まず知るべき人は・・・

緑山三知……高校二年、A型。身長162cm、調理部部長。文化祭実行委員部長。

豊村幸次……高校一年、O型。身長185cm、男子バレー部。1年にしてレギュラー入り。あだ名はトミ。

佐向海久……高校一年、B型。身長153cm、帰国子女。


3人とも特別なステイタスを持っている。

豊村は高身長、バレー部の次エース的存在。まだ会ったことないが、モテていることはみなくても分かる。


友人キャラになるか、ライバル関係か・・・。

どちらにしても僕の存在感が薄まりそうだ。

モブがさらにモブになってしまう。


「まずは、この人と話してみることね」

姉が『豊村幸次』を指さした。

「なんで?」

「この人は男子でしょ?友達になれたら得だけど、恋敵になったら大変。まずは、近づいて様子見しないとね。多分、近いうちに関わることになるよ」

姉の説明に納得し、豊村幸次に二重丸を付けた。


********


『───おはようございます。今日は月曜日、全校集会が体育館で行われます。出欠確認後、体育館へ集合してください。繰り返します──』


みんな「めんどくせえ」と口々に言った。

体育館は暑い。扇風機が6台置いてあるが間に合わない。


「──最後に、全国大会に出場が決まった男子バレー部の皆さん。登壇してください」

アナウンスがかかり、男子バレー部がステージに上がる。その中で一際目立つ存在がいた。

「豊村やっぱでけえな」

コソコソと言う声が聞こえてきた。

「あいつが豊村幸次・・・」

主将の牧野先輩が大会に向けての意気込みを述べた。そのあと校長からの激励の言葉が送られ、閉会した。

降壇したバレー部員の周りに、女子生徒らが集まっていた。

「先輩、頑張ってください!」

「ありがとう」

アイドルのような人気ぶり。練習中も体育館の外に人が集まる様子を何度も見たことがある。

囲われてる部員の中に豊村の姿はなかった。


体育館を出て、教室に向かっている途中、中庭で豊村がうずくまっているのに気がついた。



──ピコンッピコン


『声をかける』

『無視する』



「豊村・・・くんだよね」

「え・・・?だれ?」

顔を上げた豊村の目の下には隈が出来ていた。

「僕、1組の桐島。さっき登壇してたバレー部の豊村くんだよね?大会応援してる」

豊村は「あぁ・・・。ありがとう」とだけ言った。

「体調悪いのか?隈があるけど」

そう僕が言うと、豊村は目を擦って

「大丈夫。ちょっと寝不足なだけなんだ。桐島のほうがひどい隈だと思うけど・・・」

豊村は少し笑った。

「授業始まるな。もう行くね。応援ありがとう」

立ち上がった途端、豊村はクラっとよろけてしまった。

「大丈夫!?保健室いこ!」

「大丈夫、大丈夫」と呟く豊村は明らかに大丈夫じゃない。僕よりも身長の高い豊村を支えて、保健室へ向かった。

「ありがとうね。豊村くんは少しの間ここのベッドで休ませるから安心してね」

豊村は寝不足と過度の疲労で倒れたらしかった。練習後も一人残って練習を続けていたみたいだ。1年のエースは抱えるものが多いのかもしれないな。


********


── キーンコーンカーンコーン


起立、姿勢、礼──


「「ありがとうございましたー」」


四時間目が終わり、昼休みに入った。


「桐島いますかー?」

教室のドアから呼びかけたのは豊村だった。

「桐島、豊村と仲良かったん?」

「朝ちょっとね・・・」

南田に訊ねられたが誤魔化した。


「豊村くん、もう大丈夫なのか?」

「うん、おかげさまで。ありがとう」

目の下の隈も薄くなった気がする。


「それでさ・・・、一緒に昼飯食べない?」


「え・・・?!」



──ピコンッピコンッ


『(────)』

『(────)』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る