攻略したい!・・・けど
「桐島くん!!」
ピッピッピ
ハートのゲージが点滅し始めた。
呼びかけの方を向くとそこには黒髪でボブの女子、確か・・・同じ文化祭実行委員の緑山三知先輩だ。
「今日、終礼後すぐに生徒会室で集まるって聞いてなかった?」
今朝、SHRで先生が言っていた気がする。すっかり忘れていた。現在の時刻は5時を回っていて、会議も終わったらしい。
「西野くんは部活って聞いてるけど、桐島くんが来てなくて困ったよー。」
「ほんとすみません・・・・・・」
「でも、良かった、まだ残っていてくれて。
今帰るところ?」
「はい」
「じゃあ、私も今から帰るから一緒に帰ろう!今日の会議の連絡もあるし!」
実行委員にならなかった1周目では、先輩と帰るなんてなかったことだし、緑山先輩とは今までまともに話したことがない。第一印象は真面目そうで、関わることはないだろうなと思っていた。
先輩と帰ることになった僕は、文化祭の連絡が終わると話題に困ると思ったが、それは杞憂だった。
「先輩は何か部活してるんですか?」
「私は調理部だよー。毎週木曜日に色々作ってるんだー。今週はパンケーキ!」
「いいですね!僕パンケーキ好きです」
「じゃあ、おすそ分けしてあげるよ!・・・上手くいったらだけどね」
先輩との話は思いのほか盛り上がった。部活とか委員会とか・・・。似たような趣味だったり、好きな漫画がかぶってたりしたおかげで帰り道は楽しかった。久しぶりに選択肢を気にせず会話を楽しめた気がする。
「ありがとうございました!また明日!」
********
家に着くとちょうど姉も大学から帰宅したところだった。
「なんかいいことあったでしょ?」
「無いよ。」
「いや、なんかあったね!何があったの?」
姉はしつこく聞いてくる。こういうことには鼻が利く姉で厄介だ。
「ふーん、何かあったら相談乗るよ?姉ちゃん、久しぶりに稜の話聞きたいし」
姉が大学進学してからあまり会話もしてない気がする。僕のこの状況も相談するなら一番いいかもしれない。僕より経験豊富だし、恋愛ゲームだってよく知っている。兄弟に相談するのは気恥しいけど、一人で考えてもキリがないのは分かっていた。
「それ、妄想じゃないよね・・・?」
僕の話を聞いたあとの姉はとても理解し難いという表情をしていた。ゲーム画面が見える話も、僕が2週目であることも、厨二病を拗らせたと思われても仕方がない。
「つまり、稜がその二人が付き合うための当て馬だった。二周目はそうさせないために、稜は冴島さんに告白しないって決めたのね。」
「それにしても、大変な役回りしてるのね。好きだった人の恋愛相談って・・・」
「嫌われたくなくて・・・」
「告白しないって決めたんでしょ?」
姉はもはや呆れていた。
「だけどさー」
大きくため息をつく。
「でも、このままずっと冴島さんの恋愛相談聞いていくつもり?」
「うーん、少し辛いんだよな。当て馬じゃないとしても、恋のキューピッドのような役回りも嫌だ・・・・」
「西野くんは冴島さんと『幼馴染から変わらない気がする』って言ってたなら、きっと彼女が告ったところで付き合う可能性は低いかも。もし振られるとしたら、稜にもチャンスあるよ」
姉は、謎の自信をもって言った。振られたところを狙えばいいとか、そうじゃないような気もするけど・・・。
「ゲームの攻略法が分かれば簡単なんだろうけどね・・・。私は稜の見えてるものが見えないから、その画面を詳しく教えて。情報集めておくよ。」
何気に心強い味方になってくれる姉に感謝した。ゲームの攻略法か・・・。僕も恋愛シミュレーションゲーム入れてみようかな。
──ピコンッ!
『新キャラ紹介』と表示された。
・緑山三知
・豊村幸治
・佐向海久
緑山先輩以外は知らない人だった。
僕との関係の欄はいずれもシークレット。
このゲーム画面を調べ、ノートにまとめることにした。
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