脱・当て馬キャラ!!!

「ただいまー」

「おかえり⋯⋯ってあんた顔色悪いよ!!」

家に帰った途端に姉に心配された。鏡を見ると確かに顔色が悪い。疲れか⋯⋯?今日は色々あったからなー。

「で、それからどうなの?新キャラがどんな人だったか分かった?」


文化祭での進展(前に進めたとも言えない結果だったが⋯⋯)と、その他のキャラについて話す。今日の一日彼氏をしたことも⋯⋯。


「まず、豊村はステイタスに書いてあった通りバレー部の新エースで、緑山先輩とも面識があった。というより、豊村は緑山先輩に対してわだかまりがあるように見えた。緑山先輩が豊村に対する気持ちは好意的なものしかなかった気がしたんだけど⋯⋯。そして、三人目の佐向さんとはまだ直接話していない。でも、佐向と西野が二人きりで話してる現場を見たよ。」


僕の話を聞きながら、姉は忠実に登場人物と僕の相関図を書いた。

「稜、よーく聞いて?」

「なに?」

「あんた、いつまで当て馬キャラしてるの!?この図見てよ、稜に誰も矢印向いてないよ?」

姉に指摘された通り、僕に向けられる矢印はなかった。

「稜はまだ冴島さんのこと好き?」

無言で頷いた。

正直に言うと、まだ諦めきれていないのだ。

「あんた、おっも!!!!!!重いよ!!」


ハッキリと重いと言われると、見ないようにしていた傷口が痛む。


「わかってるよ。このままじゃ、二周目の今だけど、一週目と変わらず当て馬のままだって⋯⋯。」


弱音を吐く僕に、姉は「はぁーーーー」とわざとらしくため息をつく。


「稜、ちゃんと主人公しなさいっ!!!!あなたの周りにはどうして主人公属性しか居ないのかしら⋯⋯」


それは僕が元々モブだから⋯⋯。


「こんなに一途で健気なわたしの弟がこんな扱いだなんて⋯⋯。ハピエン厨の私が許さないわっ!!

私がゲームとか漫画が好きだって知ってるよね?」

姉はオタクだ。昔から僕以上にゲームや漫画に熱中していた。

「私が専門としてるのはそれだけじゃないのよ?」


姉は部屋から大きな化粧ポーチと電球が付いた鏡を持ってきた。


「⋯⋯ほら、悪くないじゃない?」

前髪を少し上げて、眉毛を整えて⋯⋯。

少しいじっただけでも印象が変わった。


「姉ちゃんってメイクも上手いんだね」


「我が弟ながら、元がいいわー。いじりがいがある。今度一緒にコスプレしてみない??」

「コスプレは流石に⋯⋯」

姉はコスプレをするためにメイクを極めたのだと言った。少しでも推しに近づきたいと⋯⋯。


「稜は恋愛ゲームの主人公なんでしょ?そしたら攻略キャラを攻略していかなくちゃならない。冴島さんに一途なのがダメって言ってるんじゃないの。今の稜は振られるの確定だし、そもそも告らないって決めてるんでしょ?それなら、告らせるようにしなさい!」


「告らせるって⋯⋯」


「出てくる選択肢を告らせる方向に持っていくの。つまり、好かれる行動をするって事ね。自分が好きになっちゃダメよ。稜のことだから好きになるとまた当て馬になる。」


「“推してダメなら引いてみろ”って古来から語り継がれる恋愛の鉄則でしょ。冴島さんに好かれるなら、一旦引きなさい。そして他の攻略キャラと接触を続けるの。自分以外の登場人物を当て馬にしなさい。」


「一日彼氏、絶対一日で終わるわけないからね」

この言葉を最後に姉は「稜の人生は稜が選択しないとね。」とアドバイスはもうしないと言った。


最後まで姉の気迫に押された⋯⋯。

だが、言ってることは全面的に正しい。


────自分以外の登場人物を当て馬に⋯⋯

選択肢も迷わず選ぶ、僕は“主人公属性”になる!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る