気をつけろよ?棚澤先輩と同じで緑山先輩も厄介だ」
豊村は緑山先輩との関係が疑われた際、無理に誤解を解こうとはしなかったと言っていた。何か理由があるんだろうか。
「今、緑山先輩と付き合ってる人にこんなこと言うのは下世話な話だな。スマン。」
「ちょっと外で話さない?」
僕は豊村を連れて、体育館の外のベンチに座った。
「僕と先輩が付き合ったっていうのは演技なんだ」
小声で豊村に教えた。すると、豊村は目を丸くして、頭を抱えた。
「あーそういうことするよなーアイツ⋯⋯。協力するのは今回だけにしといた方がいいよ。それに、絶対に先輩に本気にならないようにな。」
「なんで?」
「緑山先輩って好きとか簡単に言えるの。お前と演技だって言うのに、棚澤先輩に堂々と彼氏だって紹介したりさ」
「それは演技だからでしょ?」
「いつもそうやって勘違いさせるの。いや、勘違いさせてるの。それ楽しんでるんだよ。」
豊村ってこんな言い方するような人間だったか?
「変なのは豊村の方だよ。先輩さ、豊村が活躍してる時本当に嬉しそうだったよ?豊村の活躍話も自分のことのように話して⋯⋯」
「だから、嫌いなんだ。」
僕の話を遮り、豊村は飲み終えたペットボトルを自販機横のゴミ箱に投げ入れた。
「応援来てくれてありがとうな。緑山先輩は棚澤先輩たちに囲まれて出れなそうだから、先に帰ってていいよ。俺が伝えとくから。」
⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸
在らぬ疑いをかけた棚澤先輩を嫌いになれないが、好いているだろう緑山先輩のことは嫌い。
緑山先輩の言った「ずっと邪魔した」とはどういうことだろうか。
きっと緑山先輩は豊村のことが好きだ。でも、邪魔したって何を?
考えれば考えるほどややこしい。関係ない二人の恋愛事情に首を突っ込むことになってるんだ!?
ややこしいことはお断りだーーー!!
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